皇帝と属国の王の会話
「おやおや……。それで、どうするつもりですか?」
緑色の光沢を持つ銀髪が揺れぬように笑いを噛み殺し、男性は映像に映る青い長髪と褐色の肌を持つ女性に問い掛けた。
『どうもこうも、無いわよ。あの子があそこにいる可能性が浮上したんじゃ、動くしかないでしょ。口煩い奴も『言い分は解ったわ。つまり、私の代わりに一対一で説明してくれるのね? 助かるわぁ』って言えば、大抵の奴は大人しくなるし』
「そう言われたら、誰だって大人しくなりますよ。面と向かい合って苦情を言われるのは嫌ですし」
『向かい合って苦情を言われる『だけ』なら、まだ良いわよ。無表情な顔で見つめられる方が怖いって』
「そうでしたね」
女性は何を思い出したのか、身震いしてから両腕で己の体を抱き締めた。自然と腕を組むような状態になり、露出狂すれすれと称される衣装の胸元から豊かな胸がポロリと出てしまいそうな程に持ち上げられた。
男性も心身共に『男』だが、心に決めている女性が別にいる。故にこの人物の行動では視線が釣られる事は無い。
そもそも、この女性に見える人物は、下にも『性別・男』でなければ存在しないものが生えている。物理的に二つの性器を同時に持っている人物に出会うのは、この人物が初めてだ。言動こそは女性寄りだが、中身は男寄りで女好きだと知っている事も有り、前世で言うところの『歌舞伎町に居そうなオネェ』に該当する特殊な人物だと理解している。
『先行してディセントラに動いて貰っているわ。向こうの査定もやっと終わるし、手紙も書いたし。そろそろディフェンバキアにも動いて貰うわ』
「オニキスですか?」
女性が口にした『動いて貰う』に、込められた意味を考えた男性は正解だと思う単語を口にした。
『まだそこに在るんでしょ? 埃を落としてからお願いね』
正解と言わんばかりに笑みを浮かべて、女性は『お願い』と口にした。具体的に何をお願いしたのか判らない会話だが、男性は何をお願いされたのかきちんと理解している。
「分かりました。責任はそちら持ちでやらせて頂いていましたし。細かいところは現場判断として、こちらで決めます」
『助かるわぁ。あ、そうそう。伝言代わりの映像を取るの?』
「こちら側の事情説明として、それは必要になると判断しています。最終的に協力を要請するのですから、状況の説明は必要です」
『どうせなら、サイを向かわせようかと思ったんだけど』
「軍部の重鎮に何をさせるんですか」
思ってもいなかった提案を受けて、男性は脱力した。サイ――正しい名はサイヌアータと言い、本国では軍部の重鎮の一人を務めている。
『顔見知りに言わせた方が説得力がありそうじゃない?』
「駄目です。彼では手持ちの情報を根こそぎ持って行かれます」
『現状を考えると別に良いんだけどね』
「扱いが雑ですね。どうでも良いですけど」
『あんたも扱いが雑ね。……どの道、長期間出向するのなら、事前に色々とやらないとだから無理か』
互いの意見が一致した事で、サイに関する話題は終わった。
『ディセントラ経由で手紙を渡して、どこまで出来るか確認ね』
「百年持ち堪えていても、これから潰れる兆しが在るのなら手を貸す意味は無い。ですか?」
『それは言わなくても解るでしょう?』
「それもそうですね」
あはは、と二人は揃って声を上げて笑った。




