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【書籍化・コミカライズ2巻4/16発売】ハズレ姫は意外と愛されている?  作者: gacchi(がっち)


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「……泣くなよ。」


「え?」


「…ほら、落ち着け?」


クリスに言われ、カイルに頬をぬぐわれて、泣いているのに気が付く。

気が付いた後も、ぽろぽろとこぼれてくる涙を止められない。


「え?泣くつもりなんて無かったのに…。」


「あぁ、わかってる。感情でいっぱいになったんだろ。」


「話すのは落ち着いてからでいい。ゆっくりでいい。

 どうせ王宮に着くのは二日後なんだ。

 ほら、水は飲めるか?」


「う、うん。」


水筒に入った水を渡されて、ごくごく飲む。

知らないうちに口の中が乾いていた。

のどがうるおい、大きく息をはいた。


「…もう大丈夫。」


「そうか、でも焦らなくていい。」


「無理しなくても、話せることだけでいいんだぞ?」


「うん。わかった。」


どこから話そうか。…少なくとも魔女だと告げても二人は変わらない。

それが心強くて、リリアのことを話し始める。


「私は…三百年近く前にこの国の伯爵家の長女として生まれたの。

 父は王宮騎士の副長として、母は側妃の専属侍女として王宮にあがっていたわ。」


「三百年も前…そのくらい前だとほとんど記録はないな。」


「残ってないでしょうね。

 私が生まれてしばらくして、側妃が王子を産んだの。

 それが第一王子のニコラ。後の国王陛下よ。

 私もニコラ王子の遊び相手として王宮にあがることになった。

 一つ年下の王子を弟のように大事に思っていたわ。」


銀髪紫目の二コラ王子は人見知りして、最初は誰にも近づこうとしなかった。

それがだんだん私や他の令息たちと話すようになり、

王子の王太子教育が始まるからと遊び相手の私たちは離れることが決まった時、

大泣きで嫌がってくれたことを思い出す。

泣き虫で気が弱くて、でも、王子としての責任感は強かった。

ニコラ王子にとって国王の重圧はつらく厳しいものだっただろうと思う。


「王子の遊び相手として王宮に上がっていたのは八歳まで。

 それ以上はきちんとしたご学友や婚約者候補がお相手することになるから。

 伯爵家の私が一緒にいられるのはそこまで。

 それは決まっていたことだから別に構わないのだけど。

 その後、九歳の時に教会で魔力判定を受けたら、

 他に見ないほどの魔力があると言われたの。

 その時は…令息だったのなら役に泣てたのに、としか思わなかった。」


「なぜ令息だったら?」


「当時は令息だったら魔力があると重宝されて騎士団で活躍できたの。

 魔術師や魔術具を作る研究者として。

 でも、令嬢は魔力があっても使う道がないのよ。

 戦場につれていけるのは魔女だけだし、貴族令嬢は魔女にはならないから。」


「なぜ魔女だけなんだ?魔女だって女性だろう?」


「違うのよ。」


あの頃の魔女がどのようなものだったのかを知らなければ疑問に思うだろう。

今では騎士団に女性騎士がいるのもめずらしくない。

この国の騎士団に入るためには魔力属性が二つ以上で、

魔術の技能がある程度つかえることが求められる。

貴族令嬢が騎士団にはいって活躍することだってできる。


「何が違うんだ?というか、魔女ってなんなんだ?

 魔術が使える女性という意味じゃないのか?」


「魔女のほとんどは平民や孤児なの。

 その頃、八歳から十歳の間に教会で魔力判定することが義務付けられていた。

 魔力を持つ男の子は騎士団に、魔力を持つ女の子は魔女の家に引き取られる。」


ここまでは理解できるだろう。

戦争時、魔力を持つ者は戦力になる。それは当然のことだ。

国が保護し、戦力になるように鍛える。だけど…。


「魔女の家に引き取られる時に、少女は魔女の儀式を受ける。

 魔力判定する時期が十歳までなのには理由があるの。

 魔女の儀式は女性としての生殖機能を魔力を生み出す力に変えるもの。

 もうすでに女性の身体になっていたら魔女にはなれない。

 だから、魔女はみんな子どもの身体で、それ以上大きくなることは無い。

 さっき見たでしょう。寝台が子ども用だったの。」


「あれは…そういうことだったのか。」


「あんなに小さな寝台で寝るくらいの子どもの身体で成長を止めるのか…。」


多分、クリスは気が付いたはずだ。

ハッとした顔になったあと、口をつぐんだ。

おそらくクリスが男性として成長しないというのはそういうことだ。

王家の血をひく公爵家であったとしても、クリスの魔力量は他の家族にくらべて多すぎる。


魔女の儀式とはどういうものなのか師匠に聞いた時に、

もともと自然にそういう身体で魔力を多くもつ者たちがいる。

それを魔術で真似して、魔力を生み出す身体に変えているのだと。

生まれつき自然にそうなっているクリスとは違って、

魔術で無理に身体を変える魔女の儀式は寿命を縮めてしまうこともあるけれど。



「普通の魔女は、魔女になっても何もしない。」


「何もしない?」


「そう。食事して、眠って。ただ普通に生きるだけ。」


「どういうことなんだ?」


「魔石と同じ扱いなのよ。魔術具に魔力を供給するためだけに生きるの。」


「「は?」」


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