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モブキャラとして無難にやり過ごしたい  作者: 天原 重音
再会と出会い 西暦3147年11月

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惨劇(笑)は何時起きるか分からないものだ

 さて、予定通りにツクヨミに到着したが、受付でトラブルが発生しているとかで、チャーター機から降りるのに時間が掛かった。

 氷室中将がトラブル解決に協力すると申し出た事で、やっと降りる事が出来たけど、二十分ぐらいは時間が掛かった。

 大人達と一緒に、何が起きているのかと顔を見合わせた。

 けれど、受付の惨状(?)を見た事で、大体の状況を把握した。

 一体何が起きているのか? その回答は、迷惑な来訪者三名――スーツ姿の男性一名と軍服姿の男性二名――の内、スーツ姿の男性が受付の男性に怒鳴り散らしていた。ただそれだけである。傍迷惑過ぎるわ。

 天を仰いだ氷室中将は、対応について相談する為にスマホを操作して支部長に連絡を入れた。

「……あー、はい。分かりました。てきとーに、やっておきます」

 氷室中将は投げやりな態度で応答し、スマホを操作し通話を切った。

「あそこにいるのは、フランス支部長と護衛兼秘書のお供よ。アポ無しで押し掛けて来たって、支部長が言っていたわ。松永大佐、武藤、追い返せるのならば、手段は問わずに好きにやって良いって」

「支部長、そこは手段を問おうぜ」

 スマホをポケットに仕舞いながら行われた氷室中将の雑な説明に、飯島大佐は頭を抱えた。頭を抱えても突っ込みだけは忘れない辺りが飯島大佐だね。

 頭を抱えた飯島大佐とは対照的な事に、松永大佐と武藤教官は目を鋭く細めた。二人揃って、獲物を見つけた肉食獣みたいな顔をしている。

 フランス支部長はアポ無しで来たみたいだし、これから何が起きても自業自得と言う事にしておこう。

 氷室中将と松永大佐と武藤教官の三人は、荷物を飯島大佐に預けて、騒ぎの中心へ向かった。

 ……その後ろ姿は頼もしい筈なのに、氷室中将を中心とした『地獄からの使者御一行様』にしか見えないのは何故だろう?

 フランス支部長の身に起きる惨劇(笑)を考えると、合掌した方が良いかと思わなくも無い。だが、これは自業自得だ。そうったら、そうなんだよね。不憫だけど。

『はぁい。フランス支部長。我が支部の受付で何を大騒ぎしているんですの?』

『だから、支部長を出せと――って、誰だ!? 私を誰だと、思って……いる』

 氷室中将がフランス支部長に英語で話し掛けた。フランス支部長は激昂するも、誰がやって来たのかを確認するなり、風船が萎むように勢いを無くした。隣の秘書兼護衛は一瞬で諦め顔になった。

 顔を青褪めさせたフランス支部長を見て、氷室中将はころころと笑っている。少し離れたここにまで、氷室中将の笑い声が聞こえた。

『ひっ、か、カーリー!! る、るる、ルシファーに、ぶ、ブリザードフォックスッ!? 何故ここにいる!?』

 武藤教官、松永大佐、氷室中将の順に、やって来た人物の顔を見たフランス支部長の絶叫が聞こえて来た。ここは日本支部だからいてもおかしくは無いと思うんだけど。

 てか、武藤教官は他支部からは『カーリー』と呼ばれていたのか。『カーリー』はインドの女神様だけど良いのか? 確かにカーリーは戦の女神様だけど、武藤教官は血に飢えていないぞ。

 そして、氷室中将の渾名は、名前に含まれる(アイス)では無く、吹雪(ブリザード)の狐なのか。過去の氷室中将は一体何をやったのだろう?

