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【書籍化・コミカライズ2巻4/16発売】ハズレ姫は意外と愛されている?  作者: gacchi(がっち)


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婚姻式の後、お祖父様とクリスとカイル、私の四人で会食をする。

エディや叔父様たちも誘ったけれど、叔母様が落ち着かないからと帰ってしまった。

食事量が減ってしまったお祖父様に合わせて、ゆっくりと食事をする。

今までの思い出話、これからの国の理想、いくら話しても尽きない。


二時間かけて会食を終えた後、お祖父様が退出するのを見送ろうとしたら、

ポンと私の頭の上に手を置かれた。

そのまま少し髪を撫でて、寂しそうに笑う。


「もう…こんなにも大きくなったんだなぁ。」


「お祖父様?」


「いや、これからはクリスとカイルにまかせよう。

 ではな、おやすみ。」


「おやすみなさい?」


なんだかお祖父様の態度がおかしかったけれど、

聞く前にレンキン先生がお祖父様を支えるようにして部屋に戻ってしまった。


「お祖父様、なんだったのかな?」


「…さぁな。」


「久しぶりの公務で疲れたのかもな。」


クリスとカイルに聞いたけれど、なんとなく答えをはぐらかされたような気がする。

また体調を崩しているとかじゃないのならいいけれど。




私室に戻ったら、いつもより早めに湯あみに連れて行かれた。

そのまま侍女三人に時間をかけて磨かれのぼせそうになる。

旅から帰った時だって、こんなに磨かれなかったのに。


「…なんでこんなにいっぱい磨くの?」


「それはこれから初夜の儀だからです。」


「初夜の儀…そういえばそうだった。」


王太子が王太子妃を娶るときはいろいろと面倒な手順があるそうだが、

私の場合は私自身が妃ではなく王太子だ。

そのため儀式はかなり簡略化される予定になっている。


お母様の時はレンキン先生が初夜の義の前に診察をしたそうだが、

それもクリスが担当医師だということもあって診察もしない。

…じゃあ、初夜の儀って何をするんだろう。


湯あみを終えた後、迎えに来たのはクリスだけだった。


「あれ?今日はクリスだけ?カイルは?」


「カイルは今夜は来ないよ。」


「なんで?」


ここしばらく三人一緒に寝ていたのに、今日はクリスだけなんて。

不思議に思っていたら、クリスにため息をつかれる。


「え?」


「んー。まぁ、俺から説明しなくてもいいか。

 きっと明日の夜になればわかるよ。

 とりあえず初夜の儀は王配一人ずつ行うものなんだ。

 だから、今日は第一王配の俺だけ。」


「そうなんだ?」


「うん。今日は朝から準備して疲れただろう。

 ほら、寝るよ。」


いつも通りに寝台にならんで横になると、私にかけられた毛布の上から軽くたたかれる。

朝から忙しくて疲れていたのもあるし、ゆっくり湯あみしたのもあると思う。

ポンポン叩かれているのが気持ちよくてあっという間に眠っていた。


翌日、目を覚ますともう日が昇り切っていた。

時間を見るといつもなら朝食が終わっている時間だ。


「ん…?寝坊しちゃった?」


「いや、今日はゆっくり起きていい日だよ。

 だから起こさなかったんだ。」


「そうなの?」


「うん。今日は公務も入っていないし。

 このまま診察するから寝たままでいて。」


「わかった。」


寝たままじっとしているとクリスが私の手から魔力を流す。

身体全体に魔力を流し、不調が無いかを探る。

クリスが私の担当医師になってから、こうやって毎朝診察を受けている。

お祖父様が無理して倒れたこともあって、かなり心配されている気がする。


「よし、今日も何ともないね。」


「うん。」


「まぁ、明日の朝は…多分起き上がれないと思うけど。」


「ん?どうして?」


「…明日になればわかるとしか言えないが。

 まぁ、本当に嫌だったら俺のところに逃げておいで。

 心の準備ができるまで匿ってあげるから。」


「本当に嫌だったら?」


「うん。今はわからないと思うけど、覚えておいて。」


「よくわからないけど、わかった。覚えておくね?」


本当に嫌だったらクリスのところへ逃げる?

この後何があるんだろうと思いながらもうなずく。

困ったらクリスのところに行けば助けてくれる、とりあえずそれを覚えておこう。



その日はなぜかみんなそわそわしていて、おかしかった。

ルリが何度も


「ソフィア様…身体がつらかったらお休みになっても…。」


と聞いて来たが、その度に大丈夫だと答えるしかなかった。

侍女だけじゃなく、影たちもなんだか落ち着かない。

クリスとカイルに聞いても答えてもらえず、もやもやしたまま終わった。



「…いったい何だったんだろう。」


その日の湯あみの後はカイルだけが迎えに来た。

今日はクリスはいないらしい。



「今日はカイルの番なんだね?」


「…そうだな。俺の番…というかなんというか。」


「カイル?」


寝室に入るなり後ろから抱きしめられる。

いつもの優しい抱擁じゃなく、きゅうっと縋りつかれるように強く。


「…ねぇ、どうしたの?」


「…怖くなったら、すぐにクリスのところに逃げてくれ。」


「え?」


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