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小牧山城攻略戦10

だが、そんな淡い考え・・・幻想・・・マスタベ的な考えはすぐに破綻する。


「ぐあああああ!!」


悲鳴を上げ血しぶきをあげながら、足軽がその場に倒れた。そのままもう動くことはなかった。


「なっなんだ・・・ぐぅぅぅぅ敵か!!」


そしてまた別の足軽が倒される。そうそれはまるでドミノ倒しのように続く。次々に斉藤方の足軽は血しぶきをあげる。


「姫様!!ご無事ですか!!おのれ!!雪姫様から離れよ!!」


一人の騎馬武者が瞬く間に斉藤方の足軽達を槍で切り倒した。雪姫の腹心、安濃城城主細野藤光その人である。


「ええい、姫様から離れよ!!」


彼はそのままの勢いで、雪姫と戦っている梅津玄旨斎を槍で突こうとするが、どうしても捉えきれない。


「この男、素早い!!」


「ええい、邪魔が入ったか!!覚えておけ雪姫とやら。首は預けておくぞ!!」


梅津玄旨斎はそう言い放ち、その場から離れた。あっという間に人ごみに紛れる。さすがはそのあたりも手慣れている。


「まっ待て!!まだ決着は・・・ぐっっ」


フラフラと立ち上がった雪姫であったが、力なくその場に崩れた。


「雪姫!!ここは我らにお任せあれ。者ども、姫様を守るぞ!!」


追いついてきた雪姫の部隊が大挙して、この斉藤方の本陣に乗り込んできた。あちこちで鍔迫り合いが起こる。その中を駆け寄ってきた細野藤光が、雪姫を支える。流石に激戦であったのか、彼女の顔色は悪い。


「・・・あの男は強い・・・私もまだまだだな・・・」


「いえいえ雪姫様はよく戦いました。見てくだされ、我らの兵士たちがここまでこれたのも姫様の勇気があってこそ」


雪姫の部隊の兵士たちが、彼女を中心とする車懸かりのような陣形で斉藤勢を追い詰めていく。その勢いたるや、兵数差をひっくり返りほど。




小一時間ほどたったであろうか、その乱戦の中、梅津玄旨斎は巧みに切り抜け、日根野弘就のもとへ帰ってきた。その顔には悔しさが現れていた。


「雪姫という敵将の首取りそこなったわ」


「梅津殿、もうこの戦いは趨勢が見えてきたしたな・・・」


彼らの眼下では激戦が行われているが、どうひいき目に見ても斉藤方が押されている。遂に座っていた日根野弘就がゆっくりと立ち上がり、部下に声をかけた。


「おい、飛騨守と不破光治には早馬を送ったのか」


「はっ、既に送っております」


日根野弘就は大きく息を吐いた。そして遂に重要な決断をする事になる。


「もうこれ以上時間は稼げぬか・・・梅津殿、お味方を引き連れ落ち延び下され」


「お主はどうするのか?」


「誰かがけじめをつけなくては。敵陣に突っ込み果てるのみ」


「そうか・・・」


そう言って梅津玄旨斎は日根野弘就の後ろに回り込むと、イキナリ手刀を日根野弘就の首筋に叩き込んだ。さすかのような痛みと共に、急激に意識が遠くなる。


「・・・なっなにを・・・」


そう日根野弘就は呟くとそのまま気絶して、その場に倒れこんだ。


「お主は斉藤家にとって必要な忠臣じゃ。命は大切にせよ。おい、日根野弘就殿を丁寧に美濃までお送りしろ!!引き上げの法螺貝を!!なんとか切り抜けて美濃へ帰るぞ」


「はっ、撤退します!!しかし無念であります、くっっっうぅぅ何故こんな無様な結果に・・・」


そう言ってその部下は、泣きながら法螺貝を吹いた。撤退を合図するこのメロディーはただ物悲しく、戦場を駆け抜けた・・・



「てっ撤退だ。逃げるぞ!!」


斉藤勢はもう戦意もなく一気に総崩れとなった。もう北畠勢のパワープレイに抵抗する力が残っていない。誰も故郷でもないこの地で死にたがる者がいないのである。このまま北畠勢は押し込むチャンスであったが・・・


「はっ・・・はっ・・・皆さん戻ってきなさい。追い首はいりません、それより戦線を整え、小牧山城に向かいます。まだ敵兵はごまんといます・・・」


「雪姫様!!ここはお身体にさわります。少し休まれては」


「休みは死んだら好きなだけとれます。それより一刻も早く蜂屋を救わなくては」


雪姫は肩で息をしながら、自分の愛馬に乗り込む。その姿は彼女の部下を勇気づける。


「おお!!我らは雪姫様と共に!!」


「いざ!!小牧山城へむかうぞ!!」


こうして斉藤龍興三千を敗走させた雪姫勢は、今度は小牧山城に向かい進軍を開始する。雪姫軍は練度が高いのかそれとも雪姫自体の天賦の才か、部下までの意思疎通が異常に早く、混乱もなくまとまったまま小牧山城に迫ろうとしていた。


残るは、斉藤飛騨守四千と不破光治千・・・

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