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モブキャラとして無難にやり過ごしたい  作者: 天原 重音
新しい変化 西暦3147年12月

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206/209

会議でルピナス帝国の外交部の魔窟度を教える

 午後、会議室にて。

 事前に通達が行っていたのか。マオ少佐の紹介は流すように軽く済まされた。 

 マオ少佐の紹介が終わったら、今度は交流会に関する話し合いになる。

 だが、松永大佐がサイから届いたメールの内容を開示した事で、メールが届いた時に居合わせた三人を除き、支部長以下全員が顔を引き攣らせた。

「星崎。私の記憶が確かなら、星崎はルピナス帝国の外交部を『苛めっ子揃い』と言っていなかったか? そんな事を漏らしていた気がするんだが」

 支部長は顔を引き攣らせて、そこで大切な情報を思い出したのか、自分への質問を口にしながら眉間を揉み始めた。支部長の質問内容を聞いて、自分は『よく覚えていたな』と素直に感心した。 

「よく覚えていましたね。ただの苛めっ子が揃っているのではなく、国家の中でも取り分けて優秀な人が揃う部署です。ただし、自他ともに厳しい人が揃っている部署でも在るので、結果的に苛めっ子揃いになった部署です」

「……ルピナス帝国は大きな国だよね?」

「はい。正式名称は『ルピナス銀河群帝国』で、十数個の銀河から成る、向こうの宇宙の五大大国家の一つです」

「改めて聞くと滅茶苦茶大きい国だね。たった一国で、地球の全人口の何倍もの人口を抱えていると考えると、ルピナス帝国の外交部は『エリートの中のエリート』が集う部署なのか?」

「認識はそれで合っています」

 支部長の言葉を肯定した。同時に室内がちょっと騒めいた。

 室内が静かになるまでの短時間で、ルピナス帝国の外交部に関する情報を思い出す。


 ルピナス帝国の外交部は『選ばれただけのエリート』とは違い、『保有する全ての能力を駆使してエリートの座を掴んだ真のエリート』なのだ。日々の切磋琢磨を忘れない面々なので、敵に回すと面倒この上ない。

 小国辺りなら、宰相の地位に余裕で就ける『努力を重ね、更なる能力向上を目指し続ける天才』で、構成されているような部署だ。他国から最も警戒されているルピナス帝国の部署でも在る。

 最も厄介なのは、『使えるものは何でも使う』と言う点かな。

 話し合いの中で、『暴力を振るわれた』とか、『暴言を吐かれた』などの事実が有利に働くように、『使える事実は何でも使う』し、情報の使い方も軍部や他所の部署と比べて頭一つ抜けている。

 最も使いやすいのは『自身の外見』だ。悪びれる事も無く、外見を使って油断させる。そしてこれが常套手段と化しているので、全員身形には気を使う。その為、外交部に所属するものは『観賞用の美形』揃いなのだ。

 外見を武器にするので、口の軽い人を口先で弄びはするが、体を使ったハニートラップなどは忌避する傾向にあるので使わない。弄びとハニトラの境界はどこだろうね?

 

「ルピナス帝国の外交部は、『使えるものは何でも使って結果を掴む』人しかいません。使えるものは何でも使うので、自身の外見とかも武器にします。そして、武器にする外見に似合う服装を追求するので、ぱっと見で性別を間違える人が多いです」

「……そんなに多いの?」

「はい。一言も喋らなかったら、大抵の人は高確率で間違えます。初見で見抜ける人は少ないです」

「えぇ……?」

 質問者の工藤中将は、自分の回答を聞くと困惑した。困惑したのは工藤中将だけではない。自分と工藤中将のやり取りを聞いていた全員が困惑し、頭を抱えた飯島大佐がぼやく。

「そんな奴が交流会に来たら、間違いなく荒れるぞ」

「そうでしょうね」

「いや、『そうでしょうね』じゃないだろ」

 飯島大佐のぼやきを肯定すると、マオ少佐の突っ込みが飛んで来た。

「今回の交流会は久し振りなんですよね? セタリアが荒らすのなら、本人が責任を持つでしょう。ですが、外交部が荒らすとなると、別の意味で問題が発生しかねません。この二点を理由に拒みます」