 自分が氷室中将の過去の所業について考えていた間も、状況は進んで行く。

 ハッキリと顔を引き攣らせて、何かから距離を取るように案内所の机に背中を張り付け、ガタガタと震え始めたフランス支部長がたどたどしい弁明をする。

 自分がいるところにまで聞こえてきた英語による弁明は『情報開示について、対等な交渉がしたい』だったが、時折、フランス語による小声で氷室中将について悪態を吐いている。腹話術のようにフランス支部長の口は殆ど動いていないし、悪態はフランス語なので、聞き取れている人は少ないだろう。

 その悪態の内容は『クソアマ』とか、『女狐が』とか、『()き遅れ』とか、『年増』とか、女性に向かって言ってはいけない単語ばかりだ。

 せめてもの救いは、言われている氷室中将が気づいていないっぽい事か。でも、フランス支部長の護衛兼秘書の二人が、上司の悪態に気づいて表情を少し変えているので、松永大佐と武藤教官はその些細な表情の変化に気づいているかもしれない。

 三人揃ってこちらに背中を向けているから、真実は判らないけど。

 ここで自分も、とある疑問を抱いた。

「飯島大佐。あそこで繰り広げられている会話は受付のところで録音されていますか?」

「お前……、はぁ、唐突に何でそんな事を気にするんだ?」

 呆れてため息を吐いても、怒らずに理由を聞いて来る辺り、飯島大佐は本当に良い人だ。

「フランス支部長が小声で悪態を吐いているんです」

「悪態の内容は何なんだ?」

「女性に対して言ってはいけない言葉ばかりです。『()き遅れ』って聞こえたんですけど、氷室中将の年齢は、幾つですか?」

「……受付でのやり取りの相違が無い事を確認する為に、録音はされている。あとで支部長経由で録音データを回収するか」

 飯島大佐は両手で顔を覆うも、淀みの無い回答をくれた。

 支部長の仕事を増やした気がするけど、今回は指示を出すだけで、実際に動くのは大林少佐か別の人だろう。

 だったら気にしなくても良いかと、結論を出した時、遂にフランス支部長が激高した。

 氷室中将の左右にいる松永大佐と武藤教官の威圧に耐えて、フランス支部長はたどたどしい弁明を繰り返していた。けれども、我慢の限界に達したのか。

 額に青筋を浮かべて逆ギレしたフランス支部長が氷室中将に掴み掛かった。間髪入れずに、松永大佐がフランス支部長の手を掴み、武藤教官が氷室中将を背中に庇う。

『良い歳した大人が、何時まで猿のように騒ぐつもりですか? こちらは事前に連絡を入れてから来て欲しいと何度も言っているんですよ』

『喧しい! 支部が違えど、私は支部長なんだぞ!! もっと敬え!』

「……日本支部では不可能な話ですね」

 フランス支部長の叫びに、心の声が自分の口から漏れた。

 だって松永大佐は、日本支部長を床に正座させたり、今月に入ってだが、他所の支部長を泣かせた実績を保有する。そんな松永大佐がいる三人に向かって言う台詞じゃない。

 それ以前に、権力が通用しない三人に向かって言うのは的外れだ。もうちょい言葉を選べ。

「言うな。言うんじゃない」

「いや、否定しましょうよ」

 飯島大佐は腕を組み、天ならぬ天井に向かってため息を吐いてしまった。

 ……飯島大佐、そこは否定しようよ。いい加減にしないと、支部長がマジで泣くぞ。

 支部長の悟り切った顔を思い浮かべた時、フランス支部長が暴言を吐きだした。

 聞くに堪えない、正に『耳を汚す為の暴言』としか思えない内容に、遠巻きに様子を見ていた人達も不愉快そうな顔をしている。

 フランス支部長の護衛兼秘書も、これ以上は流石に不味いと判断したのか、今になってフランス支部長を宥め始めた。まったくもって遅過ぎる。

 フランス支部長の暴言はヒートアップし、内容がパイロットを侮辱するものに変わった。

 

「カァアアアッ!!」


 その瞬間、全てを断ち切るような一喝が響いた。直後、受付所が一瞬で静まり返った。

 皆の視線が音源の武藤教官に集まる。その正面にいるフランス支部長は情けない悲鳴と共に移動しようとして、腰を抜かしたのかその場にへたり込んだ。

『黙っていれば図に乗りおって……。ここは日本支部だ。佐久間支部長の判断を他支部の支部長よりも優先するのは当然の事。事前に連絡を入れろと、社会人として、大人として、至極当然の事を言っているだけだと言うのに、五歳児のような我儘を何時まで言うつもりか』

