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【書籍化・コミカライズ2巻4/16発売】ハズレ姫は意外と愛されている?  作者: gacchi(がっち)


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「でしょう?だから、ソフィア姉様の王配の三人目、アルノーはどうかな。」


「「「「え?」」」」


まったく誰も予想していなかったからか、私だけでなくクリスとカイル、

それに言われた本人のアルノーまでも驚いていた。


「…エディ、急に何を言い出すんだ。

 ソフィア様が驚いているじゃないか。」


「だってさ、ソフィア姉様の王配は三人必要なんだろう?

 でも、クリス兄様とカイル兄様と並んでも大丈夫な男なんてそういないよ?」


「だからって、なんで俺なんだよ。」


「アルノーはずっと他国を回ってきた。  

 周辺諸国の言葉は全部話せるし、他国の歴史や礼儀作法も全部知ってる。

 アルノーならソフィア姉様の役に立てると思うんだ!」


それは確かにそうかもしれない。

ずっとユーギニス国にしかいない私ではわからないこともある。

それを補う者が必要になってくるだろう…

王配の一人がそれを補えるのであれば一番いいとは思う。


アルノーは侯爵家の二男で第二王子妃アリーナ様の甥。

血筋的にも身分的にも問題ない。

護衛騎士として仕えるだけの強さもあって、健康面も魔力面も問題ない。

確かに…王配になってもおかしくない人材ではある。


「そうね…確かにアルノーは王配になっても問題ないわ。

 でも、すぐに決めるわけにはいかないし、アルノーの気持ちもあるでしょう。

 焦らなくても、私が女王になるのはまだ先の話よ。ゆっくり考えさせてくれる?」


「それもそうだね。二年間は学園に一緒に通うことになるし。

 時間があえば一緒に昼食をとることもできるよね。

 あぁ、慣れてきたら仕事も手伝うつもりでいるから。」


「それは助かるわ。私は少しずつお祖父様の仕事も任されることになるから。

 王太子の仕事はエディに分担してもらえると助かる。」


「う…あまり期待しないでね。頑張るけどさ。」


「ふふ。少しずつ、慣れてきたらでいいわ。」


期待に応えるというのが苦手なエディが顔をしかめるのを見て、

変わっていないなと笑ってしまう。


できるのなら、フリッツ叔父様に国王になってもらいたかったし、

エディに王太子になってもらおうと考えたこともあった。

国王が男性ではなく女王となると難しいことも多いし、

無理に私が王にならなくてもいいと思っていた。

叔父様かエディを国王にして、私は補佐の仕事を頑張ればと思ったのだが…。


フリッツ叔父様には絶対に国王にならないと言われてしまった。

妃のアリーナ様が王妃に向いていないからと。


もともとアリーナ様の生家、クライン侯爵家は騎士を輩出する家だ。

この国の騎士は大きく三種類にわかれている。

王宮を守る近衛騎士隊。王都や国内の治安を維持する警備騎士団、

そして国境を守る国境騎士団。

アリーナ様の父親は国境騎士団長で、アルノーの父親が副団長をしている。


令嬢らしくないといってはなんだけれど、

アリーナ様自身が槍の名手でフリッツ叔父様よりもはるかに強い。


フリッツ叔父様は結婚と同時に人質としてココディアに送られることが決まっていた。

それでも何も問題ないと言い切って結婚してくれたアリーナ様にべた惚れで、

アリーナ様に負担がかかるようなことはしたくないという。


さすがに今まで人質として苦労してきた叔父様たちに無理は言いたくない。

国王になりたくないというのなら、無理に押し付ける気はなかった。


そして、エディにも王太子になるか聞いたものの、

「え、無理無理。王とかできるわけない。

 ソフィア姉様が女王になったら頑張って働くから雇ってよ!」

と、王族なのに雇ってって…と脱力してしまった。


そんなわけで王位争い的なことも無く、穏やかな関係を築いている。

ちなみにエミリアに聞いてみたところ、「私は素敵な王子様が迎えに来るから。」

とあっさり断られてしまった。

エミリアは仕事よりも幸せな結婚を望んでいるようなので、

政略結婚しないで済むようにしてあげたいと思っている。



エディとのお茶は一時間ほどで終わった。

お互いに忙しい中なんとか都合つけたため、あまり時間が取れなかったのだ。

二人がいなくなってすぐ、クリスが大きなため息をついた。

気持ちはわかる。私も今すぐソファに転がってしまいたくなっていた。



「エディには参ったわ。まさかあんなことを言うなんて。

 それにしても……アルノーかぁ。」


「姫さんはすぐに断ると思ってたよ。

 アルノーをそんな風に考えたことなかったでしょ。」


「無いない。でも、断る理由も無かったんだよね。

 血筋も身分も能力も人柄も問題ない。

 確かに王配になってもおかしくないなぁって。」


「あぁ、そう言われてみたらそうか。

 おれたちとくらべて何か劣るわけじゃないしなぁ。

 断る理由が無かったのか。」


クリスとカイルと比べて劣るところが無いわけじゃないけれど、

容姿については王配に求めているわけじゃないから言う必要はない。

劣るといっても、クリスとカイルが良すぎるだけで、

アルノーはそれなりに整った顔立ちのたくましい騎士という感じだ。


うん。やっぱり何ひとつ問題ないなぁ。

アルノーを王配にか。悪くは無いんだけど…でもなぁ。



「とりあえず、考えるのはいったん終わり。

 学園が始まれば会う回数も多いし、そのうち判断することにするわ。」



冷めてしまったお茶を飲んだら、少しだけ渋く感じた。

だけど焼き菓子を食べる気にはならなくて、そのまま残した。




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