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【書籍化・コミカライズ2巻4/16発売】ハズレ姫は意外と愛されている?  作者: gacchi(がっち)


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ルジャイル国の王都からユーギニス国の王都までは早くて六日。

途中で海路があるので、風や波の状況によってはこれより長くかかる。

通常は七日前後でこちらに到着するとみていい。


イシュラ王子がユーギニスに入国したと報告が来たのは五日後のことだった。

報告の前日に入港し、途中で宿に泊まりつつ王都に向かうということだった。


「ルジャイルの王子が港に着いたって?」


「ええ。早がけで知らせが入ったわ。

 こちらが準備できるようにゆっくり王都に入ってくるみたいだから、

 三日後に到着する感じかな。」


「急に押しかけて来た割にはそういうところはしっかりしてんな。」


「ルジャイルの国王付きの文官たちも一緒に来ているらしいの。

 イシャル王子の事情だけで動いているのでは無さそうよ。」


「国王付きの文官…うちと同盟でも結ぶつもりか?」


「そういう話なら書簡でやり取りして決定してからでもいいと思うけど…。

 やっぱりイシュラ王子と会って話してみないと何の用事かわからないね。」


エミリアと婚約したくて国を飛び出してきたのかと思えば、そういう感じではなさそうだ。

もめごとで無ければいいと思いながら王子の到着を待って三日後。

午後になって王都に着いたという知らせがきた。


「王子たちは旅支度のままですから、今日は屋敷のほうでゆっくり休んでもらって、

 明日の昼過ぎに王宮で話し合う予定になっています。

 それで問題はありませんか?」


「わかったわ。ゆっくり休んでくださいと伝えてくれる?」


「かしこまりました。」


他国の王子とはいえ、簡単に王宮に滞在させるわけにはいかない。

ルジャイル国とは定期貿易しているために、

文官たちが事務手続きのためにユーギニスに訪れることはよくある。

他国の大使たちのために用意された屋敷が王宮から少し離れた場所にあり、

その中の一つがルジャイル国に貸し出されている。

イシャル王子は文官たちと一緒にその屋敷に滞在するという話だった。


「ふうん。すぐにでもエミリアに会わせろとか言われるかと思ってた。」


「そうよね。叔父様がイシャル王子はエミリアに執着しているって言ってたし。」


「ああ、だけど、こうも言ってなかったか?

 確実に成功するように策をこらすほうだと。

 これも何か考えがあってやってると思ったほうがいいかもしれないな。」


「そっか…やっぱり会ってみなきゃわかんないなぁ。」


次の日の昼過ぎ、謁見室ではなく応接室で会うことにし、私とクリスとカイルで向かう。

叔父様には会うのを少し待ってもらうことにした。


応接室に入ると、ソファに座っていた少年がすぐに立ち上がる。

長身細身で青みがかった銀髪。少し目が細めだが、整った顔立ちではある。

緊張しているのか、微笑みがぎこちない。

身体はたくましいようには見えないが、

立ち上がった時の動きがぶれていないのはそれなりに鍛えているのかもしれない。

近くまで行くと綺麗な所作で騎士の礼をする。


「突然の訪問で失礼いたします。ルジャイル国第六王子のイシュラと申します。」


「ユーギニス国、国王代理のソフィアよ。

 イシュラ王子が第六王子?王弟の第三子よね?」


「はい。王弟の第三子ですが、

 ルジャイルは王族の子はすべて年齢順に数えられます。

 国王の第一子が第一王子で、王族には六人の王子と一人の王女がいます。」


「ああ。そういえば王族の子は皆平等なんだったわね。」


「はい。」


「とりあえず、座ってくれる?」


「あ、すみません。その前に魔術具を出してもかまわないでしょうか?」


「え?」


まずは座ってお茶を出してから話をと思ったら、王子は魔術具を出したいという。

視線で示された場所には大小の箱が二つ置かれている。


「私と話す前に、ルジャイル国王と直接話をしていただきたいのです。

 そうすればだいたいの事情がわかると思いますので…。」


申し訳なさそうに言うイシャル王子に、私たちはその内容に驚いた。

直接ルジャイル国王と話をする?そんな魔術具が存在するのかと。


「その魔術具を使えば、ルジャイルの国王と直接話すことができると?」


「はい。許可していただけたら、すぐに組み立てます。」


「わかったわ。用意してくれる?」


「はい!」


後ろに付き添っていた文官たちが、二人で重そうに箱の中身を運んでくる。

テーブルに置かれたのは何か金属でできた長方形の箱のようなものだった。

大きな引き出しと上部に小さな穴がいくつか開いている。これが魔術具?



「引き出しの中には魔石が詰められています。」


「これが魔術具なの?」


「はい。この上に音をやり取りしやすくするために羽を取り付けます。」


もう一つ小さめの箱の中から薄い金属の羽のようなものを何枚か出す。

それを長方形の箱の上にある穴に差し込んでいく。

羽が花弁のようになり、金属のラッパのような大きな花が完成する。



「この花の部分から音が聞こえてきます。

 こちらが話す時も花に向かって話しかけてください。

 むこうでは陛下が待っていると思うので、さっそくつなげてもいいですか?」


「ええ、お願い。」


イシュラ王子が長方形の箱に魔力を流すと、ふわりと魔術式が浮かび上がる。

ユーギニス国の魔術とも古式魔術とも違う形に興味がひかれる。


「陛下、イシュラです。聞こえていますか?こちら準備が整いました。」


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