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凱旋

主人公北畠具教帰還!!読者の皆さんお待たせしました。なに、待ってないって!! (憤怒)


まあそれはともかく久し振りの清州城の中を歩き回る北畠具教は、クンクンと鼻で匂いを嗅いでいる。


「おおこの檜の香り・・・懐かしいなぁ」


「また適当な事言って、檜の香りって分かるんですか」


やれやれと言った感じでモブが北畠具教に突っ込む。そんな相変わらずな軽いノリの北畠具教に突然衝撃が走る。


「殿ーーーお帰りなさい♡」


「うおなんだ、その声は犬姫ちゃんか」


まるで飼い主を見つけたような犬のように、甘えるようにくっ付いてくる。着物越しだが、彼女の身体がグイグイと押し付けられる。


彼女の豊満で柔らかい胸の感覚が、彼の身体を通して脳に伝わる。それはそれは甘い感覚であった。


「ちょっと犬姫ちゃん、近寄り過ぎだ。これ以上はヤバい」


「えーいいじゃないですか。私、貴方の妻なんですよ♡」


「いやだって、そんな事され続けるとなろうの規約に引っかかるようなエロい展開になって、BANされちゃう」


「なにわけわからない事を、さあ私の部屋で続きを・・・イタタ!!」


抱き着いて離れない犬姫の耳を北の方が思いっきり引っ張った。


「なにをしているのですか、武士の妻なんですから、はしたないですよ」


北の方の助勢でようやく犬姫の拘束を解かれた北畠具教が、彼女の頭を撫でている。


「ありがとう、おかげで助かったよ。北の方さんも元気で何よりだ」


頭を撫でられた北の方の顔が真っ赤になる。


「ちょっと殿、こんな人前で恥ずかしい・・・ささお疲れでありましょう。私の部屋でお休みを・・・」


そう言って北畠具教を連れて行こうとした北の方の耳に、看過できない言葉が聞こえてくる。


「・・・これだからおばさんはズルい」 (小声)


「何か言いましたか、犬姫さん」


「いーーえーーーなーーーにーーもーーー」


こうして犬姫と北の方は取っ組み合いを始めてしまうのである。この二人、北畠具教の事になるとやたら揉め事なってしまう。


「あーあ、また喧嘩して。ちょっと市姫ちゃん止めてあげてよ」


北畠具教は傍らでそれを見ていた市姫に助けを求めた。


「はいはい、分かましたよ。もうあなたっていつも私を頼るんだから」


「いーやそんなに褒めなくても」


「褒めてない!!・・・ってそうだ、貴方のいない間に政務が溜まっているんだから、今夜は私の部屋でお仕事よ」


一番若い市姫が、結局今宵の北畠具教を捕まえてしまった。さすがに仕事とあれば逃げられない。


「・・・疲れているから仕事をちょっと・・・」


「また逃げようとして」


そんな痴話話をしているうちに、家臣たちが北畠具教の元に陸続と集まってきた。


鳥屋尾満栄、林秀貞、村井貞勝、服部友貞、木造雄利、森可成、佐久間信盛・・・今いる主だった武将達である。木造具政らはまだ帰国していなくていない。


「殿、この度の戦、大勝利でございます!!」


「殿についてきて最高です。歓喜感激!!」


「おおみんなありがとう!!みんなのおかげだよ、本当に」


「まあ殿、なんにもしてませんからね」


「うるさいぞモブ!!」


こうして勝利の歓喜に北畠具教は再びつつまれた。難敵斉藤義龍を破り、しばらくは自分を狙う者は居ないであろう。その安堵と幸せは何物にも代えがたい。


「俺はやったぞーーー」


こう北畠具教は叫ぶのであった・・・


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・


「・・・それだけですか?」


「えっなにかあんの?」


家臣たちがひそひそ話をし始める。そして意を決したかのように皆声を合わせて大声で言いのであった。


「恩賞ですよ、恩賞!!!」


声の勢いで思わず北畠具教がひっくり返ってしまう。


「わあビックリした。大丈夫だよ、ちゃんと活躍した皆に出してあげるから・・・」


そう北畠具教が言うと、慌てた鳥屋尾満栄が駆け寄ってくる。


「殿、事はそんなに簡単ではありません。此度は防衛戦。勝っても分け与える領地がありません!!」


「ああそうだった。でも志摩の方は勝ったというし、そっちをあげれば」


そう言いかけた北畠具教に今度は森可成が駆け寄る。


「我らは尾張の侍。遠くの志摩の地よりここでの加増をお願いしたい!!」


今度は再び鳥屋尾満栄が進言を行う。


「今尾張は、殿が七割、家臣団が三割の配分になっています。殿の支配地を減らし家臣に振り分けすぎると領地経営のバランスシートが崩れます」


そこから鳥屋尾満栄の説明話が続くが、メンドクサイので割愛すると、家臣団の領地が多すぎると「家臣皆で団結して北畠具教の領地分捕ろうぜw」となってクーデターが起こるとの事。


「じゃあみんなにこれ以上領地あげれない訳か・・・なんだみんなその目は」


「昇給がないなら我らはストライキを決行します!!」


「おいモブ!!侍って主君に忠実じゃないんかよ!!」


「それは江戸時代の話ですので・・・この時はみんな土地や金や名声の為に分捕り合いで裏切り上等ですよ」


みんなに囲まれて困っていた北畠具教であったが、突然遠くから声が聞こえた。


「姫様じゃ!!雪姫様が来られたぞ!!」


その声にいきり立った家臣達が、まるでモーゼの行進が如く道を開け始めた。それほどこの大戦の雪姫の功績は抜群であり、もはや北畠家の中心と言って間違いなかった。


「おおみんな俺に対する対応と違うぞ」


こうして雪姫は北畠具教の元までやって来て、膝をついた。純白の鎧、そして対照的に黒く艶のある長髪。気品ある美少女である雪姫はまさに美しかった。


「父上、ご無事で何より」


「雪姫ちゃんも無事でよかった。活躍すごかったみたいだね。部下皆も頑張った」


「ははー、なによりの温かいお言葉。部下達も喜びましょう・・・あとご報告ですが、犬山城奪取いたしました」


その報は突然であり、また朗報であった。これで尾張の不安定要素であった犬山城と北尾張四郡が一瞬で支配されたのである。


「それはまことにございますか!!」


「ええ嘘では・・・ちょっと秀貞。目が永楽銭になってるわよ」


林秀貞の目は雪姫の指摘の通り永楽銭になっており (漫画的表現)、よだれをずるりと垂らしている。


「そっそれらの配分はまだ決まってないのでしょう」


「ええ、そうですけど・・・キャァァァァ」


雪姫のもとに家臣達が群がってきたのである。


「雪姫様、うちは幼い娘のミルク代にも事欠く惨状で」


「どうかどうか私にも土地を」


こうしてごった返す事態になり、もうぐちゃぐちゃ。結局、その後の折衝により以下のように配分された。主だった所では、


雪姫

小牧山城一万石→犬山城一万五千石


蜂屋頼隆

小牧山城城主へ加増


という変更である。雪姫の加増は抑えられ、その分旧織田家に振り分けられた。志摩の配分は後日決定と相成った。


こうして「勝った側」の北畠家はまあいいとして、「負けた側」の斉藤家はまさに家の存亡をかけた議論が行われようとしていた・・・


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