「拒めるのか?」

 ルピナス帝国と日本支部の力の差を考えると『拒めない』と考えてしまうのは、ある意味仕方が無い。

 けれど、ルピナス帝国は、外交限定になるが、力でごり押しをする事は少ない。理由も無く外交圧力を掛けると、色々と疑われる国でもある。要らぬ疑いが何を齎すか分からないから、納得させる事が出来れば拒めるのだ。

「我儘を言い出した馬鹿は、様々な意味で問題児です。派遣人員に問題が有る事を理由に、何が何でも拒みます」

「星崎。誰が来るのかは判るのか?」

「はい。メールに書いて在りました」

 誰が我が儘を言い出したのか判明している。それを言えば、室内にいる全員の興味を引いた。支部長に至っては、前のめりになっている。

「具体的に言うと、どれぐらい問題児なの?」

「支部長が対談したサイと比べるのなら、……分かりやすく料理で例えますね」

 件の問題児を料理で例えれば、支部長以外の人も一発で解るだろう。例えがちょっと極端になるが、大体合っているから問題は無い。

「支部長。豪勢な鯛の活け造りを食べたあとに、イナゴの佃煮みたいなゲテモノ食材を使った料理のフルコースは食べられますか?」

「それは無理」「例えが酷すぎて何とも言えねぇ」「それ以前に、その問題児はゲテモノ食材扱いなのか」「何でイナゴの佃煮なんだよ?」

 支部長は拒否し、方々からツッコみが飛ぶ。

「見た目で男も女も平等に泣かせる奴なので、農作物を荒らして老若男女問わずに困らせるイナゴで十分ですね」

 問題児の見た目は、観賞用として見るのならば、完成されている。完成されているからこそ、真実を知った男女は平等に泣くのだ。性格も割とウザいので、例えが『イナゴか、ハナカマキリ』みたいな虫になってしまう。

「サイが鯛の活け造りならば、問題児はゲテモノ料理です。人によっては拒絶反応を見せます」

「ふむ。対話する相手を選ぶのか。他の支部長に最初に会わせる相手にするには、問題が多過ぎる」

「はい。これがサイだったら、私も反対はしなかったんですけど」

「彼か。吃驚するぐらいに良識的だったな。彼なら私も諸手を上げて受け入れるぞ。同じ支部長級として会話がしやすい」

 支部長の言葉に、サイと面識の無いマオ少佐以外の殆どの人が『でしょうねー』と同意した。

 周辺を見ると、他の人も『だよな』みたいな顔をしていた。


『えぇ~、僕の一体どこが虫なのさ? 僕は自分の見た目に合う服装と美を追求しているだけだよ♪ 勝手に誤解する向こうが悪い。それ以前に、僕みたいな子が己に合った服装をしていないなんて、世界の損失だと思わない? 思うよね? 思うでしょ? 思ってよ』