 背中に怒りの赤い炎を背負った武藤教官の言葉が響く。大きな声では無いのに、武藤教官の声が少し離れた自分のいる場所にまでハッキリと聞こえた。

『わ、私は、ただ交渉を……』

『その交渉を行う前に、開催すべき会議が存在する。その会議で話し合い結論を出せと言う、こちらの要求に応じない理由は何なのだ?』

『そ、それはっ』

 武藤教官が知っているとは思わなかったのか。フランス支部長は滝のような脂汗を掻き始めた。

 普通の教官は知らなくて当然の情報だけど、武藤教官は支部長に『情報を寄越せ』と要求出来る人物だ。如月学長も信頼している人物っぽいから、そこから情報を貰っている可能性も有るけどね。

『こちらは、正しい手順を踏めと言っているだけだ。何故、それが出来ぬのだ』

 武藤教官の背中の赤い炎が黒く変色し、そのまま『頭蓋骨を持ち、黒い面を被った』何かに変化して行く。

 これが武藤教官の渾名の由来の『般若』なのか。視える背後霊にしては、圧が強い。

 そして、黒い般若を視認した野次馬達は、悲鳴を上げてどこかへ逃走する。その中には腰を抜かしたもの(強面の男性)もいた。その腰を抜かしたものは這うようにして逃げ出した。

 案内所で受付を担当していた人達は、皆血相を変えて逃げ出した。

 逃げ出した面々は、きっと『生存本能に従って』逃げたんだろうな。そんな感じの逃げ方だったし。


 さて、武藤教官の背後に『黒般若』が出現した。この般若は、能で『見てはいけないと言う、約束を破った場合』の話に登場する、『人喰いの鬼婆』だったっけ? 

 源氏物語に登場する生霊(後に悪霊になった嫉妬深い貴族女性)と化した女性が元とされる白般若でもなく、清姫伝説の赤般若でも無く、出現したのが『最も鬼に近い』とされている黒般若である事に驚いた。

 山伏(元となった伝説では僧侶)も逃げ出す黒般若が出現したのでは、確かに成人男性でも腰を抜かすか。


「にゃっ!?」

 般若に関する雑学を思い出していたら、いきなり視界を塞がれた。思わず変な声が漏れてしまった。

「子供は見るな。見るんじゃない」

 声から判断するに、自分に目隠しをしたのは多分、飯島大佐だ。位置的にも可能なのは飯島大佐だけだから合っている。

 しかし、子供は見るなって……。異臭が鼻に届いたけど、一体何が起きたんだ?

『まぁ、こんなところで赤ん坊みたいな事をするなんて……。床の清掃と除菌に掛かった費用をあとでフランス支部に請求しなくてはならないわ』

『確かにそうだな』

 氷室中将のクスクス笑いと武藤教官のため息が聞こえた。

『早急に連れて帰れ。そちらの副支部長にも苦情を入れる。何時までもその椅子に座れるとは思わない事だ』

 松永大佐の脅しの言葉のあとに、悲鳴に似た承諾の声が響き、慌ててどこかへ走って行くような足音が聞こえた。

 ……うん。何が起きて、どうなったんだろう?

「ふぅ、やっと帰ったわね。それにしても、この私を『()き遅れ』と罵るなんて……絶対に後悔させてやるわ」

「口が僅かに動いていたから何かと思ったが、やはり罵り文句を言っていたか」

「その件も、フランス支部へ抗議内容に入れましょう」

 目隠しをされたままなので、フランス支部長の許へ向かった三人の会話しか聞こえない。これまでの会話の内容から察するに、フランス支部長は帰った筈だが、目隠しは何時まで続くんだろう?

 と言うか、氷室中将はフランス語が解るのか。

「飯島。その目隠しは何時まで行う気だ?」

「なぁ、先輩。『大人がちびった現場』を、子供に見せてどうするのか教えてくれ」

「情操教育に悪いから見せる必要は無いな」

 武藤教官。ちびらせた張本人が何を言っているんですか?

「端末を操作して清掃用ロボットを呼び寄せました。ついでに佐久間支部長にも連絡を入れました。野次馬が戻って来る前に移動しますよ」

「あら、気が利くわね松永大佐」

 氷室中将、それは気が利くに該当するの? 支部長を『無理矢理黙らせた』の間違いじゃない?

