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モブキャラとして無難にやり過ごしたい  作者: 天原 重音
軌道衛星基地にて 西暦3147年8月

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話し合い後に~松永視点~

 食堂で星崎と別れた松永は、飯島大佐を連れて隊長室へ戻った。予定よりも早く佐久間支部長へデータと報告書に一言添えて、メールで纏めて提出し、星崎との先のやり取りについて飯島大佐と話し合う。応接セットのソファーに対面で座り、松永は飯島大佐に考えを尋ねた。

「星崎の先の回答はどう思いますか?」

「アレは完全な白だ。これ以上は疑う必要性も無いな」

「そうですね」

 先程、松永が星崎へ投げ掛けた質問の『それでも』の本当の意味は、『己が造り上げた武器で、味方を討つ事になるかもしれないが良いのか?』と言う事だ。

 松永と飯島大佐は、星崎が『否』と答えるのか注目したが、全く見当違いな回答が返って来た。あの反応では、敵味方よりも開発部の事しか考えていないのだろう。

「星崎は敵に関する何かしらの情報を持っていて、その情報から『アレは味方では無く、敵だ』と捉えているのか」

「あるいは元々敵だったのか。分からないですね」

「そうだな。星崎が何かボロを出してくれれば、何か判ると思うんだが」

「抜けているようで、肝心なところは口にしない。演技なのか、素の反応か。それすらも判断不可能」

「思っていた以上に厄介だな」

「ただ、保有知識量が多いからか、誘導すればある程度は騙せるようですが」

「……抜け加減が絶妙だな。佐藤に爪の垢を煎じて飲ませたいぜ」

「教わっていない筈の書類仕事もこなせるので、是非ともそうしたいですね」

 途中から、ここにいない問題児(佐藤大佐)を思い浮かべて、二人は揃って息を吐いた。二人は暫し無言で解決の糸口を探る。

「飯島大佐。ボロで一つ思い出した事が有ります」

 先程、飯島大佐が言った『ボロを出してくれれば』の言葉で、松永は三日前のやり取りを思い出した。

「何を思い出したんだ?」

「第五保管区で敵機が暴れたあの日、星崎は支部長の目の前でボロを出していたようです」

「けど、支部長が俺らにボロを聞いたとは一言も言っていない。それはボロの確認が済んでいないって事じゃないのか?」

 飯島大佐の指摘を聞き、松永は『確かにそう思うだろうな』と内心で思った。

「実は三日前に、そのボロの内容を教えてもらいました」

「内容を聞きたいところだが、どうせ支部長から口止めされてるんだろう?」

「ええ。他言無用と言われましたね」

 佐久間支部長は確かに『内容の他言無用』と言った。

「で、ボロの内容を聞いた感想は?」

 けれども、佐久間支部長から『感想を誰かに言ってはいけない』とは言われていない。若干、言葉の粗探しじみているが、飯島大佐もそれを解っていて尋ねている。松永は取捨選択してから回答する。

「そうですね。……荒唐無稽過ぎたので、何とも言えないですね。ただし、状況証拠は揃っています」

「……証拠が揃った荒唐無稽な話。聞きたくないな」

「ですが、思っていた以上に星崎の行動と符合する点が多いです」

「例えば何が在る?」

 飯島大佐からの問い返しに、松永は佐久間支部長と同じ事を告げた。

「あのマイペースな行動は周囲に合わせる為に行っている可能性が高いです」

「周りに合わせる理由が見えん」

「一歩下がって周囲を観察してから、周りに合わせて動く。常に一歩遅れて動くからマイペースに見える」

「確かに周りに合わせる――と言うか、溶け込む事に気を使っているみたいだな」

 溶け込むと言う、飯島大佐から出た単語に松永は、確かにその方がしっくり来ると思った。

「それでも実力は隠し切れていないから、意味が有るように思えん」

「そうですね……」

 頷き合っていると電子音が鳴り響いた。松永が執務机に向かい、席に着いて卓上映像通信機を操作する。通信の相手は佐久間支部長だった。

「おや、佐久間支部長。何か問題でも発生しましたか?」

『錦戸准将が急にやって来たんだが。心当たりは、有るよな?』

「その件に関しては、私よりも飯島大佐の方が詳しいです。今、通信を代わります」

『飯島大佐? そこにいるのか?』

「ええ」

 映像の中で訝る佐久間支部長に松永は短く肯定してから、交わされる通信内容を聞いて呆れていた飯島大佐を手招きした。手招きに応じて、松永の代わりに席に着いた飯島大佐は支部長に軽く挨拶してから、何が遭ったのか簡単に説明した。

 松永はおまけとして、星崎から譲り受けた録音データを送り、こちらの無実を証明する。

「――こちらからの報告は以上です」

『……………………よぉーく、理解した。うん。厳罰ものだな』

 送った録音内容を聞いた映像の中の佐久間支部長は、眉間を揉み、長い沈黙を挟んでから、急に投げやりになった。声が半分程死んでいるので、どうでもよくなった可能性が高い。

『えっ!?』

『何か不満が有るのか?』

『そ、それは……』

『ただでさえ予定が詰まっている、このクソ忙しい時に問題を起こした自覚が無いのか。……あぁ、そうだ。飯島大佐、今のガーベラのパイロットはこの面子の事を聞いて、何か言っていたか?』

 問題を起こした隊員達もそこにいるらしく、困惑の声が聞こえて来た。どうやら、処罰が軽くなると、馬鹿な事を思っていたようだ。共にいる錦戸准将はどのような説明をしたのだろうかと、松永は気になった。

「言っておりましたが……。松永、あいつ珍しく毒吐いていたよな?」

「確かに毒を吐いていましたね。『支部長の無茶振りを体験したい、血の気が多くて血気に逸る、被虐趣味の立候補者が沢山いるんですね。パイロットの立候補者が掃いて捨てる程にいるなら、一人ぐらいは適性者が見つかりそうなのに』と」

 全くもってその通りだと思った二人は、うんうんと首を縦に振る。

『確かに、良い感じに毒を吐いてるな。誰の影響か気になるが』

「佐久間支部長。それはどう言う意味でしょうか?」

『ははは。細かい事を気にするな。邪魔したな』

 その言葉を最後に、佐久間支部長は逃げるように通信を切った。

「逃げたな」

「逃げましたね」

 ブラックアウトした画面を見つめて、二人は揃ってぽつりと呟いた。

 あとで直接佐久間支部長に会いに行こうと、松永は今後の予定を変更した。


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