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モブキャラとして無難にやり過ごしたい  作者: 天原 重音
作戦と試練 西暦3147年10月後半

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見送ったもの達と映像を見たもの達 ~第三者視点~

 国連防衛軍の一団が月面基地へ去って行く光景を、移動式前線基地に改造した小惑星から見送る一行がいた。

『やっと帰ったか』

「はい。残党の有無の確認を行っていたようですが、短距離転移門の残骸回収作業は行っておりませんでした」

 その小惑星内の通信室にて、ディフェンバキア王国の国王のトリキルティスに、前線基地『臨時』総司令官を務める彼の息子たる青年が通信機にて報告を行っていた。

 報告を受けたトリキルティスは去った一団のこれからの行動について考えた。

『回収しなかったって事は、もう一度来て回収作業を行うのかな? それはそれでこちらにとって都合が良いんだけど……。うん、残党は別のところにいるから、今は放置で良いな。先に指定の残骸の回収作業を済ませるんだ。作業が終わり次第、迷彩状態にしてから、もう一度、向こうの惑星に近づいてくれ。今度は接近だけで良い』

「分かりましたが、父上、接近だけですか?」

『そうだ。協力関係になる以上、交戦はしない。戦闘をするとしたら、模擬戦になるだろうね。そして、オニキスとの模擬戦は不可能だ』

「……そうですか」

 トリキルティスは息子の反応から、不満の内容を正しく読み取った。

『もしかして、オニキスと戦いたかったのか?』

 父親としてトリキルティスが尋ねると、息子は目を輝かせた。

「駄目ですか?」

『うん、駄目。と言うか、クォーツじゃ勝つのは難しいぞ。性能に差が有り過ぎる』

「そこまで言うのですか」

『そう言わざるを得ない。今回の破壊活動でオニキスが使用した武装は三種類だったが、武装は他にも積んでいる。何より、クォーツには搭載していない切り札の存在を考えると、勝てるか怪しい』

「クォーツには搭載していない切り札? それは、一体何ですか?」

『教える訳無いだろう。そんな事よりも、先に回収作業を行いなさい。これから忙しくなるんだ。何より、お前の無断行動が原因で何を要求されるか分からない状況だ。今は作業に集中しろ』

「………………分かりました」

 不服を隠さず、青年は渋々と言った感じに頷いた。

 父親であるトリキルティスは不服を隠さない息子を見ても怒らない。

 無断で行動した結果がどんな方向へ転ぶか分からないと、トリキルティスが言った事で青年が責任を感じたかは怪しい。だが、彼の息子は不承不承でも『今後必要になるのならば、必ずやる』事を知っている。

 トリキルティスとの通信を切った青年は回収作業を行う為に指示を出した。



 数十分後。

 クリソプレーズが遠隔操作する、黒く塗装された無人機として運用されているクォーツ――『オブシディアン』の手で、指定の残骸を回収を終えた。

 オブシディアンを収容した小惑星は闇に溶けるように姿を消して、ゆっくりと地球へ移動を始めた。



 ※※※※※※



 その頃、ルピナス帝国帝城内の大会議室は異様な雰囲気に包まれていた。

 この室内には、ルピナス帝国首都惑星コルムネアを含めた『首都銀河』と位置付けられている銀河の防衛を一手に任されている、首都防衛支部の幹部が一堂に会していた。一同の視線はは空中に浮かぶ空中ディスプレイ(電子画面)の映像に釘付けだ。

 映像の中で、銀色に塗装されたクォーツと、紅色の機体が決闘を行っていた。だが、皆の視線はクォーツでは無く、紅色の機体に集まっている。

 やがて、紅色の機体がクォーツの頭部を殴り、左腕に蹴りを叩き込み、強引に空けた空間を全力で飛んで左腕を切り落として決着が付き、映像はそこで終了した。

 決闘の結果を見て、一同が動揺した。

 機体の性能差を考えると、どう足掻いても勝算は一パーセント(一厘)にも満たない。その筈だったが、紅色の機体はその僅かな可能性を見事に引き寄せて勝利した。

「やはり、操縦者はあの御仁だから掴まれた勝利なのか?」「多少の影響は在るだろうが、どうだろうな」「だが、機体の性能差を考えると、四ヶ月前の方が条件的に厳しいと聞く」「それだとやはり、異能を含めて、操縦者の実力と言う事になるのか」「そうでしょうね。異能が健在だから掴めた勝利とも取れます」「無礼者。含みの有る言い方をするな」「事実でしょう! 性能差を埋める為に異能を行使したのが、その証拠です」「その異能を含めて我らの真価が決まっているのだ!」「むしろ、異能が健在である事を喜ぶべきだ」「神族信者がっ」「大公家への侮辱発言は、皇室への侮辱と同等と教えられなかったのか」

 首都防衛支部の幹部を務める男女が険しい顔で互いを睨み、口論を始めた。一触即発の空気が室内に満ちるも、紫色の髪をした室内で最も若く見える青年が嘆息してから手を叩いて仲裁に入った。

「おうお前ら、まだ終わっていないぞ。あと、俺も神族だからな」

 手を叩いて仲裁に入ったのは、首都防衛支部長のサイヌアータだ。彼が最も年若く見えるが、種族特性で老化が遅く未だに青年と言っても良い外見を維持している。そのせいで、支部最年『長』者であるにも拘らず、若輩者と勘違いされる事が多かった。

 サイヌアータは侮辱発言をした男女を一睨みしてから、もう一つの映像を再生させた。

 こちらは約三百五十年振りに稼働しているオニキスの映像だった。オニキスが迫り来る黒く塗装されたアゲラタムの大群とターゲスを一蹴し、あっと言う間に旧式短距離転移門を破壊した。

