第8章 ⑥ 祭りはいつも生きるか死ぬか!?
第8章の6 祭りはいつも生きるか死ぬか!?
いやぁ。思ったより人増えたな。」
「そりゃ増えるでしょ。私と皐月先生だもん。そんな馬鹿みたいな格好でお守り配って、少しは私の気持ちも理解してくれたといいんだけど。」
これは未だに怒りは収まっていないようだ。
「あれぇ。中森君。首のそれはなんですかぁ?今日は休日だから先生怒りませんけどぉ、校則違反だから、学校ではしちゃダメですよぉ。」
先生!その少し怒った顔すら、はぁ、だめだ。ここで隙をみせるとルナの登場もありえる。
至って普通を装わなければ。
「ええ、すいません!このチョーカーは一種の罰ゲームなんです。ヒカルとの賭けに負けて、これを着けることになってしまって。絶対学校では着けませから!」
「そぉですかぁ。まぁ、三上さんもあんまりいじめちゃダメですよぉ。」
優しく諭す先生は神です。女神です。すぐにでも神棚に祭りたい!
「いいんですよ。カケルは好きでつけてるので。ね?」
「は、はい。」
女神と鬼神を相手に癒しと、拷問を同時進行によって行われた自分は右半分を南極に、左半分をハワイに置かれた気分だ。
「皐月お姉さん、三上さん。もう始めますので、準備を!」
倉橋がテントの二人を呼び出すと、美しい巫女達は外へと繰り出す。「おお!」と男共の低い歓声と共にシャッター音がカシャカシャと響く。
「にしても二人とも偉いべっぴんさんですねぇ。毎年来てほしいくらいですわ。」
宮司さんにはそう言われたが、それは不可能だ。
自分の命一つでは一回が限界だ。後何回死んだら許されるのか、疑問なのだ!もうこんな祭りなんて二度と来るものか!と心に固く誓う。
「はーい!終了です!お次の方!」
剥がしては、次。剥がしては次。を繰り返し、
1時間のチェキイベントは終了し、ボーナスイベントへと移る。
「はーい!皆さん!先程のチェキの裏に数字が振ってあります!数字が書いてある人は順番にお呼びしますので、巫女さんとのお話ができます!皆さん少しお待ちくださいね!」
拡声器でアナウンスすると、ゾロゾロと群衆が動くのがわかる。
「中森。ちょっと。」
待機する倉橋から呼び出され、テントへと入る。
「どうした?何か問題でも?」
「ええ。少々問題が。霊力を取ったかたはしばらく動けません。だが、多くの人をここに置いておけるスペースはありません。何処かに運び出さねば。」
「え?それは‥どうしよう?」
「何も考え無しでしたか。てっきり黒猫さんが中森に何か妙案でも伝えていたのかと。」
「案ずるな少年達!私が来た!」
の声方向を見るが何もいない。
「おい!見下げるとはいい度胸だな!少年達!」
下を見るとマルだ。
「おい、先に戻ってるはずだろ!今まで何してたんだ!」
「おお、そんな怒るな怒るな。そのことなら後で理由はわかるし、なんならそれが答えだ。」
「黒猫さん、では霊力を奪うのは手筈通り僕が行い、お客さんは中森が運搬するってことでよろしいですね?」
「ああ、ノープロブレム!計画通りにジャンジャン殺ってくれ!」
殺るのはよしてくれ。せめて眠らせるぐらいの表現を使って欲しい。殺るは流石に印象が悪すぎる。
「おいおい、勝手に話し進めるなよ。運ぶってどこに?しかも気絶した人をそんなに運搬してたら目立つだろ。」
「いえ、不可視化の札は貼りますので、ご安心を。まあ質量が減る訳ではないので、体力勝負にはなるでしょうが。」
そんな自慢げにお札を見せつけられてもこっちは嬉しくない。
「ちなみに、社殿に遺体安置所を作ってもらってあるから、そこに運んでな!」
いやもはや遺体って言ってるよ。
「わかったよ。で?さっき言ってたサプライズはどうなんだ?」
「もうじきわかるよ。いや言ってるそばから来たな。」
テントからそとを覗くと、なにやらテレビクルーとタレントも来てるらしい。おまけにここの市長もお出ましとあり、人出もより増加の一途を辿っている。
「まさか!あれをマルが呼んだのか?」
「おうよ!あれくらい朝飯前よ!」
「しかし、黒猫さん。あれで群衆の目を惹きつけるにしても、後々厄介になりませんか?巫女の二人は目立つことを嫌がってますし。」
「え?そんなこと言ってた?まあ、いいだろ!美人姉妹現る!美人教師に美少女中学生!なんか色んな想像を掻き立てるだろ!」
「おい!それでこっちは死にかけた!これでまた何かあったら‥ああ恐ろしい。ダメだ。死ぬ。」
諤々と震えがら止まらなくなる。
「安心しろ。テントの中の二人からは今の状態は見えない。だからはやく2人のテントに行って、さっさと参加者を眠らせてこい!」
マルの激励を受けて、ボーナスイベントを開催する。ボーナスイベントは10分間喋り放題と銘打っているが、実際には開始5秒もたたず、倉橋によって、殺られる。そして眠りについたように倒れる人々社殿へと運ぶ。
「ねぇ。もっとペース早めらんない?」
さすがに目の前で人が倒れるだけの光景に飽きたのか、ヒカルは枝毛を探し出す始末だ。
「無茶言わないでください。私だけで、参加者の霊力を取り出し、お札に移す作業を行ってるんです。それになにより、中森は大人1人を一人で運んでるんです。10分弱はどうしてもかかります。」
「そのぉ。これって何かいけないことしてますぅ?」
鈍感な早川先生は目の前で倒れていく人を見て悪いこと以外に何を思い浮かべるのか逆に興味ある。
「いえ、あまりの美しさに貧血を起こすお客様が多いようです。お姉さんは気にせずにそのまま座っててください!」
無理くりの説明に倉橋の余裕のなさを感じさせる。
「えっとぉ。それならぁ。仕方ないですねぇ。私はともかく、三上さんは可愛いですからね。」
何とご謙遜を!てか納得するんだ。そこが一番すげぇぇー!
「はぁ。奴隷のくせに。カケルのバーカ。」
どうせなら自分のいない時に言わないと。
ほんと、それじゃあ陰口にならないよ。それはただの悪口だよ。
ダイレクトアタック決めてるよ、ライフポイント直接削られるのは心身ともにきついよ。




