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【書籍化・コミカライズ2巻4/16発売】ハズレ姫は意外と愛されている?  作者: gacchi(がっち)


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「そんなにもアーレンスはチュルニアに歓迎されるというのなら、

 チュルニアに行って生活すればよいと。総勢で三十人ほどだったでしょうか。」


あっさりと話すクラウス国王に、驚きすぎて何も返せない。


「半年ほどして、着の身着のままの状態で逃げ帰って来ました。

 アーレンスの者だとわかるとひどい田舎者扱いで、

 食べ物すらまともに売ってもらえなかったと。

 やっぱりアーレンスのほうがいいと言い出したので、

 ぼろぼろの状態のままで皆の前に出して、

 しっかりと謝罪させることでもう一度住まわせることを許しましたが、

 以前の家ではなく集落の外れに住まわせています。」


「……それは思い切ったことをしたわね。」


チュルニアでどういう扱いをされるのかをわかっているうえで送り出し、

戻ってくるのなら受け入れるけれど、見せしめのようにいい暮らしはさせない。

一度でもアーレンスを裏切った者は許さないと言っているようなものだ。


たしかにそんなことをすれば、

チュルニア時代のほうが良かったと言うものはいなくなると思うが…。

クラウス国王の評判は落ちたのではないだろうか。


「私は…アーレンスを壊すつもりで改革をしました。

 他の国のほうがいいなどというのなら、出て行ってくれてかまいません。

 改革することすべて反発はありましたが、

 アーレンスは領主の言うことは絶対ということもあり、

 私が決めたことに逆らえるものはいません。


 戦いもしない辺境騎士団は解体して、魔獣討伐隊を作りました。

 騎士団などと言っても、戦争を経験したことが無いものばかりで、

 戦争を知る老人たちは動きもしないくせに文句ばかり言う。」


「魔獣討伐隊ね…魔獣の討伐を専門に?」


「ええ、魔獣は食料にもなります。

 昨年の冬ごもりはそれまでの蓄えもありなんとかなりましたが、

 今年の冬ごもりは本当にひどかった。

 討伐する魔獣が増えれば、魔獣の肉を他の領地に売り出すこともできます。

 アーレンスには特産と言えるものがありませんので、

 少しでも収入を増やさなければいけません。


 魔獣だけでは足りそうもなかったので、

 他にも穀物については、今年の初めに通達を出しました。

 新しく作付面積を増やした分の収穫は、個人のものにしても良いと。」


「そう言えばアーレンスはすべての収穫した作物は、

 一度集めてから分配するのよね?」


アーレンスで栽培されているのは寒い高地でもとれる豆だ。

村意識が強いのか、アーレンスは個人のものという意識が薄い。

全員で栽培し全員で所有するという考え方なので、

食料は基本的に共有するものだったはずだ。

その考えを変えて、新しく作った田畑の分は個人で受け取っていいと。


「独立して一年目の冬から食料不足で苦しみました。

 それなのに危機感を持つ者と持たない者がいる。

 二年目の冬は自助できる者を優遇することに決めました。」


「自助できる者を優遇…

 たしかに何もしない者を許していたら大変なことになるけど。

 そんなことをして死者は出なかったの?」


「ぎりぎり死なない分は配給しました。

 それ以上、満足に食べたかったら自分たちで食料を確保するようにと。

 もちろん、病人や動けない者は保護しています。

 そうではないのに動かない者たちのめんどうは見れません。

 国がなんとかするだろうと人任せなものの意識を変えたかったのです。」


「そう…変わりそう?」


「わかりませんが、ユーギニスに戻るとしてもこの方針は変えません。

 貧富の差は出るでしょうが、このままでは全員が飢えるだけでしたから。」


このままでは全員が飢えるだけ。その認識は正しい。

クラウス国王がしたことは乱暴かもしれないが、

今後生き残るためには必要な改革だっただろう。

二年という短い時間で、よくここまで改革できたものだと感心する。


「そう…クラウス国王が変えようと努力したことはわかったわ。

 国境騎士団はミレッカー侯爵領に配置したままにしましょう。

 警らの範囲にはアーレンスも加えるから、

 異常があればミレッカー領からすぐに本隊を派遣できるようにするわ。」


「ありがとうございます!」


ホッとした顔のクラウス国王にデイビットが書類を渡す。

ユーギニスに戻る契約書だ。

これからは辺境伯領ではなく、アーレンス侯爵領となる。


「条件が変わったようなので、新しい契約書を作成しました。

 国境騎士団の維持費については削除してあります。」


「ありがとう、デイビット。

 クラウス国王、条件に問題なければ署名してくれる?」


「…はい、問題ありません。」


さらりと署名された書類をデイビットが受け取って確認する。

うなずいて下がったのを見て、あらためて向き直る。


「それでは、クラウス侯爵。またユーギニスの一員としてよろしくね?」


「はい、ありがとうございます。」


契約が終わったと、立ち上がり礼をしそうになるクラウスを止め、

もう一度座ってもらう。まだ話し合いは終わっていない。

契約が終わったのを見計って、クリスとカイルが部屋に運んできたものを示す。


「…これは何の苗ですか?」


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