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【書籍化・コミカライズ2巻4/16発売】ハズレ姫は意外と愛されている?  作者: gacchi(がっち)


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「我が国はこれよりココディアとの同盟を破棄し、国境を封鎖する。

 国交は断絶し、人、物、の行き来を禁じる。」


これで、ココディアとは実質開戦したことになる。

同盟を破棄し、国交を断絶したことにより物流は止まる。


手紙はどの国も王宮に転移装置が置いてあるため送りあうことはできるが、

許可しない国からは届かないようにできる。

ココディアからの手紙だけ届かないようにすることだってできる。


…まぁ、それをしたら完全に断絶してしまうため、

今のところする予定はないけれど。


「国内に取り残されているココディアの商人たちはどうしますか?

 おそらく偵察に来ていた騎士もいると思いますが。」


「それらは国境騎士団で保護して、まとめて海路で送り返して。」


「海路ってことは、ルジャイル国経由でいいのかな?」


「ええ。フリッツ叔父様にはルジャイル国へ連絡をお願いします。」


今日謁見室にフリッツ叔父様も呼んだのはこのためだ。

ルジャイル国はココディアを挟んだ向こう側の国で、我が国とは接していない。

だが、フリッツ叔父様の外交により、海路で商品をやり取りしている。

ココディアから魔石が輸入できなくなることを見越して、

一昨年からルジャイルとの貿易を増やし始めたところだった。


今はルジャイル国から魔石を輸入し、我が国からは穀物を輸出している。

今後は人も行き来し、交流が活発化することになるだろう。



「わかった。ルジャイルへのお願いと、周辺国とのやり取りは任せてくれ。

 私にはこれくらいしかできないからね。」


「いいえ、叔父様がいてくださって助かりました。

 これでココディアと断絶しても何も問題なくなります。」


「そうか。」


にこにこと笑っている叔父様だが、

周辺国との外交はこれくらいなどど簡単に言えるものではない。

ルジャイル国をはじめ、いくつかの周辺国と連絡が取れているのも、

すべて叔父様たちが人質となっている間も外交してくれた結果だ。


他国が味方につかないとわかればココディアは慌てるだろう。

おそらく他国から穀物を輸入しようとしても高値で売りつけられる。

その時、慌ててユーギニスに謝って来ても遅い。


「きっとココディアは数か月も持たないでしょう。

 和解を申し込んでくるとは思いますが、認めないわ。

 向こうが負けたと謝ってくるまで結界は解除しない。」


「負けを認めるかねぇ。」


横でぼそりとクリスがつぶやくと、デイビットまでもがうなずく。


「簡単には認めないでしょうね。

 だからこそ、お祖父様も戦争を終わらせるために仕方なく、

 お互いに人質を送り合うなんて同盟条件を認めたのでしょうから。」


ココディアとの闘い、最後まで戦っていたらユーギニスが勝っただろう。

だが、そこまでいくには犠牲が多すぎると思ったお祖父様が、

向こうに譲る形で同盟を申し込んだのだ。


「まぁ、どのくらいで謝ってくるか、楽しみだな。」


何かうらみでもあるのか、クリスが楽しそうに笑う。

その隣でカイルは苦笑いしているけど、止める気はないらしい。



だいたいの方針が決まった後、実務的な話をするために各自解散となる。

ユーギニスの貴族や商人にも国境の結界を知らせなければいけない。

商人に損が出ないように、ココディアに売るはずだった穀物は国が買い上げて、

ルジャイルに船で運ぶことになる。


ココディアから偵察に来ていた騎士たちも保護して送り返さなければいけない。

もちろん、そのために結界は解除しないので、

海路でルジャイル国に送り、そこから陸路でココディアに戻ることになる。

早くても二か月はかかる旅だ。

今持っている情報は古くて使えないものになるだろう。



私は謁見室でおおまかな指示をした後は私室に戻るように言われる。

まだ身体中痛いし、全然疲れが取れていない。

医師であるクリスには二週間ほど無理しないようにと言われていた。


私室に戻ってソファに座ると、すぐに靴を脱がされて横にされる。

ただ座っているだけでも駄目らしい。

クリスの肩にもたれ、カイルのひざの上に足を乗せる形で休まされる。



それにしても。


「ねぇ、クリス。なんでそんなにうれしそうなの?」


「ああ。だってさ、あいつら大使として扱われてたから生活できてたわけだろう?

 ユーギニスの貴族でも無くなって、国外追放ってなったら、

 誰が生活の面倒見てくれるんだろうなぁ?」


ああ、両親が国外追放になって喜んでいたのか。

これで本当に二人と縁が切れるのは間違いない。


「あぁ、あの二人…生活できないでしょうね。

 ココディアは証言させただけで、その後まで面倒見る気はなかったでしょうし。

 だからそんなにうれしそうなの?」


「あいつらだけじゃない。

 イディア元王太子妃も、元王太子妃という肩書がなくなったら、

 どういう顔するんだろうなぁって思ってな。」


「お母様が?」


「姫さんの母親かもしれないが、俺は認めたくないね。」


「これに関しては俺も同じ意見だ。

 あんな目に遭っていたソフィアを見て見ぬふりしていたような、

 そんな女は認めたくないな。」


「そっか。…まぁ、そう言われたらひどい母親だもんね。」


クリスの両親と私の母親。今回の件でどっちもこの国の戸籍から除名される。

存在すらなかったことになる。

それをこんな風に楽しむなんて…。


いいのかも、それで。


「ざまぁみろ、だろう?」


「ソフィアもざまぁみろって言っていいんだぞ。」


「ふふふ。そうだね。ざまぁみろ、だね!」


一度も私を見なかったお母様。ざまぁみろ!

私は絶対に負けたりしない。

お母様は悔しがって悔しがって、私を産んだことを後悔すればいい。

そうしたら、何の心置きなく恨むことができそうな気がした。




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