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【書籍化・コミカライズ2巻4/16発売】ハズレ姫は意外と愛されている?  作者: gacchi(がっち)


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朝起きたら、なんとなく頭が重かった。

寝すぎたわけじゃないのに、身体が少し痛むような気がした。

それを起こしに来たリサに言うと、やっぱりといった顔をされる。


「ソフィア様、本日の仕事はお休みになりました。」


「え?どうして?」


「昨晩のうちにクリス様からソフィア様が疲れているから休みにすると。」


「クリスが?」


「ええ。カイル様も同意なさったようですよ。

 今、薬湯をお持ちしますので、もう一度眠ってください。」


「そっか…ありがとう。」


ここのところずっと忙しかったせいで、

気がつかないうちに疲れがたまっていたようだ。

私は人よりも不調を感じにくいとレンキン先生が言っていた。

だから、周りから見て疲れていると判断されたら休みなさいと。


クリスが休みにするというのなら、それが正しいのだと思う。

おとなしく薬湯を飲んで横になるとすぐに眠くなる。

身体を下に沈ませようと誰かが引っ張っているのかと思うくらい、

深く深く落ちていくような眠りだった。



次に目を覚ましたら、クリスが私の額に手を当てていた。

細くて長い指はいつも冷たくて、熱を吸い取ってくれるみたいで気持ちいい。


「起きたか。」


「うん。」


「寝起きで体温は高く感じるが熱は無さそうだな。起き上がれるか?」


「もう大丈夫。たくさん寝たからすっきりしてる。」


「そっか。」


そう言うと横になっている私に手を差し入れて、軽々と抱き上げられる。

クリスにこうやって起こされるのは久しぶり。

小さいときはよく抱き上げられて着替えに連れて行かれてたのを思い出す。

あの頃は起きたくないってぐずってたからなぁ。なんだか懐かしい。


「今日は抱き上げて連れて行かなくても歩けるよ?」


「いいんだ。俺が甘やかしたいだけ。」


「そっかぁ。」


クリスが甘やかしたいって言うなら、遠慮なく甘えてしまおう。

リサとユナが服を持って待ち構えている鏡の前まで行くと、

ゆっくりと下ろされて椅子に座る。


服を着替えて整えてもらったら、今度はカイルが迎えに来てくれる。

カイルも私を抱き上げるとなぜか廊下へと連れて行かれた。

食事するのかと思ってたのに、どこにいくんだろう。


昨日私が悩んでいたのもあると思うけど、カイルがずっと暗い顔をしていた。

寝室に送ってくれたクリスも困ったなぁって顔していたけど。

それが一晩でいつものカイルに戻っていた。

いや、いつもよりも甘いカイルになっている気がする。


抱き上げられたまま廊下を進んで、本宮の外に出る。

こんな風に抱き上げられたまま外に出るなんてめずらしい。

カイルの首につかまったまま揺られ、聞いてみる。


「ねぇ、どこに向かってるの?」


「これから王家の森にピクニックに行こう。

 今日はクリスも一緒に。」


「ピクニック!いいの!?」


「明日からまた忙しくなるだろう?

 その前に一日くらいゆっくりしよう。

 クリスもピクニック連れて行く約束してたんだし。」


「そっか。約束してたね。

 うん、クリスと三人で行きたい!」


「じゃあ、馬小屋に向かうよ。」



馬小屋に行くとすでに二頭の馬が用意されていた。

そのうちの一頭を連れて、クリスが手招きしている。


「今日は俺が姫さんを乗せていくよ。」


「うん!」


先に馬に乗せてもらうと、私の後ろにクリスが乗る。

カイルは料理長に用意してもらった昼食を馬にくくりつけ、その背に乗った。


以前カイルと二人で一緒に行った王家の森を、

二頭でゆっくりと進んでいく。

新芽が出る時期、柔らかな緑色の道を楽しみながら進む。


馬に踏まれた草や土の匂いが下から上がってくる。

高い馬の背から見る景色はいつもと違って見るだけでも楽しい。


前回はあまり周りを見ていなかったらしいカイルが、

初めて森に行くクリスよりもキョロキョロしていて突っ込まれていた。

しばらくすると前回と同じように湖がある場所にたどり着く。


「あ、ほら、あの東屋でご飯を食べるの。」


「あぁ、あれがそうなのか。

 話は聞いていたんだ。レンキン医師たちが使っているらしい。」


「レンキン先生の?だから手入れされているんだ。」


薬草を取りに来る誰かが使っているのだと思っていたけれど、

レンキン先生だったのか。

そういえば王家の森だから、簡単に入ることはできないんだった。


東屋の中に入り、テーブルに食事を並べていく。

ちょうど湖に上から光が当たり、キラキラと浮かび上がっているのが見える。


「綺麗な湖だよね。魚は釣れるのかな。」


「あぁ、その湖には生き物はいないらしいよ。」


「え?なんで?」


「その湖、湧水がたまっているものなんだと。

 綺麗すぎて生き物は生きられないと聞いた。」


「綺麗すぎたら生き物は生きていけないの?」


キラキラと反射している湖は近くに寄ると透き通っている。

湖の底までしっかり見えるけれど、本当に魚が一匹もいなかった。


「そうらしいよ。俺もここに来るのは初めてだから確認したわけじゃないけど。

 レンキン医師がそう話していたんだ。

 ここの湧水は薬を処方する時に重宝するらしいけど。」


「そうなんだ…綺麗すぎるとダメなんだ。

 こんなに綺麗で、住みやすそうに見えるのにな。」


「人の住む世界と同じだよ。

 多少の汚れが必要になる。」


「多少の汚れか…私もお祖父様のようになれるかな。」


「陛下のように?」




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