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【書籍化・コミカライズ2巻4/16発売】ハズレ姫は意外と愛されている?  作者: gacchi(がっち)


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180/194

180 (ココディア)

「むしろ……ソフィア国王代理はココディアを恨んでいるかもしれないのになぁ。」


そうだ。どう考えても、ココディアに良い思いはしていないだろう。

サマラス公爵家からユーギニスに嫁いだイディアは産みの親とはいえ、

ほとんど会話もしていなかったとユーギニスについていった侍女から聞いている。


世話は乳母と女官に任せ、乳をあげたこともなく、名を呼んだことすらないと。

その上、ココディアから連れて行った護衛騎士を愛人にし、

その愛人が殺されたからと離縁してココディアに戻って来ている。

戻る際にも会わずにいたと聞いて、親子の情などあるわけがないと思った。


その上、弟のハイネスは婚約を断られたというのに押しかけ、

公爵令嬢に手を付けて帰ってきた。

その際に夜会で自分が国王になると宣言したと聞いて、思わず殴ってしまった。

この大馬鹿者と兄弟だなんて恥ずかしくて思いたくない。


それでも産まれてくる子供はハイネスの子どもに間違いないようだし、

父上たちから見たら初孫だ。

子どもに罪はないと思い、大事に育ててやれと指示していたのもつかの間、

その子にユーギニスを継がせろと書簡で送りつけたと聞いて…

もうこの国はダメだと思った。


これで…恨まれないほうがおかしい。自分なら絶対に関わりたくない。

そう思わないかと二人に同意を求めたら、エドモンが何かを思いついたようだ。


「……それ、使いましょう。」


「は?」


「その事情全てを隠さずに、ココディアのすべてのものに公表しましょう。

 市井にも噂を流し、だから助けてもらえるわけがないと伝えましょう。」


「うまくいくと思うか?」


「わかりません。これは賭けです。

 今までココディアの王族に関する不祥事はすべて隠されていました。

 そのせいで王家の血を信仰するものが多いのも事実です。

 王家の絶対的な信頼はなくなりますが、変えなければココディアは消滅します。」


「……そうだな。やってみるか。」







結果が出たのは意外とすぐだった。

十日ほどすると、王宮内にいる貴族たちが目に見えて落ち込んでいた。

侍従に言って聞きだしてこさせると、あの噂が広まったため、

ココディアが終わるかもしれないと不安になっているらしい。


「すごいな。もうこんなに噂が広まっているのか。

 公式に発表しても、信じないかもしれないと思っていた。」


報告に来たエドモンにそう言うと、なぜか微妙な顔をしている。

うまくいったのにその顔はおかしいだろうと言うと、苦笑いだった。


「実は…うまくいったのは私たちの策が成功したからではありませんでした。」


「どういうことだ?」


「噂が広まるのが早いと思ったので調べたのですが、

 どうやら一年以上前から噂になっていたようなのです。」


「なんだと?どういうことだ。」


一年以上前から噂になっていたというのなら、今回の発表とは関係ない。

王家の恥ともいえる事情を誰がもらしたというのか。


「ユーギニスの間者がいたようです。

 一年以上かけて、ゆっくりと噂を広めていました。

 噂が消えたら、またどこかから噂が広まる、そんな感じで。

 平民たちは信じていなかったようなのですが、何度も聞いているうちに、

 どっちが本当なのかわからなくなっていたところ、今回の発表です。

 これにより噂は本当だったとあっという間に広がったそうです。」


「ユーギニスの間者?結界の壁の前から入り込んでいたというのか?」


「いいえ。ユーギニスの間者はルジャイル側から入って来たようです。」


「ああ!」


そうだった。ルジャイルとの国境には検問などない。入ろうと思えば誰でも通れる。

ユーギニスとルジャイルが海路でつながっているのを忘れていた。


「これはソフィア国王代理の策でしょう。

 ……優秀な女王になると思っていましたが、これほどまでだとは。」


「そうだな。どこかで年下の王女だと思って侮っていたかもしれない。」


完敗だ。結界の壁だけでもココディアにできることは何一つなかったのに。

それだけでなく、ココディアの思想までも変えてしまうとは。



「……ココディアでユーギニスに頼る考えが無くなったら、

 もう一度謝罪して商人の取引だけでも再開してもらおう。」


「そうですね。」



この時、ココディアは敗戦国になったのだとはっきりした。

もうこれ以上失うものもないのだから王家の印象が悪くなったとしても、

この国を守るためには仕方ないと。



もうそろそろユーギニスに打診してもいいかと思い始めた時、

ユーギニスとルジャイルが同盟を結んだことを知らされた。

同時にココディアとルジャイルが結んでいた同盟を破棄する旨の書簡も届けられ、

ダニエルだけでなく、エドモンまでもが何も言えずに崩れ落ちた。




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