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【書籍化・コミカライズ2巻4/16発売】ハズレ姫は意外と愛されている?  作者: gacchi(がっち)


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クリスがため息をついたら、ダグラスがエマを連れて戻ってきた。

少しだけ顔色が悪い。具合が悪いんだろうか。


「エマ、ごめんね。椅子に座ってくれる?」


遠慮したエマに、もう一度座るようにお願いすると、

おそるおそるといった感じで座った。

王太子である私と同席するのは恐れ多いといった感じだ。

学園でA教室の同級生と話すのには慣れたが、

下級生と話す時に相手がこういう感じによくなるからわかる。


…やっぱりエマが身分差を気にしない性格には見えない。

この後二人のことを手助けするかは決めていないが、

まずはエマ自身がどう思っているのか聞き出しておかなければいけない。


もちろん、無条件で助けることはできない。

身分制度や貴族の常識について、私が否定してはいけない。

それに恩恵を受けているのは王族だからだ。

この国を背負う私がそれを否定することは許されない。


我がままを言えば、叶えられるのは知っている。

今回のことだって、テイラー侯爵に認めるようにと命令すればいい。

だけど、できるからといって、していいわけではない。

身勝手な命令は王太子だからこそしてはいけないのだから。


「ダグラス、ちょっとだけ結界を張るわ。

 すぐ終わるから三人で話して待っていて。」


「あ、え?」


承諾を取らないまま、私とエマがいる周りに四角い箱のような結界を張る。

音だけでなく景色も遮断すると、真っ白い空間の中に閉じ込められる。

初めて結界の中に入ったのだろう、エマが立ち上がりそうになる。

それを大丈夫だと座らせ、結界について説明をする。


「これは向こうに音が聞こえないし、見えないようになっているわ。

 話が終わったらすぐに解除するから。」


「……申し訳ありません。」


「ん?」


「…このような事態になってしまったのは、すべてわたくしのせいです。

 ダグラス様をそそのかしたのはわたくしです。

 責任はすべて…」


座ってと私が言ったからか、椅子に座った体勢のままで頭を下げる。

テーブルに額がつきそうなほど深く頭を下げ、

そのまま謝り続けるエマに焦ってしまい大きな声で止めた。


「ちょ、ちょっと待って。私、エマを責めたくて呼んだんじゃないわ!」


「え?」


「ダグラスから話は聞いたけれど、エマからも聞きたくて呼んだの。

 ほら、片方から事情を聞くのは良くないでしょう?

 だから、エマからの話も聞こうと思っただけなの。

 エマが悪いとか思ってないから、落ち着いて?」


「…ダグラス様を連れ戻しに来たのでは?」


「違う違う。何か困ったことになっているんだと思って、

 助けられないかと思ってきたの。

 だからエマからも話を聞こうとしただけなの。」


「…そう、でしたか…。」


私がただエマの話を聞きたかっただけだとようやく理解してくれたらしい。

予想外だったのか、エマの肩の力が抜けたのがわかった。

…どれだけ精神的に負担がかかっていたのか。

だが、ダグラスを連れ戻しに来たわけではないと聞いてもほっとした顔にはならなかった。

青ざめたままなのは、何を思っているからなのか。


「私もダグラスも、エマのせいだなんて思ってない。

 貴族社会の考え方もわかっているけれど、それだけが正しいとは思えない。

 エマのお腹の中にいる子は、ダグラスの大事な子どもでしょう?

 ダグラスが守ろうと思う気持ちはわかるわ。」


「……はい。」


無意識なのかお腹を撫でるエマを見ると、

エマも子ができたことを嫌がっているわけではなさそうに思える。


「ここでの生活は大変じゃない?

 何か困っていることは無い?」


「わたくしはもともと貧乏な伯爵家の三女でしたから、

 お金がない生活には慣れています。」


「そう。兄弟が六人ってすごいわよね。

 私は一人娘だから、少しうらやましいわ。」


「母が男の子が欲しかったようです。

 女の子が五人産まれた後、六人目でやっと弟が産まれました。」


「あぁ、そういうことなの。だから六人兄弟なのね。

 三人目ということは、下の兄弟が三人もいるの…。

 じゃあ、子どもの面倒を見るのは得意?」


「ええ。特に弟はやんちゃなくせにすぐ熱を出す子で。

 十歳になるまで苦労しました。」


その頃を思い出したのか、くすりと笑う。

初めて見たエマの笑顔が可愛らしくて、四歳上だということを忘れてしまいそうになる。


「そうなの。じゃあ、その子が産まれても安心ね。

 エマなら良い母親になるわね。」


「……。」


「どうかした?」


「あの…。」


「ん?」


「あの…お願いです。

 ダグラス様をこのまま侯爵家に連れ戻していただけませんか?」


「え?」


悩み事があるのかと思ったら、そんなことを言い出すエマに、

私の予想があっていたのかと思った。

…やはり、身を引くつもりだったのかと。


「このままダグラス様がここにいたら、

 ダグラス様に傷がついてしまいます。

 わたくしが産んだ子を跡継ぎにしたら、何を言われるか…。

 貴族社会ではもちろんですけど…その…」


「それはポネット伯爵家にってこと?」


「…そうです。」


エマが身ごもったということは、嫁ぎ先の令息が何か問題あると言われても仕方ない。

三年子どもができなくて離縁したのに、エマはそれから一年で子を身ごもっている。

ポネット家の令息が再婚相手との間にすぐに子どもができれば、

お互いに相性が悪かったのだとも言えるが、

どうやらポネット家は再婚相手との間にも子ができていない。


そんな時にエマがダグラスの子を産んで跡継ぎにしたなんて知られたら。

名誉を深く傷つけられたと、嫌がらせをされる可能性もある。


もちろん、ダグラスはそれもわかった上で行動していると思うが、

エマとしては自分のせいでテイラー家とダグラスに迷惑がかかるのは嫌なんだろう。


「ダグラスを連れて帰ったとして、エマはどうするの?

 一緒にテイラー家に帰れるの?」


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