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【書籍化・コミカライズ2巻4/16発売】ハズレ姫は意外と愛されている?  作者: gacchi(がっち)


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「あーなるほど。エミリアのほうは想像できます。

 先ほど王族の子はすべて平等で、そこから王太子が選ばれるといいましたよね?

 できればイシュラ王子には婿として来て欲しいのですけど、難しいでしょうか?」


「それについては大丈夫だ。

 私たちがルジャイルに滞在していた時にはもうすでに次の王太子が決まっていた。


 今の国王の息子だ。選んだのは前国王だったはず。

 イシャルは第三王子の子で、しかも第三子だった。

 イシャルが七歳の時に王太子はもう成人していたからな。比べようもない。」


「それなら婿入りする方向で考えてもらえそうですね。」


王太子になる王子だったとしたら、さすがに婿入りしてくれとは言えない。

叔父様が王弟と仲良くなるまで、ほとんど交流したことが無い国だった。

そのため図書室で調べてもルジャイルの情報があまり出てこない。


これから書簡で条件を話し合っていくにしても、

叔父様に間に入ってもらわなければいけなくなる。

こちらが言い出すことが向こうには非常識に思われてしまうこともありうる。

下手に怒らせてなかったことにされたら、エミリアが悲しむことになる。


「婿入りか。私としてはありがたいんだが、エミリアを王族に残すつもりなのか?」


「本当はエミリアは王族から抜けてもいいと思っていたんですけど、

 今の状況だとそうもいかなくて。」


「何か問題が?」


「…早くてあと一年、遅くてもあと二年で、私が即位します。」


「もうそんな時期か…そうか、王位継承権の問題か。」


「そうです。私が女王になったら、王位継承権を持つのは二人だけになります。

 継承権を持ったままエミリアが国外に嫁ぐのは認められません。

 エディとディアナに子が二人以上産まれるか、

 一人目の子が五歳になって王位継承権を与えられるまで待たなければなりません。

 その間にエミリアは成人してしまうでしょう。

 いつ嫁げるかわからないような婚約、さすがに無理だと思います。」


ユーギニスの法では、王位継承権を放棄できるのは、

王位継承権を持つ者が三人以上いて、国王が認めた時のみだ。

叔父様が放棄できたのは、私とエディとエミリア、他に王位継承権を持つ者が三人もいたから。

だけど、私が即位してしまえば王位継承権を持つ者が二人だけになる。

エディたちの子が産まれ、五歳になって王位継承権を与えられるまで待つか、

五歳未満の王族が二人以上いれば特例で認めてもらえる。


もしかしたらエディたちの子が続けて産まれ、エミリアの成人に間に合うかもしれない。

だが、子が産まれていない今の状況では、何年後になるか予想できないのだ。


「そうだなぁ。その間に情勢が変わるかもしれない。

 婚約したらすぐにこちらの国に来いと言われる可能性だってある。

 …婿入りじゃなければ婚約そのものが難しいか。」


「その話し合いを叔父様に任せてもいいでしょうか。

 何か婿入りしてもらうのに条件があるかどうか、聞いてもらえませんか?」


「…うーん。そうだな。

 俺としてもエミリアが他国に嫁ぐより婿入りしてもらったほうがいい。

 その方向でルジャイルと交渉してみよう。

 おそらく断られることは無いと思うよ。

 イシュラなら、婚約そのものを断ったとしてもあきらめないだろうから。」


「え?そういう感じの王子なんですか?」


「ああ、かなり優秀だぞ。目的のためなら手段を選ばないという感じではなく、

 確実に手に入れるために策をこらす感じの奴だ。

 エミリアに執着していたから、いつかは来ると思ってたが予想よりはるかに早かったな。」


「なるほど…。」


そろそろ話を終えようと思った時、慌てたようにデイビットが部屋に入ってくる。

手には書簡が。目に入った紋章はルジャイル国のようだ。

え?昨日の今日でまた書簡が?


ココディアから毎日送られてきたから多少驚きは薄れるが、

通常は一通送るだけで大量の魔石が必要になる。

重要なことが無ければそうそう他国に書簡を送ることは無いのだが…。


「ソフィア様、ルジャイル国からです。

 お話し中なのはわかっていますが、関係することなのではと思いまして。」


「ええ、そうかも。ありがとう。」


書簡を受け取って中を確認すると、ルジャイルの国王からだった。


「……は?」


「どうかしたか?」


「……えーっと、ルジャイル国王からなんですけど。

 イシュラ王子がユーギニスに向かったからと。」


「はぁ?」


良かった。あっけにとられたのは私だけじゃなかった。

向かっていいかというおうかがいでもなく、向かったからと。

王族が他国に行くのに事後承諾なんてありえない。


「…その国、大丈夫なのか?」


「義父上、どうなってるんですか?」


同じように呆れたカイルと、叔父様に確認するクリス。

冷たい目で見られ、叔父様もあたふたしている。


「わ、わからん。いったい何が起きているんだ?」


「…この書簡だけではわからないですけど、

 本人が来るというのなら待ちましょうか…。

 どういう事情なのか、本人から聞きましょう。」


「あ、ああ。」


叔父様は優秀な王子だと言っていたが、それにしては行動がおかしい。

今はルジャイルとの間に問題はないけれど、これからも問題が起きないとは限らない。


エミリアとの婚約話はとりあえずイシュラ王子が到着するのを待ってからとなった。



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