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第8章 ⑦ 祭りはいつも生きるか死ぬか!?

第8章の7 祭りはいつも生きるか死ぬか!?



その頃外ではキー局のアナウンサーとタレントが祭りを取材していた。そこに市長もゲスト出演し、お客さん達は密かに消えて行っている人達がいることなど気にはしない。元々単独で来た人がほとんどなのか、全くと言っていいほど、何も騒ぎが起きる気配もない。札を剥がして眠っているこの人達を見ると安らかな顔をしている。


倉橋の術札の効果により、今見てるいい夢をその時の記憶としてすり替えるらしい。現実よりも余程素晴らしいらしく、現実に戻りたくない人が続出しそうで、恐い。

ノルマの50人を突破して、撤収作業へとかかる。


非常に幸いなことに、テレビ局のロケは参道付近がメインらしく。上手く注意をひけているようだ。


「できましたよ。これで40人分くらいの霊力にはなりましたね。」

「あれ?カケルの魂は取らなくていいの?」


ニコッと笑う彼女は鬼神です。


「えっと。ごめんなさい。すいません。もう二度としませんからお許しください!」


ヒカルの足元で頭を下げて必死に懇願する。


「さすがにこれで許してあげてはくれませんか?これは私からもお願いです。」


倉橋が頭を下げてくれたことに感謝はするが、お前にだけには何か小指を箪笥にぶつけるくらいのことはあればいいのに。と思ってる。器が小さくてすまん。


「そぉですよぉ。お友達にこんなぁことはよくないです。何があったのかはわからないですけどぉ、三上さんはいい子だからぁ、許してあげて欲しいですぅ。」


チクショウ感動で前がみえねぇ!先生。せんせーい!自分は好きです!

先生のことがすきだぁー!


「好きダァー!あっ…」


勢い余って声に出てた。その結果案の定ルナがいた。


市中引き回しの刑(縄で両手両脚を拘束された状態で、コンクリートの街中をルナによって引きずり回す。)を執行され、最終処刑場へと連行された。


処刑場は神宿池。無論、受刑者は生贄として捧げるために連行されてきたのだ。


「ではこれでヒカルの機嫌も少しはよくなることでしょう。しっかり刑の執行の様子は黒猫に撮影して貰いましたからね。」

「ええ、もちろんですとも。こやつは、それはそれは酷い大罪人。人として扱うのが勿体ないくらいですね。」

「くそぉ。覚えてろ。」


ルナの目を盗んでマルが謝罪してるのは見えたが、そんなんでいままでのがチャラになるわけないだろ!お前の役目なら今助けろ!


「では行ってらっしゃい。」


ルナにポン!と突き落とされ池へとダイブする。

息が出来ず、もがくがどんどん引き摺り込まれて、意識を取り戻した時には白蛇様の精神世界だった。


「お気づきですか?ずいぶんと‥戦われてきたんですね。それとも何かに追われてたんですか?」

「強いて言うなら両方です。」

「そうでしたか。それはお疲れ様でした。しかし、見てください!この精神世界の広がりよう!そして水質も改善されています!なんとお礼を申し上げて良い事か!」


確かに以前よりも数段と広がり、以前は石舞台しかなかった中央部にな社殿も建っている。


「ええ、それはよかった。これも全て白蛇様のお力のおかげ。」

「何をおっしゃいますか!あの黒猫さんと、あなた様のおかげです!これで、証も差し上げることも容易になりました!」

「あ、ありがとうございます。そ、そしたらもう生贄は‥」

「ええ、生贄はいりませんよ!どうしてもっておっしゃるなら受け取りますが。」

「いえいえ!滅相もない!白蛇様に捧げるのはこの信仰心そのものですから!」

「そうですか!ありがとうございます。どうか、またいらしてくださいね!その時は少し味見くらいはさせてもらいますが。」


え?味見って食べるって事だよね?思わず自分の耳を疑い、聞き返す。


「味見ってつまり。」

「ええ、食べますよ!」


冷や汗が止まらない。顔面蒼白状態だ。


「ウソです!ウソです!冗談です!ヘビージョークです!ヘビだけに!」


さすがにこのヘビージョークにはカチカチに身も心も凍りついた。

遅れて普通にやってきた二人とマルは凍らずに済んだようだ。


「おい!大丈夫か?大変だ!魔法で心臓が凍ってる!だ、だれか!真実の愛を!カケルに!」


このふざけた行動には何の意味もないが、一応心臓の動きを確認して救助を求めるマル。


「いえ、私は王子ではないので。遠慮しておきます。」

「いやです。キスなんてしません。」

「オーマイガッ!いつだってネズミの国の物語では真実の愛がお決まりなのに!」

「普通に解凍しましょう。」


冷静な倉橋がライターで暖を取らせる方法を提案する。


「どーしてなんだ!二人ともファンタジーが足りないぞ!ここでは真実の愛によって凍った心を解かすのがベストだろ!これじゃエンディング迎えられないよ!」

「じゃあエンディングじゃないんじゃないですか。」


マルを無視して倉橋はお線香に火をつけるかのようにジワジワと炙り、解凍作業を進める。気分は炙られたマグロだ。


「ねぇ。もっとはやくできない?ここって寒いんだけど。」


巫女装束のままで来たヒカルは、自分の命の心配より、寒さが気になるようだ。


「それなら、三上さんが真実の愛とやらを発揮して、解凍することをお勧めします。人肌で暖めてあげれば、体温の上昇もしやすい。」

「じゃあいい。」


即答!なんて酷い、このやり取り。なんのためにやってるの?

