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【書籍化・コミカライズ2巻4/16発売】ハズレ姫は意外と愛されている?  作者: gacchi(がっち)


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残念ながら私が落ち着いたのを待って、

お祖父様は文官たちに仕事があると連れていかれてしまった。

忙しい執務の合間をぬって会いに来てくれたのだから仕方ない。


「またすぐに会いに来る。」


「はい。」


名残惜しそうに出て行くお祖父様を見送ると、ユナがお茶を淹れてくれた。


「ありがとう。喉が渇いていたの。」


「はい。他に必要な物があったらおっしゃってください。」


にこりと笑うとユナとリサは部屋から下がった。

この部屋は廊下から入るとすぐに侍女待機室と護衛待機室がついている。


リサとユナは私が呼ばない時には侍女待機室にいるようだ。

それでも何か欲しいと言い出す前にあらわれるのだから、

さすがお祖父様付きに教育された侍女だと思う。


今までは護衛待機室には誰もいなかった。

廊下に騎士団の護衛が何人も立っていたし、

天井には監視人さんたちがいたので十分だと思っていた。

必要ない部屋だと思っていたけれど、

今後はクリスとカイルが使うことになるんだろう。


ユナはクリスとカイルにもお茶を用意していったため、

二人も向かい側のソファに座ってお茶を飲んでいる。

普通の護衛騎士が一緒にソファに座るようなことはない。

公爵家と辺境伯家出身の護衛騎士というだけあって、

護衛のためだけにつけたのではなさそうだ。


お父様の子が私だけということは、私が次の王太子になる可能性が高い。

将来の側近、世話役の侍従も兼ねているのかもしれない。



「二人とも、今日からずっといっしょにいてくれるのよね?

 よろしくね。人前じゃなければ敬語じゃなくていいわ。

 こんな子どもを敬うのは難しいでしょう?」


「…いえ、そういうわけ」


「いいじゃん。俺はそうさせてもらうよ。」「おい、クリス。いいのかよ。」

「いいだろう?別に無理に敬語使ったって、この姫さんは気に入らないと思うぞ。」


「その通りよ。いつかは敬うのに見合うだけのものを手に入れたいとは思うけど、

 今は何もできない子どもだもの。

 護衛騎士というよりは、そうね。親戚のお兄ちゃんたちだと思うことにする。」



「こんな子どもらしくない妹ねぇ。ま、いいか。よろしくね、姫さん。」


「…よろしく。」


あっさり納得したクリスと渋々といった感じのカイル。

特にクリスは私に対してというより、王家を敬っていない感じだった。

それがわかっているのに建前だけ敬う姿勢を見せられてもと思っていた。


「それで、あの後どうなったのか教えてもらってもいい?

 お祖父様からの許可は出ないかしら。」


あの後イライザたちがどうなったのか、

リサとユナに聞いてもやんわりとはぐらかされてしまう。

この二人ならどうだろうかと聞いてみると、意外にも答えてくれるようだった。


「陛下から、姫様が聞くなら答えてもいいと言われている。」


「まぁ、簡単に言ったら、公爵家は王都からの追放だね。」


「追放?イライザも?」


「あぁ、王領の一つだったハンベル領はわかる?」


王領のハンベル領…うーん、聞き覚えはあるな。なんだっけ。

ああ、そうだ。没落した子爵家の領地だ。


「王都から離れた場所にある元子爵領地?」


何とか思い出して聞くと、二人とも驚いた顔になる。


「ホントに記憶力半端ないね。そう、その元子爵領地。

 北西にあって、冷害の影響を受けやすい場所なんだ。

 税を何年も納められなくて、結局領地を返上したんだ。

 そこをエドガー公爵が治めることになった。」


「叔父様って領地なかったよね?」


それって罰になるのかと首をかしげると、

なぜかほっとしたようにカイルが教えてくれる。

…私だって知らないことあるよ?


「エドガー公爵は王族を抜ける時に、

 生涯公爵として手当金を受け取ることを決められていた。

 それを破棄され、今後はその領地で納められた税金のみで生活することになった。

 貧しい領地の税金なんてたかが知れている。もう贅沢はできない。」


「あぁ、そういうことなんだ。もうお祖父様からお金はもらえないんだ。」


元王子としての品格を保つために国から予算が出ていたはずだ。

王太子、第二王子ほどではないけれど、それなりに裕福に暮らせるだけのお金。

その上、私の予算も勝手に使っていたはずだから、かなり贅沢な暮らしをしていたと思う。

それが無くなったら…叔母様のドレス代とか出せないだろうなぁ。


「それだけじゃなく、爵位も一代公爵になった。

 イライザ嬢は公爵を継げない。どこかの貴族に嫁がなければ平民になる。」


「ええ!?貴族と結婚できなければ平民?イライザが?」


あのイライザが平民になって暮らしていけるわけがない。

かといって、叔父様の力が弱くなってしまえば…嫁ぐ先は見つかるだろうか。


「まだ九つだということで減刑されたが、王族に暴力をふるったんだ。

 十回のむち打ちと食事を一か月一食にする刑を受けた後ハンベル領に送られる。

 公爵と公爵夫人はむち打ちが五十回に増やされ、財産は没収された。

 ハンベル領に送られた後は一生王都には戻れない。

 イライザ嬢は学園があるからその時は戻ってくるだろうけど、

 それまでは王都に近づくことすらできない。」


「そっか…。」


被害を受けたのが私だから厳しい刑だと思うけど、

これが王太子に向けた暴力だったとしたら、大人なら間違いなく処刑されている。

…子どもだとしても、軽い刑にしたら王太子を軽視していることになってしまう。


むち打ちと食事抜きか。甘やかされて育ったイライザにはきついだろうな。


「納得できなければもっと厳しい罰にすると陛下が。」


「ううん、それでいい。

 反省はしないような気はするけど、もう関わらないのならそれでいいよ。

 あ、女官長たちは?」


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