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小牧山城攻略戦11

「おお、なんとか間に合ったか!!」


小牧山城が見える場所で森可成が叫んだ。深夜の闇に紛れて鳴海城から出発し、ようやくここまできたのだ。朝からの雪はもうかなり本降りになっており、肉眼では事態の状況がつかめない。


「どうやらまだ城は落ちていないと見えるが、一体どうなっている」


しばらくすると、先発させていた斥候が帰ってきた。斥候は雪まみれになっていた。


「どうやら斉藤方は兵を分け、城攻めを行っているとの事。雪姫様の部隊は後方の斉藤勢に突撃したと」


「雪姫様は先に後方部隊をつぶしに来たか・・・なれば我らは城攻め勢に仕掛ける!!」


森可成のこの発言についてきた部下達はどよめいた。


「小牧山城の攻め方は二千以上いると思われます。我らは百名ほどしかなく無謀かと」


「さればこそよ。まさかこんな少数で攻めているとは向こうは思うまい。この吹雪のような雪は我らにとって有利、兵数差を隠せる。ともかく、城攻め兵を城にも後方部隊の応援もさせぬよう釘付けにさせなくてはならん」


ビューと風が強くなり、雪が森らも覆う。天候はますます悪くなっている。そして森可成は力強く檄を飛ばす。


「ええいなにをしている!!とっとと出発せんか!!この俺が先陣を務める!!」


森一族は史実でもかなりイケイケだったと思われる。特に森可成は宇佐山城の戦いにおいて、わずか千名で三万を超す大軍に引かずに戦うという勇将であった。つまりここでも百名で、数千はいる敵兵に突っ込むことも出来たのである。 (強引な解釈)


さて森達北畠別動隊が動き出した時、この時もっとも兵士を抱えていたところはどうなっていのであろうか・・・





「ええいなにをしている!!とっとと出発せんか!!」


ちょうどその頃、ここ斉藤飛騨守率いる小牧山城攻略部隊でも同じような台詞が飛んでいた。だが些か事情が違うが・・・


「小牧山城攻略部隊はもう出ます。龍興様救援部隊の編成はもう少しかかるかと!!」


そう言った部下に斉藤飛騨守は詰め寄った。


「ぐずぐずするな。お前達は本当に忠義心がない!!あとで龍興様に報告するからな!!」


「・・・そんなに言うならあなたが先頭で突っ込めばいいじゃないですか」 (小声)


「ああ?なんか言ったか!!」


「いいえなにも」 (あんたが先頭で行かないから兵が付いてこないのに・・・)


飛騨守についている側近の部下達でさえ、ついつい愚痴が零れてしまう。戦はとうに始まっているのに飛騨守はまずは自分の安全を確保した上で行動しようとしている。確かに総大将なら理解できるが、彼はそうではない。自然に部下達はしらけムードになっていくのである。


「飛騨守様、吹雪がひどくなってきました。このままでは八甲田山のようになってしまいます」


違う部下がこう飛騨守に進言した。確かにもはや前が全然見えぬほどに雪が舞っている。猛烈な寒さが身体を冷やす。動かず停滞している人間にとってそれは集中力を奪うだけではなく、生命をも奪いかねない。


「八甲田山は日露戦争の話だろ、時代があってないぞ。だが確かにこれはひどいな」


こう彼が呟いた時、突然鉄砲の銃撃音が響いた。


パーン!!パーン!!


大音量の鉄砲音が響いた後、男達の咆哮が聞こえる。


オオオオオオオオオ!!!!!


「なんだ!!なにがおこった!!仲間割れか」


混乱する斉藤飛騨守の陣。突然の襲撃に人馬は驚き慌てふためいている。ただでさえ混乱しているのにそれに拍車がかかった。


「飛騨守様!!敵襲です!!どうも北畠勢の襲撃と思われます!!」


「そんなバカな!!城から敵兵は出てきてないだろが!!」


「どうも第三軍がいたとしか!!吹雪で敵兵の数はまだつかめません!!」


奇襲を仕掛けるどころか、逆に仕掛けられるとは・・・このままでは壊滅しかねない、斉藤飛騨守は決断に迫られていた。そこへ最悪なタイミングで早馬に乗った使者が来たのである。


「斉藤飛騨守様!!龍興様は既に美濃へ撤退しました!!時間は稼ぐので、貴殿も不破光治らと交流し撤退なされよと日根野弘就様から指令です!!」


「なんだと!!撤退しただと!!」


それはまさに青天の霹靂であった。いや最初から吹雪いているんだけど、比喩なんで・・・さてそれはともかく、これは飛騨守にとってとどめの一撃になった。追い詰められた彼は、もう堪える事が出来なくなっていた・・・


「・・・者ども!!我らも撤退じゃ!!今すぐ美濃へ帰るぞ!!」


「いっ今すぐですか!!不破様を見捨てるのですか!!ってかもう逃げ出さないでくださいよ!!」


攻めるのにはやたら時間かかったのに、逃げるとなったらやたら飛騨守は早かった。そそくさに自らと護衛を連れて戦場から逃げ出す。こうなってはもう支えきれない、部隊はあっというまに崩壊を始める。なにせこの寒い中、指示がハッキリせずウロウロとしていたのであるから、全体の士気は低く、それに総大将斉藤龍興が逃げ出したとなればもうどうにもならない。


「俺達も逃げるぞ!!大将がいないのにやってられるか!!」


斉藤飛騨守四千は結局ろくすっぽ戦うことなく瓦解し、こうして後には、不破光治ら千名の城攻め兵しか残されなかったのである。だが彼はそう簡単には下がらないのである。小牧山城攻略のラストを彩る戦いが始まろうとしていた・・・


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