まさか心を抉るためにわざとやってないよね?

意識あるのを気づいてないにしても酷い。炙りに炙られた自分は動ける程度まで

無事解凍され、寒さで震えながらも意思疎通が可能となる。


「あ、た、助かった。」

「おー!相棒よ。感動の再会!氷の女王に殺されかけるとは。」


やめてくれ!ここで、氷の女王は彼女しか該当しないから!変なことを言うな!それに凍りついたのは白蛇様のせいであって、彼女のせいでは‥ないとも言えないが。


「すいません。まさか、人を言霊で凍らせるほどまで霊力が戻るとは思いませんで。しかし、これなら証の方は大丈夫なはず!皆さん、契約の証を前に出してもらえますか?」


倉橋は腕に付けたブレスレットを、ヒカルは指輪を、自分は首飾りを出す。


「では、いきますよ!」


白蛇様が霊力を放出すると、それぞれに証が与えられた。


「ありがとうございます。白蛇様。」

「いえいえ!あなたはもう一つで真理への挑戦権を得るんですね。ご健闘をお祈りします。もちろんお二人もですが。」

「じゃあ、これで帰りましょうか!白蛇様もお元気で!」


ヒカルは一刻もはやくここから帰りたいらしい。

自分も同感だが。寒すぎる。


「ええ、あなた方もお気をつけて!」


白蛇様のお見送りを受け、精神世界を後にする。



「いやぁ。今回も大変だったな。それでもみんな無事で終えれてよかったよかった。」


満足そうに話しているが、一人だけ大怪我してるの忘れるなよ!傷だらけの10代男子をもっと労ってくれ! 


「ええ。今回は比較的順調でしたね。」

「ふん!あんなことさせられて、こっちは大変だったんだから!変なおじさんに絡まれてストーカーとかされたらどうすんの?誰か責任とってくれたわけ?」


ご立腹なヒカルに対して、責任というワードを盾にこちらに視線を向けるマルと倉橋。


「あー、総合プロデュースは俺だけど、総合責任者はカケルだから、責任はカケルに求めてね!俺は最後に仕事あるから!」


そう言ってマルは消えてしまった。都合が悪くなるとすぐにこれだ。不祥事が出ると急に入院するどっかの政治家並みに不誠実なやつだ。


「はぁ。リアルな話、こんな格好してたの学校のみんなに知られたら。」


本音はストーカーより、学校での視線の方が問題らしい。如何にも中学生らしい悩みだ。

天雲神社近くの稲荷神社に着くと


「総合責任者が責任を取ってくれるらしいので、私は先に帰ります。お二人は稲荷神社からお帰りでしょうからゆっくり話あっては?では。」


そう言い残して倉橋までいなくなった。なんと気まずい。


「はぁ。なんでこんなのを‥」


自分を見てため息をつくヒカル。


「あ、あのさ、本当にごめん。今回の埋め合わせは必ずするから!この通り!」


最大限の謝罪を、土下座、いや、土下座を越える土下寝を披露する。イメージとしては第五匍匐前進並みの腹這い状態で、頭からつま先まで一直線にすることがこの土下寝のポイントだ。


「は?喧嘩売ってるの?」


これのポイントはボケだと思われないようにしなければ、かえって反感を買うので良い子のみんなは安易に土下寝を披露することはおすすめしない。これは先程以上に負傷箇所が増える結果となった実体験から導き出された結論だ。


「はあ、少し殴ったらスッキリしたわ。」

「ほぁい。ありがとうございます。」


殴られて腫れ上がった頬をつたう涙がいかに切ないか。


「よし、帰ろっか!」

「ほぉい。」

「おい!返事はYES MOMだろ?」

「ぃえす、マム!」

「よろしい。」


いつから軍隊になったのかは知らないが、これは奴隷解放宣言と捉えていいのだろうか?

奴隷から兵士になっても、南北戦争で戦わされるオチなら歓迎しないぞ。なんてことを言えば、殺されるより酷い仕打ちがありそうなので言いませんけど!


無事に神社から家路について安息を得たころ、

マルは最後の仕上げを行っていたことを、自分は知らない。いや知りたくもない!






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