 過去に一度、外見について言及した時の返答がこれだった。

 余りにも態度がウザいと言うか、イラっとしたので手刀でピンク色の頭を叩いた。手加減したのに大袈裟に騒いだので、今度は尻を叩いた。

『ケツが割れる!? ちょっと!? ケツが六つに割れたらどうしてくれるの!?』

『そこは四つじゃないのか』 


 問題児とのやり取りを思い出すと、派遣人員としては不適切だ。神崎少佐の方がまだマシだ。

「星崎ちゃん。凄い顔になっているわよ」

「大丈夫です。神崎少佐の方がマシです!」

「「「「「「何の話だよ!?」」」」」」「「「「神崎の方がマシって何!?」」」」

 思わず力説したら、盛大な突っ込みを受けた。突っ込みを受けて、自分は回答を間違えた事に気づいて焦った。

「おい、ホシザキ。何がマシなんだ?」

「服装です」

 マオ少佐からの質問に即答すると、皆揃って怪訝そうな顔をした。

「おい、どんな意味であのゲテモノの方がマシなんだよ?」

「生物学的な性別に則った服装をしていると言う点では、神崎少佐の方が真面です」

「逆にどんな奴か、分らなくなって来たな」

 誰かの発言と同意見なのか、殆どの人が首を縦に振った。

「星崎。外見に問題が有るのなら、一度こちらに呼ぶか、通信で話をしてからでも遅くはないぞ」

「松永大佐。性格にも問題が有りまして……。下手をすると、『対話をしていて、気づくと了承している』とかが起きますよ。絶対、こちらを言いくるめに来ます。あのセタリアに『少しは手加減をしろ』と言わせる問題児です。セタリアに尻を引っ叩かれても止めない問題児でもあります。交流会に連れて行って、他所の全支部長どころか交流会参加者全員が、心に深い傷を負って号泣してもいいのなら、私も諦めます」

「それは駄目」

 松永大佐からの質問に答えたら、支部長が却下した。けれど、支部長は腕を組んで熟考を始めた。

「……だが、通信で対話をしてから決める松永大佐の案は悪くないな。一度話してから決めよう」

「支部長。後悔しますよ」

「そこは断言しないで欲しいな」

「件の問題児は、ハナカマキリと変わりません」

「ますます混乱する例えだな」

 ともあれ、支部長の要望通りにサイと通信を繋いだ。

 通信に出て来たサイに『問題児と対話をしてから決める事になった』と伝えた。すると、サイは自動翻訳機を装着した状態で回答してくれた。

『肝が太いのか、懐が深いのか……。まぁ、顔を出して喋るだけなら、精神的な被害だけで済むか』

『え゛』

 サイは自動翻訳機を身に着けて回答した。それは、室内にいる全員が、サイの発言を全て聞き、その発言内容を正しく理解した事になる。

 サイの言葉の意味を理解した、支部長を始めとした殆どの面々の顔色が変わった。幾人かが立ち上がって『やっぱり止めよう』と慌てて提言し始めた。

 血相を変えた大人達を落ち付かせ、席に腰を下ろすように声を掛けた。

 全員が椅子に座った事を確認してから、自分はサイに確認した。

「サイ。外交部の人間は誰が動けて、誰が動けないのか判る?」

『判るぞ。まず、ラジェルスとサラセニアは休暇を取っているから無理だな』

「げ。よりにもよって、比較的真面な奴が不在なの?」

 サイの回答を聞いて自分は思わずギョッとした。

 困った事に、『ルピナス帝国の外交部で比較的真面な人間トップスリー』の内、二人が不在だった。

 サイは頷くと片方が不在の理由を教えてくれた。

『ああ。ラジェルスは、他家に嫁いだ四番目の娘が三人目の孫の出産予定日五日前になったから、溜まった有休を消化するついでに様子見に行くとか言ってな。……もう二十日も経過するのに、まだ帰って来ない』

「……無理に呼ぶと、あとが面倒だから、ラジェルスは放置で良いか。サラセニアはどうしたの?」

 ラジェルス――正しい名はラジェルストレミアは、愛妻家で親バカな事で有名な美丈夫だ。

 こいつは『家族が関わると暴走する』悪癖が有った。それでも他の奴に比べると比較的大人しい。家族が絡まないと、影の薄い男なんだが、とある武勇伝持ちでもある。

 その武勇伝の内容だが、実際に次のような事をした。

 初孫が誕生する時に、押し付けられそうな仕事を回避する為に『一度辞職して、初孫とのスキンシップを堪能したら外交部に戻って来る』と言う離れ業をやってのけた。

 一部では未だに、この行動が武勇伝として語られている。

 家族が絡むと暴走するので、家族を理由に有休を使ったのならばそっとしておくべきだ。

 触らぬ神に祟りなし。こいつの報復は地味に面倒なので、放置以外に対応は無い。

 ラジェルスの対応を決めたので、もう一人のサラセニアについてサイに尋ねた。

『サラセニアは宇宙男姉妹連合にも所属しているだろ? 連合関係で呼ばれたとかで、もう一ヶ月ぐらいは戻っていない』


 外交官が変な連合に所属して良いのかと疑問を抱くものはいるだろう。

 だが、宇宙男姉妹連合は名称の割に古く、大規模犯罪組織並みの勢力と人員を長年維持している、星の数ほど存在する結社の中でも別格扱いされている。

 犯罪組織の幹部やトップの中には、宇宙男姉妹連合(ここ)の傘下の化粧品会社を利用する為に所属しているものまでいる。しかも、ただ所属しているだけでなく、気に入らない犯罪組織の裏情報を、宇宙男姉妹連合を経由して政府に流す奴までいる。

