2揉み目:ご相談
私はこのおっぱいを手にするために彼女を作る作戦をグレープフルーツ大作戦と名付けた。なぜグレープフルーツなのかというと、胸の大きさを例えるのにちょうど良かったからである。さすがにおっぱい大作戦というのは少々直接的すぎて下品な気がするしな。
ある程度の同性愛や百合といった知識を仕入れた私は翌日から早速行動に移すことに決めた。因みに何を行動に移すのかは一切決まっていない。ただ私は何かをしなければという焦燥感に襲われていた。
「まずは、……服か?」
残念ながら私はファッションに疎い。クローゼットにあるものはブラウスとパーカー。うん、実にシンプルである。
「でも無理しておしゃれするのも違う気がするんだよなー」
私は女性らしい立ち居振る舞いをする方ではない。しかし、男性的とも違う。この際中性キャラとして売り出すべきか、そうか、そうなのか。
「だったら服は要らないなっ」
不要な物を買う必要はない。お金の使い道の優先順位はご飯>本≫なんか色々≫服だ。
ではいつも通りの自分で攻めるとしてどこで何をすればいいのか。もしかして、ナンパ?ナンパなのか?
「いや、待てよ。私にはこんな時に頼れる先輩がいるじゃないか」
私はすぐさま鞄を持って家を飛び出した。
目的地は大学の研究室。今日は土曜日だがお目当ての人物は研究室で雑誌を読んでいた。
「おはようございます。今日も暇そうですね」
「喧嘩を売っているのか、国本。自分は家に帰りたくて、帰りたくて、仕方がないんだよ」
椅子で足を組み、私のことを睨んでくるのは小鳥遊先輩だ。背が高く、また肩が広く、更にいうと胸もないため男性に間違われることも多いらしいが列記とした女の先輩である。
「今お時間よろしいですか?先輩に相談したいことがありまして」
「ん、まぁ、実験の結果待ちしているところだからな。いいぞ。どうした?」
「実は私、彼女を作りたいのですが、どうすればいいかわからなくて」
「好きな女ができたとかじゃなくて、彼女が欲しいのか?」
「はい」
「なんで?」
「自由におっぱいを揉みたいからです」
「思春期の中学生男子か、お前は」
小鳥遊先輩は苦笑し、私に問う。
「お前は乳が揉めれば相手がどんな奴でもいいのか?」
「と、言いますと?」
「例えば相手の体重が二桁後半だったり、お前と20歳以上が離れていたりしてもいいのか?」
相手のスペックは一切考えていなかった。ただ、胸がDかEカップの人としか決めていない。
私は少し考えてから答えを返した。
「それはおっぱいの状態によります」
「は?」
「私が揉みたいのは美しいおっぱいなんです。そうなるとある程度健康的な体型をしていてもらわなければ困ります。年齢についてはよくわかりませんが、余りにも垂れていたりすると嫌です」
「意外とわがままなんだな」
「妥協はできる限りしたくありません」
私は真剣さが伝わるように先輩を真っ直ぐに見つめた。
「私は何から始めたらいいのでしょうか?先輩はどうやって彼女を作ったんですか?」
小鳥遊先輩には可愛い彼女がいることで有名だ。しかも先輩の方から告白したということまで知れ渡っている。
「まず、お前の言葉には語弊がある。私は彼女が欲しくて作ったわけではない。今付き合っている相手のことを好きになったから告白して彼女になってもらっているんだ」
「先輩はおっぱいが欲しくて彼女を作ったのではないのですか?」
「違うに決まっているだろ!」
先輩は持っていた雑誌を机に放り出し、不思議そうな顔で私のことを見る。
「お前、人に恋愛感情を持ち好きになったことがあるか?絶対ないだろ」
「恋愛って本の中だけの現象じゃなかったんですね」
小鳥遊先輩は少しうめきながら頭を抱えた。
「あ、でもこれって私はおっぱいに恋をしたことにはなりませんか?」
「知らん。頭が痛くなってきた」
「お願いです!先輩しか頼れる人がいないんです!なんでもしますから!」
「なんでも?」
一瞬で先輩の目が輝いた。なんでもという言葉は魅力的らしい。いきなり切り札を使ってしまったが、このチャンスを決して逃してはいけない。
「ええ。飲み放題食べ放題、私ができることなら何でも」
「わかったわかった。それなら話は別だ」
先輩は非常に嬉しそうな顔をして言った。
「来週改めて連絡するから、それまでに美容院に行って髪を整えておけ。あとはそうだなぁ……、恋愛小説でも読んで女の口説き方を勉強しておくんだな」
「わかりました!有り難う御座います!!」
私は深く一礼して研究室を後にした。
そのあとは途中本屋によって恋愛小説を十冊ほど買ってから家に帰った。




