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【書籍化・コミカライズ2巻4/16発売】ハズレ姫は意外と愛されている?  作者: gacchi(がっち)


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「……僕と誓約魔術を交わしてもらえませんか?」


「は?」


誓約魔術?他国の王族であるイシュラ王子と?

どういうつもりなのかと聞く前に、イシュラ王子が話し始めた。



「僕はこの国に婿入りすることを決めた時、

 これからの人生は僕の才能はなかったものにしようと決めました。

 ルジャイルにあのままいたら生み出していただろう魔術具も、新しい法案も、

 国を変えていく政策も何一つできないままで終わったとしても仕方ないと。

 僕はユーギニスのために利用される気なんて無かったからです。」


「私たちはイシュラ王子の才能を利用するつもりなんて無いわよ?」


「ええ、今になればわかります。

 ですが、エミリアが帰国してからずっとユーギニスのことは調べていました。

 次々に生み出される魔術や改良される作物。

 きっと僕のことを知られたら利用されるに違いないと思い込んでいました。」


「あぁ、それは確かにそう思うかもしれないな。」


新しい魔術や作物と聞いて、クリスが思い当たることがあるのか納得し始めた。


「どういうこと?」


「これほど短期間で新しい魔術を生み出すのなら、

 この国は魔術の研究に力を入れていると思うだろう。

 そんな時にイシュラ王子のような天才が来たら、

 ユーギニスのために研究するように命令されると思ってもおかしくない。」


「言われるほど魔術の研究に力を入れてはないけど…

 まだ研究室らしいものもできてないし。」


「え?そうなんですか!?」


まだ誤解は続いているのか、

この国に魔術専門の研究室が無いと聞いてイシュラ王子は驚いている。


「作ろうとは思ってるの。そのために人も集めているし。

 だけど、集まったのが騎士団の後方支援担当だった者たちばかりで…。

 身分が低いから無理だって、誰も代表を引き受けてくれないのよ。

 だから、まだ研究室として運営できていないの。」


騎士団に入団するには魔力があって二属性以上使えるものという規定がある。

その騎士団の中でも魔力は多いが攻撃魔術は苦手としている、

そういう者を引き抜いて私が作った魔術の研究を手伝ってもらっている。


誰も代表になってくれないのは、ほぼ下級貴族しかいないためだ。

上に立つことに慣れていないのでお願いしても無理だと断られてしまう。

温室の世話や新しい魔術を試してくれるだけでもありがたいとは思うけど。

本当は私がいなくても研究し続けてくれるようになってほしい。


「…僕がこの国のことを誤解していたと気がついたのは昨日です。

 中庭の奥に作られている温室を見ました。」


「あぁ、あそこに入ったの。何人かお世話していたでしょう?」


「はい。……まだ市場に出回っていない新しい作物が育てられていました。

 そのすべてにソフィア様の魔力が見えました。

 新しい魔術や作物を生み出していたのはソフィア様自身ですね?」


「……魔力が見えた?」


「はい。僕は人の魔力が見えます。

 市場に出回っているものには、

 ソフィア様の魔力が見えなかったので気がつきませんでした。

 まさか開発のほとんどをソフィア様一人でしていたとは。」



うかつだった。市場に出回る物は私以外の者が魔術をかけて出荷している。

だけど、研究中のものは私の魔力しか使われていない。

魔力を見ることができる者が見たらすぐにわかってしまう。

私だって魔力を見ることができる側なのに、

イシュラ王子が見える可能性を考えもしなかった。


「イシュラ王子も見える人だったのね。」


「おそらくソフィア様もそうですよね。

 僕が見えることを秘密にしていたのは申し訳ありません。

 僕を利用されることが無いように黙っていました。」


「ううん、それは仕方ないわ。」


たしかにイシュラ王子の才能を知れば利用しようと思う者もいるだろう。

この国にはいないだろうが、広まれば他国が欲しがるかもしれない。


「実は…ルジャイルでも秘密にしていました。

 あまり僕の価値が高くなると他国に出してもらえないかもしれなかったので。」


「それは…そうなるでしょうね。そっか、ルジャイルでも秘密だったんだ。」


魔力が見えたのなら、私が作物にかけている魔術も見えただろう。

寒さに強い作物はどこの国でも欲しがる。

イシュラ王子なら再現することも可能だろう。

そのことに気がつかれたら、今からでも戻って来いと言われるかもしれない。


「だから僕と誓約魔術を交わしてもらえませんか?」


「誓約魔術…」


それはイシュラ王子の才能を利用しないとか、秘密にするとか?

そのくらいなら誓約しなくても守れるけれど、信用できないかな。


「僕は…利用されるのは嫌だけど、本当は魔術の研究をしたいんです。

 この国は僕を利用しようなんて少しも思ってない。

 それに、ソフィア様はルジャイルとの同盟だとか、政略結婚とかよりも、

 エミリアと結婚したいのなら許すと言ってくれました。

 国の利益よりもエミリアの気持ちを優先させてくれた。

 誰かを使って魔術を生み出すのではなく、ソフィア様自身が生み出していた。

 この国なら、ソフィア様の国なら信じても大丈夫なんじゃないかと思いました。」


「そう思ってくれるのはうれしいけれど、何を誓うの?」


「ユーギニスの不利益になる言動はしないと血の誓約をすることで、

 僕はユーギニスを裏切ることはできなくなります。

 そうしたら他国の王族であっても、仕事や研究をすることは可能になりませんか?」


「ええ?ユーギニスを裏切らない?いいの?そんなことを誓って。

 ルジャイルに知られたら止められるのではないの?」


だからここにルジャイルの文官を連れてこなかったんだ。

そんな誓約しようとしたら間違いなく止められるだろうから。

こんなこと、ルジャイルの国王や王太子に知られたらどうなるのか。

さすがにその誓約を勝手にするのはまずい気がする。



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