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【書籍化・コミカライズ3巻発売中】ハズレ姫は意外と愛されている?  作者: gacchi(がっち)


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102

場所を確認したカイルの手を取って、クリスと三人で転移する。

近くに誰もいない場所を選んだのだろう。あたりに人の気配は無かった。


「ここは…西宮?」


「そうだ。姿を消して近づこう。」


またここに来ることになるとは…七歳になるまで住んでいた場所ではあるが、

夕方近くになっているせいか薄暗く、建物がかなり古びたように見える。

もともと老朽化のために倉庫として使用している宮だ。

こんな時間に女官が西宮にくる仕事なんて考えられない。


姿を消したまま廊下を歩いていると、奥から女性の声が聞こえてくる。

人がいない建物だから、静かな声だとしてもよく聞こえる。

近づいて確認すると、シーツ置き場の中で話をしているようだ。


中をのぞくとクロエを囲むように三人の女官が立っていた。

ここからだと後ろ姿しか見えないけれど、金髪に近い髪色。

高位貴族出身の女官なのかもしれない。


「どうしてずっと休んでいるのよ。

 おかげで報告書が間に合わないじゃない。」


「そうよ。さっさと報告書を書きなさいよ。」


「え、でも…あの…。」


あの報告書の三人の女官だろうか。

クロエを責めるような声が聞こえる。

それにたいしてクロエは言い返すことができないようだ。


…こんな感じでずっと仕事を押し付けられていたんだろうな。


「あなただって給与をもらっているんだから、

 少しは仕事しなさいよ。

 私たちはあなたに仕事をわけてあげているんだから感謝してよね。

 明日からちゃんと出てきて報告書を書くこと!わかった!?」


「あの…わたし…休んでいたわけじゃなくて。」


「なによ…休んでたじゃない。女官室で見なかったわよ。」


「そうよ。探したのに二週間もいなかったわ。

 おかげで報告書の締め切りに間に合わなかったじゃない。

 さっさと出てきて仕事しなさいよ。」


クロエが女官室にいなかったから報告書が間に合わないなんて。

いなかったら自分で書こうとは少しも思わないらしい。

仕事を押し付けていただけじゃなく、できなかったことまで人のせいにするなんて。


思わずため息をつきそうになるが、音を出さないようにこっそりと部屋に入る。

決定的な場面まで待つように言われているが、

その後はすぐに助けに入りたい。

できるだけ近くにいて見守るつもりだった。


「あの…休んでいたわけではなくて、異動になりました。」


「はぁ?クロエが異動?」


「あまりにも仕事できないから異動になったんじゃない?」


「え?じゃあ、もしかして下級使用人になったんじゃない?」


「うそ。洗濯女にでもなったの?

 やだぁ。お似合いなんだけど!」


三人の笑い声が重なる。クロエを馬鹿にするような笑い方。

女官にしては厚塗りの派手な化粧をした顔が醜くゆがむ。

…あぁ、嫌だ。前女官長の笑い方を思い出す。


どうしてこんな風に人を見下して笑えるんだろう。


クロエが傷ついていないか心配になる。

うつむくようにしていたクロエが顔をあげる。

その顔は何かを決意したように力強かった。


「…私は王太子室に異動になりました。」


「「「は?」」」


「もう女官室付きでは無いので、女官の雑務はしていません。」


「何言ってんの?」


「王太子室長について仕事をしています!

 ですから、もう皆さんの報告書を書くことはできません!」


ここ二週間デイビットについて仕事をしていたおかげだろうか。

クロエは前よりも自信を持つことができたようだ。

三人に囲まれて怖いのか、震えているのにちゃんと言い返している。


だが、それに安心したのはつかの間だった。


「何を馬鹿なこと言ってるの?

 クロエなんかが王太子室付きに選ばれるわけないじゃない。」


「そうよ。クロエが選ばれるなら私たちが選ばれているわよ。」


「報告書を書きたくないからって、そんな馬鹿な嘘をつくなんて。

 …これは懲らしめないとダメみたいね。」


「…っ!嘘じゃありません。」


「はいはい、そっち押さえといて~。」


「はーい。」


クロエの発言を嘘だと決めつけ、二人の女官がクロエの腕を押さえつける。

抵抗しても細身のクロエでは振りほどけず、もう一人の女官が近づいていく。


「顔を殴ると見つかっちゃうかもしれないけど~。

 でも、クロエの顔を見てると殴りたくなっちゃうのよね~。」


「大丈夫よ。クロエ、いつも下向いて歩いているもの。

 それに誰とも話さないんだもの。

 顔の形が変わってても誰も気にしないわ。」


「それもそうよね~。

 じゃあ、とりあえず飽きるまでは顔にいこうかな。」


人に暴力をふるうことを楽しんでいる女官たちの発言に、

目の前が真っ赤になるような感じがした。


にやにやと女官がクロエに近づいていく。

思い切り振り上げた腕が下ろされたとき、カイルの叫ぶ声が聞こえた。


「ダメだ!」





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