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第15章 ④ 神と人

第15章 ④ 神と人


「虹一さん自身表向きは会社員としてご家族には振る舞っていたのかも知れませんが、実際には神職として、様々な活動されていたのは事実です。私のタブレット、ご覧になったんじゃないんですか?」


「だとしたらなんで?中森の家は神社の家。母は兄妹もいません。隠す事なんてないじゃないですか?普通に中森の家を継いでくれれば神社も残せる。みんながハッピーになるじゃないですか。」


「それが、そうはいかない理由があった。虹一さんの旧姓をご存知ですか?」


「いえ、父さんとはそう言う話にはならなかったので。父さんもその話は避けていたように思いますし。」


「そうでしたか、おそらく虹一さんも話すタイミングを逃してしまったんでしょう。複雑な問題ですから。」


「複雑とは?」


「虹一さんは元々神社関係者なんですよ、それも神事に深く関わる一族です。

その一族の名は二神と言います。そして、貴方のお母様のお家、中森家は意見の違いから対立関係にあったのです。それもあり、虹一さんのお父様は両家の結婚をお認めにならなかった。しかし、虹一さんは強行的に貴方のお母様、美空さんとご結婚なさった。それもあってお話ししづらかったのでしょう。」


「そんなことが‥でもそれなら尚更変じゃないですか?その二神家が神社関係者なら、神社関係の仕事は避けるはずじゃ?」


「それが、避けることはできなかったのですよ。二神家もまた「血の贖い」をもって一族を繁栄させた歴史を持つ一族。虹一さんもお母様、つまり貴方のお婆様を早くに亡くしている。家から逃げても、神からは逃れられない。それを分かっているからこそですよ。」


「え?つまり三上家と同じく歴代当主が「血の贖い」の契約をしてきたんですか?それで、お婆ちゃんも死んでる。そう言うことですか?」


無言で頷くと宮田さんは立ち上がると、スマートフォンを取り出す。


「これを見てください。」


宮田さんは「日本神護協会」という団体のホームページを見せてくる。


「これは?この団体が何か関係あるのですか?」


「ええ。あなたのお爺さんはここの会長、二神陽治というお方です。」


画面をタップすると、役職者の名前が並ぶ。そのトップには会長 二神陽治 とある。


「この日本神護協会の表の顔は、日本の神を信じる者達の互助を謳う団体ですが、実際は異なります。ツトメを安定的に遂行し、神の根源を守るために存在するそのための団体なのです。」


「それは別にいいんじゃないですか?その人達が何をしようとしてるかは知りませんけど、世界征服でも、大量虐殺でも考える危ない人達って訳ではないんでしょ。」


「そうですね。少なくともそんなところには興味はない。あるのはただ、己が望んだ奇跡が続くこと。神が神であり続けることを望んでいる。それが誰かの犠牲の上成り立つ奇跡であってもね。」


「さっきの人柱云々の話ですか。でも実際のところ人柱が犠牲になるかはわからないんでしょ?

それなら‥」


「いえ、それがそうでもないんです。それを知ったからこそ、虹一さんは自らの手でどうにかしようとした。そして亡くなった。「血の贖い」の影響でね。」


「え?‥そんな事はさっきは言ってなかったじゃないですか。しかも父がツトメの真実を知ったというんですか?」


「ええ。この事実は折をみて話すつもりでした。私がこの事実を知る前の時点、つまり先程の口伝によるお話は、実は私がアペフチから聞いたお話です。それを補完する形で虹一さんがお話しして下さった事実。それを突き合わせていくと、そう言う結論になりました。

虹一さんは神職として活動しつつ、ずっとツトメのこと、「血の贖い」について調べていた。そしてある真実に辿り着いた。ツトメを最後まで成し遂げた者は誰一人として帰ってきていないこと。その者達は埋葬されることもなく、神となった者として扱われていたことを。

そして「血の贖い」はこのツトメを元に考案された禁術であったことを突き止めたのです。」


「ツトメと「血の贖い」は元を辿れば同じということですか?」


「ええ。そして、結果的にその結末も同じ。神に従属し、その命を終えればその魂は神のものとなる。そう言う運命にあるのです。」


「フッ、フッハハ。なんですかそれ?じゃあやっぱり挑戦者は死ぬわけですか。」


「おそらく。しかし虹一さんはこうもおっしゃっていました。「このままいくと延々と同じことの繰り返しだ。だから俺はある仕掛けを施した。これでもうこんな事を繰り返さなくてもいい。だからもう安心して欲しい。カケルにはいつかそう伝えて欲しい。」そうおっしゃって話はそこで終わりました。」


「なんですかそれ?全然話と違うじゃないですか!ツトメは予定通り始まって、繰り返されている。安心しろって言われても。」


「確かにツトメは開始された。私自身虹一さんが何を仕掛けたのかも知りません。その事を最後まで教えてくれず、虹一さんは亡くなられた。美空さんにも確認しましたが、その事に関する遺書もなかった。正直言って最後まで挑戦者が残った場合。何が起きるのかわからない。しかしあの黒猫の神使はこの事実を知ってるはずにも関わらず、君の参加をやめさせていない。故に何かがあるのは間違いないと踏んではいるのですが。」


「マルも知ってるんですか?ツトメの真実を?」


「ええ。何故ならあの神使は元々二神に仕えていた神使。そして、ずっと虹一さんを見守っていた。虹一さんはクグス神との間に「血の贖い」の契約を行いましたが、虹一さんが亡くなった後もあの黒猫はクグス神の元に仕えている。おそらくそれも何か理由があるのでしょう。」



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