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モブキャラとして無難にやり過ごしたい  作者: 天原 重音
再会と出会い 西暦3147年11月

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定例会議四日目とその後の日々

 会議四日目の二十時。

 夕食を取りにやって来た会議の出席者達は、殆どの人がげっそりとした顔で、カウンターに向かわずに椅子に座るなりテーブルに突っ伏した。

 松永大佐や飯島大佐のように、夕食を食べてから伸びた方が良いのに。

 そんな事を思いながら、夕食を食べている松永大佐と飯島大佐に会議がどうなったのか尋ねる。

「言い忘れていたかもしれないが、今月の下旬に訓練学校に向かうぞ」

「訓練学校にもう一度向かうのですか?」

「……そうだ。出発予定日は今月の二十七日で、二泊三日の予定だ。前回と同じく四人で向かうが、最後の一人はまだ決まっていない。前回から二ヶ月が経過するが、この二ヶ月で訓練学校には教員の異動を始めとした対応を行った。今回は様子見と、教科書の内容にも変更点が発生した為、生徒の授業に付き合う事になる」

 松永大佐の口から、知らない間に行われていた訓練学校への対応を聞き、自分は反応に困った。

 これまでの事を考えると喜ぶべきなんだろうけど、在校生達の混乱を考えると、どう反応するのが良いんだ? それ以前に、教科書の内容に変更点が発生したのか。

 

 いやいや、それよりもね。

 

 前回訪れた日は、確かに九月だ。でも、記憶が正しければ、九月の『半ば過ぎ』だ。それを考えると、実質的に一ヶ月しか経過していないと思う。たった一ヶ月、出発する頃には二ヶ月になるけど、時間が短すぎるから劇的な変化は無いと思うんだけど、本当に行くの?

 教科書の内容に変更点が発生したから、生徒の授業に付き合いに今月下旬に行く。色々と訳が分からん。

 この事実について改めて考えて、ふと気づいた。 

「あれ? 私は授業を受け直しに行くのですか?」

「訓練学校に滞在中に教科書を読む事にはなるだろうが、星崎に関しては大丈夫だ。高等部の三年生が悲鳴を上げている可能性は高いが、訓練学校卒業生の教員を増やして対応をしているから、どうにかしているだろう」

「……確かに、新しい学長が松永の同期だから、どうにかしていそうだな」

「学長まで変わったのですか」

 飯島大佐の口から新事実が飛び出した。学期の途中で学長が入れ替わったら、混乱必至じゃね?

「そうだ。大規模な人事の補充と入れ替えを行って、余り時間が経過していない頃なら、修正もしやすい」

「修正しやすいって……、飯島大佐。『混乱に拍車を掛ける』の間違いじゃないですか?」

 思わず批判するような言葉が出てしまった。

 気づき次第、飯島大佐に謝ったが、『星崎もそう思うのか』と逆に感心されてしまった。

「俺もそう思ったから、気にするな。新学長の如月は『松永の類似品』って言われていた奴だ。教官の手綱は握っているとは思うが、一人だけ癖の強い女教官と上手くやれているか心配なんだ」

「癖の強い女性教官? 女性の教官が派遣されたのは、良い事ですよ。何が心配なんですか?」

 訓練学校には何年も女性教官がいなかった。女子生徒間で、女性教官を求める署名活動が行われていたから、受け入れられるとは思うけど。

 何が心配なのか分からず、思い切って飯島大佐に尋ねた。

 そしたら、飯島大佐は唸って変な顔をした。

 ここで、苦虫を嚙み潰したような顔をされたら、飯島大佐は『言いたくない』ってのは判る。

 でも、飯島大佐が浮かべた表情は、どう表現すれば良いのか。唸りが長くなるにつれて、飯島大佐の表情がコロコロと変わる。


 教えたいんだけど、説明に困る。

 実物を見せて説明しても、納得させるのが難しそう。

 

 百面相を浮かべている飯島大佐の考えはこんな感じかな?

「飯島大佐。百面相をしてまで悩む事では無いでしょう」

「そう言われてもな。佐藤が裸足で逃げる、あの般若先輩なんだぜ」

「知りませんよ」

 松永大佐が呆れている。

 個人的には、佐藤大佐が裸足で逃げる『般若先輩』が気になる。飯島大佐に『般若先輩』の詳細を尋ねたが、当日の楽しみにしておけと言われてしまった。

 飯島大佐の言う通り、当日の楽しみにしておくべきなんだろう。けれど、飯島大佐の百面相を見ると、今の内に聞いて身構えていた方が良い気もする。

 質問を重ねても、松永大佐に止められてしまったので断念した。

 松永大佐の類似品と言われる新学長に、佐藤大佐ですら裸足で逃げる女性教官。

 訓練学校に向かう当日が心配になって来たな。



 そうそう。

 忘れていた更科少佐がどうなったかと言うとね。

 会議二日目の朝に顔合わせをしたので、正式な顔合わせは無くなった。会議が長引いた事も理由に含まれる。

 松永大佐が言うには、もう一人会わなくてはならない人がいるらしい。

 でも、来月の定例会議の日に人事異動の知らせと併せて会った方が良い事になった。

 一条大将の駄々こねの余波は凄い事になった。

 