 裏社会の情報にも精通している人物が『民間人の振りをして所属している』ので、政府側も宇宙男姉妹連合に希望者を所属させて内部を探らせている状態なのだ。

 カオスな状態の宇宙男姉妹連合は基本的に『所属会員同士の交流には口を出さない』のだ。宇宙男姉妹連合所属会員同士の交流と言う名目で『政府と犯罪組織の交渉』が行われても、何も言わない。

 何も言われない事を良い事に好き勝手をやると、他の所属会員に粛清されるので、一定の秩序は保たれている。

 所属会員同士で疑心暗鬼にならないように、どこの国もここに派遣する人員は外交官(希望者)を中心に選んでいる。

 こんな理由が有るので、ルピナス帝国も外交部所属のサラセニアを宇宙男姉妹連合に派遣している。他にも派遣しているものはいるけど、増えて困る事は無いので、他の人員は黙認状態だ。

 サラセニアは『歌劇団の推し活がしたい』と言う、実に自分本位な理由で立候補しているので、押し付けていない。

 蛇足情報になるが、サラセニアの推しの対象の歌劇団は、日本で言うところの『宝塚歌劇団』に近い歌劇団だ。

 

 サラセニアと宇宙男姉妹連合に関する情報を思い出してから、サイに確認を取る。

「確認だけど、サラセニアはどんな用件で呼ばれたの?」

『ほら、あそこは色んな会社を経営しているのに、育成学校とかも運営しているだろ? 劇団とか、芸能事務所とか、化粧品会社とか、美容系の病院とか、人材確保の育成学校とか。今回は、あそこが経営している化粧品会社の新作発表会に参加と、芸能系の育成学校に講師として呼ばれたらしい』

「何の講師よ? 外交官に依頼する内容じゃないでしょ?」

『本人が言うには、話術系と、外見に見合った服の選び方の講習をするとか、言っていたな』

「残酷なまでに適任過ぎる」

 己の容姿すらも武器にする、ルピナス帝国外交部直々の講習。

 金を払ってでも、講習を受けたいって奴は意外といるので、好評で終わるだろう。

 サラセニアの仕事ぶりについて思い出そうとして、ふと重大な事に気づいた。

「あれ? まさかだけど、今の外交部って、バンダ以外に暇な奴がいないの?」

『困った事に、その『まさか』なんだよなぁ。陛下も、そっちに最初に派遣する外交官はケリアにするって言っていた』

 こちらに最初に派遣する予定人員の名は、『ルピナス帝国の外交部で比較的真面な人間トップスリー』の最後の一人だった。ケリアは比較的若手の部類に入るが、件の問題児と性格と言動を比べたら、『月とスッポン』としか言えん。

「ケリアなら大丈夫か。そこでバンダを選出したら、流石にあたしもセタリアの正気を疑う」

『外交部の実態を知る奴なら、全員同じ事を言うだろうな』

 サイと意見が噛み合ったところで、自分は支部長を見た。

 自分とサイのやり取りを聞いて、滝のような脂汗を掻いているけど、大丈夫かしら?

「支部長、どうしますか?」

「どうもこうもない。撤回する。不用な事をする必要は無いからね」

『賢明な判断だな。『能力も癖も超一流』で構成されている外交部の連中に、迂闊に接触すると致命傷を負うぜ』

「火傷で済まないのか。火力が高いな」

 半笑いになった支部長が撤回した事で、近づいていた嵐の気配は無くなった。


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