 目隠しが解除されないまま、会話と複数人の足音だけが聞こえる。そして、目隠しから解放されたと思ったら、今度は頭から何かを被せられて、そのまま持ち上げられ、軽い衝撃を感じた。

「松永。肩に担ぐのなら、せめて一声掛けてからやれ」

「飯島大佐。こんな時間に訓練生がいたら目立つでしょう?」

「そうだけどよぉ。わざわざ上着を脱いで被せる必要って有るか?」

 飯島大佐の疑問に自分も心の中で頷いた。

 着ていた上着を脱いで自分に被せて、肩に担いで運ぶ必要性は無い。

「荷物からタオルを引っ張り出す時間が惜しいです。そんな事よりも、佐久間支部長の許へ移動しますよ」

「松永。支部長を待たせてはならんのは解るが……」

「武藤教官。尻を引っ叩きに行くのなら、今日中に行った方が良いですよ。明日以降はどこかに隠れて出て来ないでしょう。そうなると、他のものに迷惑が掛かります」

「……言われるとそうだな」

 武藤教官。納得しないで。

 大人組の突っ込みどころ満載な会話は、清掃用ロボットが来る事で中断された。

 そして、自分が床に下ろされたのは、支部長室に入ってからだった。



「君達、特に武藤教官、やり過ぎだからね」

 入室するなり呆れ気味に響いた支部長の第一声は、これだった。無言で支部長の傍で控えている大林少佐も、同意するように頷いた。

 何故、支部長と大林が案内所での事をやり過ぎだと評したのか。その答えは、現場の様子を監視カメラで見ていたからだった。

「支部長。リアルタイムで現場の状況を把握していたのなら、私が侮辱された事も知っていますよね?」

「知っているとも。丁度、フランス副支部長とリアルタイム通信をしていた最中だったんだ。データを送信する手間省きで、一緒に映像を見ていたんだ。だから向こうも知っている」

 案内所での一幕を、リアルタイムでフランス支部に流したのか。支部長も大概イイ性格をしている。映像を見たフランス副支部長の感想が気になる。フランス副支部長が乾いた笑い声を上げながら感想を述べそうだ。

「氷室中将。フランス副支部長から伝言を預かっている。フランス支部長のポケットマネーで、詫びのワインと肴を購入して贈るから、それで勘弁して欲しい、だって」

「あら、ワインの銘柄は指名しますわよ?」

「選ぶ時間が省けるから、良いんじゃないか? 氷室中将に伝言を知らせた事を教えるメールを送るついでに、ワインの銘柄を伝えよう」

「まぁ、楽しみですわ」

 氷室中将は上品に笑っている。一体何を仕出かせば『ブリザードフォックス』の異名を得るのか気になるが、深入りは止めるべきだな。氷室中将の過去の所業について考えるのは、棺桶に片足を突っ込みそうな展開に発展しそうな気配が有るし。

 支部長が乾いた笑い声を上げて、天井に向かって長い息を吐いた。

「さて、訓練学校の視察報告を言ってくれ」

 支部長が正面に向き直った瞬間、その顔は引き締まっていた。大変そうだね、組織の長は。

 氷室中将、飯島大佐、松永大佐の順番で視察報告を行い、自分の番になった。如月学長にも言った感想に似た報告を支部長に行う。

「訓練学校は暫くは問題無いか」

「本国の防衛隊が動くのですか?」

 支部長の引っかかる物言いに、氷室中将が反応した。けれど、支部長は首を緩く横に振った。

「いや、教導隊のトップ周辺がちょっと怪しいだけだ。如月学長が行った二者面談のお陰で、大分大人しくなったんだが、根性の有る奴が何人か残っている」

「ほぅ、そうなのですか」

「うむ」

 今度は武藤教官が反応し、支部長は肯定した。案内所のような惨状(笑)に発展しないと良いね。

 

 今日はもう遅いと言う支部長判断で、ここで一旦、解散となった。

 支部長から視察のレポートの提出を求められたが、提出期限は定例会議最終日なので余裕が有る。

 武藤教官は飯島大佐に荷物を預けるなり、大林少佐とどこかへ向かった。

 自分は松永大佐と一緒に試験運用隊の隊舎に帰り、シャワーを浴びて早々に寝た。


  