 会議が四日目で終了した結果、松永大佐の仕事はかなり溜まった。

 自分も二日目に来た三人の対応と、セタリアとの通信による『定期連絡に関する話し合い(支部長は不在)』などをこなしたので、そこそこの量の仕事を溜めた。

 地道に仕事をこなし、一日で終わらせた。

 自分に割り振られる仕事の量は少ないが、松永大佐を始めとした会議の出席者の人達の仕事量は凄い事になっていそうだ。けれど、今のところ手伝いを求められる事は無い。

 こんな感じで慌ただしい日々を送っていた最中、具体的には十一月半ば頃。

 工藤中将が泣いて嫌がる高橋大佐を引き摺って、先月の作戦で発生した残骸の回収に出発した。

 今回、姫川少佐は同行せずに、高橋大佐の仕事を代わりに処理する為にツクヨミに残った。

 他にも何か理由が有りそうだけど、会議の決定だ。何も言わん。

「高橋が戻って来る頃には姫川と、階級と一緒に立場が逆転していそうだな」

「はっはっは。そうなったら私の仕事はどれだけ楽になるんでしょうね」

 以上が、工藤中将と高橋大佐を見送った飯島大佐と姫川少佐の感想だ。

 もう突っ込まん。



 工藤中将と高橋大佐が出発したのと同時期。

 支部長は遂にアゲラタムの操縦に関する通知を全支部に送った。『期日の延長は受け付け出来ないから、今月中に決めてね(意訳)』の一文が付け足された結果、予想を超える大騒動が発生した。

 支部長に譲歩を迫る支部が続出しただけならまだ良かった。

 とある支部は松永大佐――ここで重要なのは、一条大将では無い事だ――に貢物(高級ワインセット)を贈り『日本支部長の説得に協力して(意訳)』と協力を求めた。当然のように松永大佐は抗議文書を支部長経由で送り――後日、詫びの品(焼き菓子)が届いた。

 また別の支部『長』は、日本支部長に直談判する為にツクヨミにやって来るも、仕事が溜まり機嫌が悪い松永大佐を巻き込んだ事が原因で号泣しながら帰った。

 何故松永大佐を巻き込んだのかと、茶缶を返して貰うついでに教えてくれた大林少佐と一緒に首を傾げた。

 日本支部に譲歩を迫るよりも、話し合いを進めた方が建設的だろうに、何をやっているんだろうね?

 結局、会議が一度も開かれる事無く終わった。提案した身で言うのもアレだけど、無能過ぎないか?

 この結末をセタリアに教えたら、大爆笑の余り、椅子から転げ落ちたよ。



 防衛軍内のごたごたも酷いが、ルピナス帝国側では予定されていた『転移門破壊作戦』が決行された。

 セタリアから作戦実行中の映像を見せて貰ったが、『蹂躙』の二文字がピッタリな、一方的な戦況だった。

 松永大佐経由で支部長に許可を取り、来月の会議中に視聴して貰おう。

 後日、作戦に参加したフラガから感想を貰ったけど、その内容は『気分爽快。色々と晴らした』と、とてもでは無いが、命懸けの作戦に参加した感想では無い。

 スポーツ競技に参加して優勝したのかって感じだが、これはフラガだけが異端と言う訳では無い。

 サイに確認を取ったが、首都防衛支部の面々は全員こんな感想を漏らしていたそうだ。流石は『選ばれし精鋭(意訳)』と言ったところか。相変わらずのブレの無さだった。

 そして、作戦終了後に行われた首都防衛支部の強襲訓練の結果も教えて貰った。

 結果を先に言うと、結構な数の脱落者が出た。続出って感じで大量に出た。

 脱落者が大量に出た原因は――サイだった。

「一部の建物が老朽化している。建て直しはするが費用を少しでも削減する為に、今回のみ、強襲訓練中に指定の建物の破壊を許可する。これで取壊し工事費と残骸撤去費用を少しでも浮かせる。建物の残骸はアゲラタムで撤去するから、なるべく大きく壊せよ」

 サイの発言が原因で、地獄の展開となった。

 一部の建物に限定されているとは言え、建物の破壊許可が下りた。

 これにセタリアと留守番組の古参勢が食い付き、首都防衛支部から追い出したい一部の面々を相手にした作戦が立案され……阿鼻叫喚の地獄と化した。

 個人的には、もう少し優しくしても良いと思うけど、部外者なので言えません。

 セタリアが絡んだ時点で『諦めろ』としか言えないって事情も在る。

 転移門を破壊する作戦が前哨戦に見える、激しい攻防が発生した強襲訓練は指揮を執ったセタリアが満足するものだった、とだけ言っておこう。要らない人を一人残らず、追い出せたみたいだし。

 この強襲訓練で首都防衛支部に残ったのは、正真正銘『生き延び選ばれた精鋭(意味深)』のみとなった。

 近い未来に行われる、日本支部と交流は出来るのか心配になった。

 


 あちこちで悲喜こもごもな状況が発生している中、遂に訓練学校に向かう日がやって来た。

 一緒に訓練学校に向かう最後の一人は氷室中将で決まった。

 人選の理由は、飯島大佐が警戒する女性教官と氷室中将に、面識が有ったからだった。これには飯島大佐も驚いていた。

 月面基地に寄ってから帰還した工藤中将と高橋大佐の二人と入れ替わる形で、自分達四人は訓練学校に向けて出発した。

 久し振りに訓練学校の制服に袖を通したが、変化は無かった。


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