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【書籍化・コミカライズ2巻4/16発売】ハズレ姫は意外と愛されている?  作者: gacchi(がっち)


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「それに、今回も姫さんが出て行ったことがわかれば、

 結界の壁は姫さんが作ったことがバレてしまうかもしれない。」


「…それって。」


「そう。また結界の壁が作られたら困ると思うものは多い。

 それを作った術者が誰なのか探られている状況だ。

 前回、姫さんと俺らがいなかったことはもう知られているだろう。

 一番疑われているのは姫さんだ。

 危ない旅だとわかっているのに連れて行ってるんだからな。」


確かにその通りだ。王太子を理由なく危ない目にあわせるわけはない。

クリスかカイルが術者なのだとしたら、私は王宮に残るのが普通だ。

今回も三人で解除しに行ったら、私が術者だと確定させるようなものだ。


「だけど、それじゃ、カイルが狙われてしまうじゃない!」


「カイルはそれもわかってて行くって言ったんだ。

 自分なら狙われたとしても返り討ちにするからって。」


「……理解はするけど、納得はしたくない。」


私のためだってことはわかる。わかるけど、すごく嫌。

私の知らないところで犠牲になんてなってほしくないのに。


「その気持ちはわかってる。俺だって残されたほうだ。」


「……クリス。」


「もちろんカイルがいない間、姫さんを守れるのは俺だけだと思ってる。

 もし、俺が行ったとしても、カイル以外に託すことはないだろうし。

 どちらか残らなきゃいけないとしたら、俺だろうと思った。

 それでも…カイルだけ危ない目にあわせるのは嫌な感じだ。」


「……うん。そうだよね…。」


クリスも本当はこんなことしたくなかったんだと気がついて、

これ以上クリスを責めるのはやめようと思った。

スープだけじゃなく、パンをちぎって食べ始めたら、

クリスも自分の食事を始めた。


ゆっくりとした食事が終わると、執務室に向かう。

私たちはいなくなるはずだったから昨日まで仕事を詰め込んでいた。

少しくらいゆっくり行っても問題はない。


執務室に顔を出すと、デイビットとダグラスに挨拶される。

二人とも気まずそうなのを見て、

知らなかったのは私だけだったのだと気がついた。


「おはようございます…ソフィア様。」


「ソフィア様、おはよう。」


「…おはよう。」


ため息をつきながら席に着くと、ダグラスから仕事の計画表を受け取る。

そういえば、いない間の計画表も作ると言ってた気がする。

見てみると、カイルがいない仕事の計画表だった。


「…そっか。抜けたのがカイルだけだとしても五日間は長いものね。」


「ああ。その代わり助っ人を呼んである。

 そろそろ来ると思うけど。」


「助っ人?」


そんな話をしていたからか、誰かが元気よく執務室に入ってきた。


「え?アルノー?」


「はい!ソフィア様!五日間、カイル様の代わりを務めに参りました!

 と言ってもカイル様の代わりは無理でしょうから、

 クリス様の補佐をする予定です。」


「あぁ、そうなんだ。」


「おい、アルノー。甘いこと言ってるなよ。

 せっかく学園を首席で卒業したんだから、仕事覚えて帰れ。

 エディたちの護衛だけしてればいいと思うなよ?」


「えっ。」


「俺とカイルも姫さんの専属護衛だって忘れてないか?

 仕事しながら護衛するくらいのことしろよ。」


「わ、わかりました!」


さすがにクリスは厳しい。

でも、エディとディアナの護衛は近衛騎士もいるわけだし、

首席のアルノーを護衛騎士の仕事だけっていうのはもったいないのもわかる。

エディの補佐として仕事できるようになればエディたちも楽になるし、

私たちも楽になるんだよね。あ、あれ?


「ねぇ、エディたちの護衛はいいの?」


「今回、五日間だけ護衛を代わってもらってます。

 エミリア王女もエディ王子たちと一緒に仕事しているので、

 イシュラ王子が三人を護衛してくれることになっています。」


「あぁ、そうなの。イシュラ王子が護衛してくれるなら大丈夫ね。」


「はい。執務室の仕事をイシュラ王子に頼むわけにはいかないですから。

 本当はイシュラ王子がここに来たほうが助かるんでしょうけど。」


「それはさすがに無理だよねぇ。

 他国の王子を王政に関わらせるわけにはいかないもの。

 わかったわ。五日間よろしくね。」


「はい!」



昨日までできることはしておいたものの、

ココディアとの商売の再開を前にして、直前で入ってくる余計な仕事というものもある。

先にしておくことができない仕事もあって、やることは山ほどあった。

カイルがいない分をアルノーが頑張ってくれたものの、

やはり雰囲気はどことなく暗く、会話も少なくなっていく。


それでも時間になって、今日の仕事は無事に終わった。

クリスと二人、私室に戻って夕食を共にする。

アルノーの仕事ぶりをクリスに聞きながら、明日以降の仕事を打ち合わせる。


湯あみを終えて寝室に入ったのは、いつもと変わらないくらいの時間だった。

クリスから治癒をかけてもらっても、いつものようには眠くならない。

ポカポカと温かくて気持ちいいのに、目はさえていく。


「……今頃、カイル達どの辺かなぁ。またお魚捕まえて食べたかな。」


「どうだろうな。今回は姫さんがいない分、休憩は最小限におさえるはずだ。

 あの魚は美味かったけど、食べてる余裕はないんじゃないのかな。」


「そうなの?休憩しないで進んでるの?」


「ああ。できるかぎり人に知られないようにしなきゃいけない。

 時間がかかればかかるだけ、人に見られる可能性が高くなる。

 明るい時間は特に休憩しないで走るだろう。」


「そっか。」


おそらくまたウェイとフェルが御者になって、馬車を交代で走らせている。

馬車の中、カイルは一人で眠っているんだろうか。


「そろそろ寝よう。」


「うん。」


昨日カイルにされた様に、今日はクリスに抱きしめられたまま眠る。

背中をぽんぽん軽くたたかれると、

小さい時からクリスはこうやって寝かしつけてくるのを思い出す。

きっと慰めてくれているんだろうな。


クリスの腕の中は温かいのに、どうしても背中側が寒く感じられて。

さみしいと思ってしまう気持ちを消せなかった。





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