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【書籍化・コミカライズ2巻4/16発売】ハズレ姫は意外と愛されている?  作者: gacchi(がっち)


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「イライザが正当な血筋って…イライザはハンベル公爵の子どもじゃないだろう?」


それはそうなのだが。だけど、これはそういう問題じゃない。


「それは理由にならないのよ…。」


「なんでだよ。」


「イライザの戸籍はそのままになっているの。」


「…そういうことか。」


「しまったな…。」


イライザがエドガー叔父様の子ではないというのは、

この国の貴族ならばほぼ全員が知っている。

国中の貴族が集まった夜会でお祖父様がそう話したからだ。


あの夜会でハイネス王子はイライザと結婚し、この国の王位を継ごうとした。

ハイネス王子の勘違いから起きたことではあるが、

この国の王位を簒奪しようとしたことに違いはない。

結果として二人は捕縛され、イライザが侯爵夫人の不貞の子だと公表された。


その後、イライザはお腹にハイネス王子の子がいることでココディアに移送された。

国外追放とされ、魔力封じの首輪をつけられた状態で…。

だから、これでもう大丈夫だと安心してしまっていた。


本当ならばしなければいけないことをしなかった。

イライザの戸籍を変えることなく、他国に公表することなく、

そのままユーギニスとココディアとの間だけでやりとりして終わってしまった。


周辺国には何一つ伝わっていない。

今さらイライザが王家の血筋じゃないと言い出しても、

ココディアに言われたから否定しているだけだと思われる。


女王が国を継ぐことを不安視する国は多い。

一番安定しているユーギニスが女王の国になることで、

自分たちの国にまで影響が及ぶのではと思っている国もあるだろう。


だからこそ、王位を継ぐのに王女はふさわしくない、

二カ国の王族の血をひく王子を新しい国王にしろという要望は、

それなりに説得力をもってしまうのだ。


「…イライザを追放しただけで安心してしまった我が国のせいだわ。

 他国から見たら、それほどおかしな要望ではないもの。」


「ですが…そんな要求は呑むわけにはいきません!」


デイビットが叫ぶように言うと、周りのものたちがうなずく。

要求を呑むわけにはいかない。それはそうなのだけど…。


「一週間以内に認める旨の返事を出さない場合、開戦すると書いてあるわ。」


「え!?開戦ですか!」


「…多分、断られるのをわかっていて、この書簡を出してきているの。

 ココディアがこんなに強気なのは最初から開戦するのが狙いだからよ。

 …お祖父様がいなければ勝てると思っているのでしょう。」


ここ数年、いつココディアと戦争になってもおかしくなかった。

それでももう少し後になると予想していたのだが、

お祖父様が倒れた情報がココディアに伝わったからだろう。

もう二か月、貴族からの謁見を断っている。

国内の貴族の間でお祖父様の不在が噂されるようになっていた。

そこからココディアに伝わったことで、今回の書簡を送ることにしたのだと思う。


「開戦の準備を始めよう…。」


「カイル…?」


「ミレッカー侯爵領にいる国境騎士団も何割かココディアとの国境に移動させよう。

 その間に、ココディアとつながっている二か所の街道を封鎖して、

 周辺領地から兵を集めなければ…。」


「クリスも…ちょっと待って。」


「急がなければ、被害が大きくなるだけだ。」


「こうなってしまえば開戦は避けられない。わかっているだろう?」


それはわかっている。この書簡の内容を受け入れることは無い。

どうあがいても一週間後には開戦してしまうだろうし、

戦争の準備はすぐにできるものではない。

一刻も早く始めなければいけないのはわかっている。


…どうしよう。こんなにすぐに開戦すると思っていなかった。

開戦してしまえば、ユーギニスから攻めることが無い以上、

ココディアの兵とぶつかる場所はユーギニスの領地になる。

お互いの兵に犠牲がでるのはもちろん、その領地も多大な被害が出る。


戦争の後、数年も田畑が使い物にならないことだってある。

お祖父様が守り、五十年もかけて平民が飢えることのない国を作り上げたのに。


ずっと考えていたことはある。

うまくいけば開戦しないで済む方法が…だけど、どうやって説明する?

…なぜ、そんな方法をと聞かれたら、うまく答えられるだろうか…。


「…考えがあるの。少しだけ時間をちょうだい。

 一日、ううん、明日の朝まででいい。お願い、みんな。」


謁見室に集まったみんなが微妙な顔をする。

時間をかけたからといって、他に何ができるのかと思っているんだろう。


「…ソフィア。それは考えをまとめたいからか?

 それとも、考えはあるけれど、決断するのに時間が必要なのか?」


「…決断するのに、時間が欲しいの。

 うまくいけば…犠牲を出さないで済むと思う。」


「……姫さんには時間が必要か。

 わかった。明日の朝、もう一度謁見室に集まる。

 その時に、姫さんは今後どうするかを指示する。それでいいか?」


「うん、それでいい。明日の朝までには決めるわ。」




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