 鎧袖一触と言う言葉がふさわしい、一方的な戦闘だった。いや、戦闘と言える程の事は起きていない。一方的に殲滅されてしまった。

 圧倒的としか言いようの無い映像を見て、幹部達は神妙な顔になった。

「こっちが出した条件は突破したのか。さて、映像は見たな。この中から交渉担当者を決める。担当者と言っても、俺の補佐だ。一人で良いから、今ここで決めるぞ。立候補でも他薦でも良い。決まるまで部屋から出るなよ。何が何でも、今ここで決める。立候補者手を上げろ」

 サイヌアータは『口答えは許さない』と言わんばかりの顔で殺気を込めて幹部一同を睨んだ。幹部の四分の一に相当する人数の男女が、笑顔のまま怒りの感情を隠さないサイヌアータと目が合わないように視線を逸らした。目を逸らしたのは侮辱発言をしたもの達だった。サイヌアータから視線を逸らさなかった強者は残りの面々だ。

「四分の一が俺から目を逸らすのか。首都防衛支部の幹部がこのザマじゃ、次の非公式模擬試合は地獄だな」

 さらりと告げられた未来予測に、幹部一同は揃いも揃って渋い顔をする。

「それは、陛下が『はしゃぐ』と言う事か?」

「それも在るが、向こうの宇宙で『アイツ』を見つけたからな。呼び寄せる可能性が高い」

 誰を見つけたのか。サイヌアータは明言しなかったが、ここにいる幹部は全員知っている。その人物がこちらに来る可能性を知り、一部幹部は目を細めた。

「ほぅ、こちらに見えるのか」「無様な姿は見せられんな」「しかし、今の首都防衛支部の現状を見たら、どう思われるのでしょうな。落胆されなければ良いが……」「変わり果てた我が支部を見て、呆れられるのは確定しているわね」「そもそも、次の非公式模擬戦の結果次第で、人事異動を行うと陛下から直々の通達が来ていただろう」「そうだったな。陛下の事だから、半分ぐらいは入れ替えとなるかも知れん」「心配するのなら、今から訓練量を増やして結果を出せ。無駄口叩いていねぇで、決めるぞ!」

 サイヌアータが再び音頭を取り、立候補者と他推薦者を決めに掛かるが、中々決まらない。どうするかと、サイヌアータが額に手を当てたところで、来訪者を知らせる電子音が鳴った。通信技術が発展している現在、人と直接会う機会は減ったが、大事な用事や、直接会わなければならない時は在る。

 そして、この会議を開催するに当たり、外部との通信は遮断している。防諜の為と言うよりも、不確定な情報を広めない為の対策の一つで、そもそも会議を開催した事すら知っている人間が少ない。

 では、一体誰がやって来たのか。

 サイヌアータがこの会議が開催されている事を知っている人間の顔を思い出している間に、両開きの扉が横に動いて開き、一組の男女が姿を現した。

「カルタとフラガじゃねぇか。どうした?」

 現れた男女は本日帝城内にいない筈の人物だった。サイヌアータは二人の予定を思い出す。

 男性はサイヌアータの部下の一人だ。彼は帝城敷地外の首都防衛支部の本部で、会議に出席しているサイヌアータの書類仕事を肩代わりしていた筈。女性は先日サイヌアータからの依頼であちこちを飛び回り、部下から提出された書類から情報を纏める作業に追われていた筈だ。

 予定に無い行動を取っている二人を見て、サイヌアータは嫌な予感を覚えたが、そんな事に気づかない二人はサイヌアータの傍にまでやって来た。

 サイヌアータと同じく軍服を着ている白髪赤眼の男性は――頭頂部に髪と同じ色をしたふさふさとした三角形の耳を乗せ、腰の辺りからも耳と同じ色をしたふさふさの尻尾を生やしているが、彼は狼の獣人族なので服飾では無い。その証拠に動いている――ともかく、その隣にいる肩上で切り揃えられたオレンジ色の髪とつり目気味の黄色い瞳の女性の服装は、何故か肩が剥き出しのメイド服(とある人物がこのように呼称して広めた)と思しき、軍事会議を行っている会議室に赴くには場違いな服を着ていた。女性が着るメイド服のスカートの為は膝丈と短く、服に合わせた編み上げの軍用のブーツを履いている。

 男性は淡々と、女性は微笑んでから、それぞれ用件を口にした。

「喪服淑女の会から至急の通達が来た。今日中に返信が欲しいと一文在り」

「通達内容の一部が私からの報告と被るので、一緒に来ました」

「……マジかよ」

 二人の報告を聞いたサイヌアータは、天井を仰いだ。何の報告なのか悟ったからだ。サイヌアータが盛大な溜息を一つ零した時、何かを思い付いたらしい一人の男性幹部が白髪の男性を見て言った。

「フラガリア。お前の当面の予定を聞いても良いか?」

「予定? 特に無い。決めるのは俺じゃない」

 フラガリアと呼ばれた男性は首を傾げるも即座に回答した。フラガリアの回答を聞いて、満足そうに頷いた幹部の男性は提案する。

「なぁ、担当者はこいつで良くないか? 情報の統制も楽になるぞ」

『異議無し!』「おい」

 幹部一同が同意を示した。サイヌアータは間髪入れずに突っ込みの声を上げたが、それなりに図太い幹部一同は耳を両手で塞いで無視した。

「何事?」「どうしたんですか?」

 話が見えない二人は困惑から顔を見合わせた。



 そして後日。

 担当者は詳細な説明を聞いて引き受けたフラガリアで決まった。


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