 翌日の朝食後。

 食後のお茶を飲みながら共に食事を取った武藤教官の口から、昨晩中に発生した『高橋大佐と佐藤大佐の苦難(笑)』について語られて、思わず飲み掛けのお茶を吹き出しそうになった。

 大人二人の尻を引っ叩くだけに、憲兵部と『諜報部(こちらは手隙の人全員)』が総出で動く事態に発展していたとは思わなかったよ。

 姫川少佐が笑顔で高橋大佐(拘束済みの上官)を差し出しそうだとは思っていたけど、『高橋大佐に日頃から発信機を装着させておく』とか、どうなっているんだよ!?

 今になって思えば、姫川少佐がタイミング良く高橋大佐の回収に来れていたのは、この発信機のお陰か。正に『備えあれば憂いなし』の格言通りだ。

 そして佐藤大佐の方は、本人が粘ったらしいが、最終的には尻を叩かれたらしい。

「佐藤の尻を叩くのは十年振りだ。相変わらずで本当に困った奴だ」

 武藤教官はそう言って笑い声を上げた。笑い事らしい。

 ……佐藤大佐。アンタ、十年前まで、武藤教官に尻を叩かれていたのか。

 朝っぱらから、佐藤大佐に関する残念極まりない事実を聞かされた。

 武藤教官だけど、日付が変わる頃に訓練学校に到着出来るように、今日の夕方の便には出発する。見送りは不要と言われたので、武藤教官と話すタイミングは今が最後となった。

 今生最後の別れでは無いし、佐藤大佐絡みでもう一度会う可能性は高い。武藤教官との別れを惜しまずに『そうですか』とだけ返した。

 


 さて、本日は十一月の最終日、三十日である。

 作戦から帰還してそろそろ一ヶ月が経過するのだが、残念としか言えない事ばかりが発生している。

 来月で今年が終わるんだけど、防衛軍側はこれで大丈夫なのかと、心配になってしまう。

 現にツクヨミでは、昨晩の事件(フランス支部長と、高橋大佐と佐藤大佐の三人の件)でもちきりの状態だ。

 やっぱり、作戦が勝利で終わって、襲撃が発生していないと、皆浮付くんだね。



 ちなみに、自分はこの日に大浴場の場所と利用方法について松永大佐から教わったが、試験運用隊にも『ユニットバス付きの寮部屋』が各階に二部屋も存在する事を明かされた。

 灯台下暗しな情報に、思わず脱力した。

 この部屋は将官級の人向けに貸し出す臨時の部屋で、長い間、使用されていなかった。

 バスルームのみの使用、使う度に清掃を行う、将官級の人物に貸し出す時には利用不可などを始めとした条件の許、松永大佐から自室と同階の部屋の鍵を二つ入手した。

「定期点検と清掃は行っているが、いざ貸し出した時に使えないのは困る。一部屋でも、確実に使える状態にしておいた方が良いだろう」

 以上の言葉を松永大佐から貰った。

 一部屋と松永大佐は言ったが、貰った鍵は二つだ。これは二部屋を交代で使用して、掃除も行えって事かな? 掃除と言っても、室内の機器を操作するだけだから、手間では無い。

 松永大佐に頭を下げて礼を言った。

 


 この日の夜。変な言い方だが、今世で初めて、ツクヨミで湯船に浸かった。清掃が行き届いていたので、軽く付いていた埃を洗い流すだけで使えた。

 ユニットバスと聞くと海外の風呂場を思い浮かべてしまいそうだが、実は和製英語なので心配は無い。

 浴室のみの一点ユニットバス(二点ユニットバスで洗面台付き、三点ユニットバスで洗面台とトイレ付きと分かれている)なので、広々としている。

 だが、湯舟が大き過ぎて(自分が小柄で、湯舟がアメリカンサイズだった)溺れないように気を遣わなければならなかった。

 こんなところでオチが付くとは思わなかったよ。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

投稿する度に届く、誤字脱字報告もありがとうございます。


十一月編はここで終わりですが、おまけ話二つと季節ネタ話、幾つかのお遊びネタ話、追加人物分の登場人物紹介も投稿する予定です。


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