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第15章 ⑤ 神と人

第15章 ⑤ 神と人


「あいつ、そんな事一言も。でもこのまま自分や倉橋、ヒカルも挑戦者として最後まで参加し続けたら、誰かが死ぬって事じゃないですか。それを知った上で自分達を参加させてたんですか?」


「だからヒカル様は当初参加予定ではなかった。

三上家当主の判断です。しかし、予想外の事態が起きた。しかしそれも仕方のないことです。お嬢様をコントロールすることは出来ないですからね。」


「そして、うちの家はなぜか参加した。そしたら、倉橋はどうなんですか?あいつはもしや無理やり…。」


「どうでしょう。しかし私がこの事実を伝えたところ、眉ひとつ動かしませんでしたから。それも折込済みなのかもしれませんね。」


「貴方達のは、面白い一説で結末には大いに信憑性が高いが、まだ謎が多い。だからそれを解明するには自分が当事者になるのが一番。そうは思わないかい?中森。」


聞いたことある声は背後からやって来た。いつもの彼よりも存在感を薄めていたのか、その気配は霧のごとく曖昧で、捉えどころがない。


「やぁ、君もちょうどいいタイミングで来てくれたね。もう一人の挑戦者、倉橋晄君。」


「いえ、相手の様子を知るにはいい機会ですから。元気でしたか?」


「それはこっちのセリフだ。勝手に抜けて単独行動して。それに倉橋、お前この事実を知っても参加してるってどうゆうことだよ。」


「それはすまない。だけど、僕はただ知りたいんだ。真理とは何か?ツトメとは何か?それを解き明かすために参加した。だからその結末がどうであっても、受け入れるつもりだ。君はそうじゃないのか?」


「は?死ぬのが前提でこんなことやるやつがどこにいるっていうんだ。本当なら自分は降りる!」


「いいのかい?そしたら三上さんがやることになる。ですよね、ねぇ、宮田さん。」


倉橋の言葉に対して、慎重に言葉を選ぶように発言する宮田さんにはまだ話していない思惑が見え隠れする。


「いやぁ、そんな風に聞きますか。君は頭がいいだけに、言葉を選ばないね。」


「私はお茶を濁して誤魔化すつもりはない。はっきり言います。私か、君か、どちらかが参加しなければ、彼女がこのツトメを果たす。そして死ぬ。いずれにせよ、誰かが死ぬのは目に見えてます。それでも奴らはこの儀式をやめるつもりはありません。何故ならこの儀式は、派閥のパワーバランスを大きく左右する。その神の根源を押さえれば、他の神など怖くなくなるからです。」


「どうゆうことです!何で俺が参加しないと、ヒカルが参加するんです?派閥って?」


「はぁ。とりあえず落ち着いて。倉橋くん、確かに君の言う通り、中森君が参加しない場合は、ヒカルお嬢様が参加する予定になってる。いわゆる派閥の対立によってね。」


「対立?さっきの意見の違いってやつですか?」


「そう、この日本には神を信じていても、その実大きく三つの派閥がある。

一つは儀式急進派、もうひとつは儀式穏健派、そして自然回帰派。この三つの派閥に分かれる。そして、急進派はこのツトメ、神の奇跡を利用して日本の支配を狙ってきた。対するのは穏健派。彼らは神の奇跡を残しつつも、表立って行動はせず、伝統を守ろうとする人達です。そして回帰派はいわゆる儀式などに反対し、奇跡を望まない人達です。

この三つのうち、必然的に急進派と穏健派の覇権争いになる。回帰派はそもそも奇跡を望んでいないのですからね。参加することはない。

しかし今回はイレギュラーが起きた、回帰派の神社から挑戦者が現れた、それが中森君。君ですよ。その上、穏健派は今回のツトメに挑戦者を出すものの、相次いで敗退。現在的にツトメに残った挑戦者は君と倉橋君、ヒカルお嬢様。この三人だけになった。そこにいる倉橋君は急進派の二神会長のご意見に従うとのことなのでね。そうすれば、自然と残りの人を狙うしかない。そこで私の出番です、君に私達三上家の派閥、穏健派に入って貰い、ツトメを終わらせる。奇跡を終わらせる方向でやって欲しいのです。それが現在の穏健派の結論です。もはや奇跡に縋るのは弊害が多すぎるとの結論でね。奇しくも回帰派の結論と同じになるなんて、今までの行動とは矛盾していますがね。」


「凄い欺瞞ですよね。誰かにやって貰って自分の所は犠牲を出さない。そんなに孫娘がかわいいなら箱にしまっておいたらどうです?」


倉橋は人差し指と親指を出して手を握り、銃のようにすると、


「バーン」


と言うと、人差し指の先から風圧が飛び、宮田さんの頬を掠める。すると宮田さんの頬から微かに血流れるのが見てとれる。



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