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【書籍化・コミカライズ2巻4/16発売】ハズレ姫は意外と愛されている?  作者: gacchi(がっち)


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学園を卒業して一か月、倒れたお祖父様の代わりに国王代理となって二か月が過ぎた。

急に国王代理となったために、学園の残り一か月は通うことができず、

ダグラスとルリも卒業前に王宮にあがることになった。


卒業前の最終試験の結果は、ダグラスと私は満点のため、

そのまま首席と次席で卒業した。

ルリが懸命に三席を死守したが、

A教室は王宮にあがることが決まっている文官と女官が多く、

A教室の平均点は過去最高点数を記録したと教員からは驚かれた。


まだ学園に一年通うことになるエディとディアナとアルノーも、

私が国王代理となったことで、

急遽王太子と王太子妃の仕事をすべて引き継ぐことになった。


この二か月、王宮はどこに行っても慌ただしく、

誰もが慣れない仕事をこなすのに精いっぱいだった。

それもようやく落ち着いてきて、やっと休憩の時間を取れるようになったころだった。


執務室の隣にある休憩室のソファに座り、

クリスとカイル、ダグラスとセリーヌと午後のお茶をしていた時、

まだ仕事があると執務室に残っていたデイビットが荒々しく部屋に入ってきた。

いつも穏やかなデイビットがこんな風に焦っているのはめずらしい。

何が起きたのだろうかと皆に緊張が走る。



「ソフィア様。ココディアから書簡が届きました!」


次期執務室長として執務室に異動になったデイビットが険しい顔で書簡を渡してくる。

ココディアの国王印が押された正式な書簡だ。

ここ数年、ココディアの王家から連絡が来るようなことはなかったのに。


開けて読んでみて、あまりのことに座っているのに倒れそうになる。

それに気が付いたクリスが、支えようと肩を抱いてくれる。


「姫さん、大丈夫か?何があった。」


「…クリス、どうしよう。」


「いいから、落ち着いて。水、飲めるか?」


私の様子がおかしいと思ったのか、リサが水差しとグラスを運んできていた。

カイルがそれを受け取り、グラスに注いで飲ませてくれる。

冷たい水に柑橘が絞られてあった。

さっぱりとして少し甘い水を飲んで、大きく息をはいた。


…落ち着いて、まずは皆に説明をしないと。


「皆を謁見室に集めて。緊急事態が起きたわ。」



広い謁見室には主要なものが集まっていた。

この王宮を動かすのに必要とされている者ばかりだった。

今まで私が謁見室を使って人を集めたことは無い。


国王代理として、それだけ重要な事態は今まで起きていなかった。

だけど…これは全員に伝えなければいけないことだ。


「集まってもらったのは、ココディアからきた書簡の内容を説明するためよ。

 …信じられないかもしれないけれど、説明するから聞いてくれる?」


なるべく落ち着いて話せるように、ゆっくりと話し始める。

感情的になってしまわないように、気を付けながら。



「…ココディアからユーギニスの王位を明け渡すようにと。」



「「「「「「は?」」」」」」



「ユーギニスの王位は正当なものが継ぐべきだと書かれていたわ。」


「正当なものって誰だよ。」


イラついたのか、横にいるクリスが口をはさむ。


「…ハイネス王子とイライザの子よ。」


「あぁ?なんで今さらイライザの子が出てくるんだよ。」


私もそう思う。

書簡を読んだ時は理解できなくて頭が真っ白になりそうだったもの。


「…書簡にはこう書かれていたわ。

 ユーギニスの王政は国王ただ一人で行われている。

 形だけの王太子だった第一王子に代わって、

 王宮を取り仕切っていたのはエディ第三王子だった。

 だが、これを排除しようとした勢力の罠にはまり、

 エディ王子は王位継承権を不当に奪われることになった。


 形だけの王太子や、国外に居続けた第二王子とは違い、

 実際に王宮で役目を果たしていたのは第三王子だったにもかかわらず、

 公爵となり国の外れに幽閉されている。

 形だけの王太子の後はエディ王子の娘イライザが継ぐことになっていたが、

 この話もなかったことにされてしまった。

 結果、王宮に残るのは女王になるにはふさわしくないソフィア王女と、

 国王になるには消極的なエディ王子。

 現国王が倒れ、王政を続けるのが難しい以上、

 正しいものに王位を明け渡すのが最善だろうと。」


「…はぁ?全くの嘘じゃないか。どういうことだ?」



「つまり、正当な跡継ぎはイライザなのだから、

 イライザがハイネス王子と結婚して産んだ子、マチアス王子に継がせるべきだと。

 ココディアではユーギニスのイライザ王女こそが正当な血筋だと認めている。

 まだマチアス王子は幼いから、マチアス王子が国王になるまでは、

 後見としてハイネス王子とイライザが国王代理と王妃代理を務めると。」


「イライザが正当な血筋って…イライザはハンベル公爵の子どもじゃないだろう?」


それはそうなのだが。だけど、これはそういう問題じゃない。


「それは理由にならないのよ…。」


「なんでだよ。」


「イライザの戸籍はそのままになっているの。」


「…そういうことか。」


「しまったな…。」



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