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【書籍化・コミカライズ2巻4/16発売】ハズレ姫は意外と愛されている?  作者: gacchi(がっち)


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「今は王太子よりも優秀なのを隠している。

 だが、邪魔するようなら王太子よりも優秀なことを周りに知らしめるだろう。

 それでまともな王になってくれるならいいんだが、おそらくならない。

 エミリア王女と結婚出来たら、国はどうでもいいとほっとかれる。

 …優秀なんだが、そういう男なのでな…。

 それなら素直に送り出して、両国の平和のために働いてもらったほうがいいと判断した。」


「あぁ、そういうことですか。

 確かにそういう理由で国王になられても困りますよね。」


若干呆れたようにイシュラ王子を見たら、真顔で力説される。


「はい、私は優秀かもしれませんが、国王には向きません。

 国よりも王族よりも貴族よりもエミリアが大事なんです。

 ですが、エミリアと一緒にいられるなら両国のために働くとお約束します。

 どうか、どうか、認めてもらえませんでしょうか。」


言い切ると同時に深く頭を下げられ、あまりの潔さに笑い出しそうになる。

うん、どれだけ執着しているのかもわかった。

叔父様がイシュラ王子はエミリアに執着していると言っていたのも理解できる。


「イシュラ王子、頭をあげてくれる?」


「認めてもらえるまではっ…。」


どうやらいい返事がもらえるまで頭を下げ続けるつもりらしい。

仕方なく国王との話に戻ることにする。

直接イシュラ王子に返事をするわけにはいかないからだ。


「エンゾ国王、同盟をお受けいたします。

 親族として、これから両国の平和を守っていくためにも。」


「おお、それでは!」


「はい。イシュラ王子とエミリアの婚約もよろしくお願いします。」


「本当ですか!?」


「イシュラ王子、エミリアを泣かせないでね?

 ちゃんと最後まで守り抜くって約束してくれる?」


「もちろんです!」


緊張していたのか、イシュラ王子の肩の力が抜けたように見えた。

次の瞬間、うるうると泣きだしたイシュラ王子に、

近くにいた文官がすぐさまハンカチを出して手渡した。

その手慣れている様子に、イシュラ王子が泣くのはめずらしくないのだと感じた。


「…イシュラ、泣き出したんじゃないか?

 ソフィア国王代理、すまん。めんどくさいだろうが、よろしく頼む。」


「いえ、これほどまでエミリアのことを思ってくれるのなら安心します。

 それにこの魔術具を作り出す才能には興味あります。

 婿として結婚してくれるのならユーギニスには利点だらけです。」


「そうか。では、そのままイシュラはそっちに置いてくれるか?」


「え?」


そのままそっちにって、イシュラ王子はルジャイルに帰らないの?

まだ十四歳なのにもう婿入りするつもりなんだろうか。エミリアだって十三歳なのに。

せめてイシュラ王子が成人するまではルジャイルにと言おうとしたが、

それよりも先にエンゾ国王にお願いされる。


「実はこの時期にそちらに向かわせたのにはもう一つ理由がある。

 イシュラはルジャイルの学園は通わずに、エミリア王女と一緒に通いたいと言っている。

 エミリア王女が学園に通う年齢になるのを待って入学したいそうだ。

 ユーギニスの学園は遅れて入学することができるとアルノーから聞いたと。」


「はい、それは確かに遅れて入学するのは大丈夫です。」


「ユーギニス語は話せるが、読み書きは少し不安らしい。

 遅らせれば入学までになんとかなるだろう。

 婚約しただけでは確実ではないが、婚約してユーギニスに移り住んだとなれば、

 この時点で親族関係のようなものだろう?

 数年後に結婚すると約束した、だけでは同盟の理由としては弱いからな。」


確かに婚約しただけなら解消できる。

両国の同盟が面白くない他国から横やりが入ることも考えられる。

ユーギニスに来て生活しているとなれば、実質的に婿入りしたことになる。

叔父様には確認していないが、

婿入りしてもらうために譲歩するかもとは伝えてある。

このくらいの条件なら問題ないだろう。


「わかりました。イシュラ王子をお預かりしますね。」


「あぁ、頼んだ。と言っても、それほど手はかからない奴だ。

 王族ぶるようなことも無く、本を与えておけば静かになる。

 エミリア王女がそばにいるなら、穏やかに過ごすだろう。」


「ふふ。わかりました。図書室の場所を早めに教えますわ。」


「では、これから同盟国としてよろしく頼む。

 書類などの手続きは文官たちに任せてある。

 書類が出来たらこちらに送ってくれれば署名して返す。」


「わかりました。早急に作成に取り掛かります。」


「うむ。あぁ、そろそろ魔石が限界の時間だな…ではまたな。」


「ええ、ではまた。」


エンゾ国王の言ったとおり、すぐに魔術具の魔力が尽きたのが見えた。

時間を計りながら話していたのだとしたら、

中に入れる魔石の量でどれだけの時間使用できるのか何度も実験したことになる。

これを作り出したというイシュラ王子は天才なだけではないはず。


「イシュラ王子、もう落ち着いた?」


「……はい。申し訳ありません。うれしすぎて…つい。」


「ふふ。大丈夫よ、問題ないわ。

 じゃあ、さっそくで悪いけど、文官を連れて移動してもいいかしら。

 同盟の書類作成となると、応接室ではまずいの。執務室に案内するわ。」


「わかりました、お願いします。」



まだ目が赤いイシュラ王子を連れて執務室へと向かう。

ルジャイルの文官たちも若いものが多く、どこか楽しそうにしている。

デイビットに任せようかと思ったが、他の仕事を頼んでいることを思い出し、ダグラスを呼ぶ。


「ダグラス、急ぎだけど大事な仕事なの。手が空いてるかしら?」


「空いているわけじゃないけど、空けるよ。大事な仕事なんだろう?」


「うん、じゃあお願いする。」


執務室の中にいくつかある会議室に入り、イシュラ王子にダグラスを紹介する。

そういえばクリスとカイルも紹介していないのを思い出した。





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