小牧山城攻略戦7
「斉藤飛騨守様!!知らせによれば斉藤龍興様の本陣が急襲されているとの事!!」
ここは斉藤飛騨守の陣。今まさに小牧山城の城攻めに取り掛かろうとしている所であった。辺りは雪が降り続き、吹雪の一歩手前。
「ここは手筈通り、龍興様の救援に。さすれば敵の側面をつけましょう」
「・・・」
部下は今すぐにでも向かうという指示が出ると思っていたが、どうした訳かなかなか答えが返ってこない。
「飛騨守様、いかがいたしましたか?」
斉藤飛騨守が小牧山城を見る。吹雪の中、煙があがっているのがわずかに分かった。合戦の音が聞こえてくる。知らせによれば、あと一押しで城が落ちるとの事。
(不破の奴、頑張り過ぎだ。このままでは不破だけで城を落としかねん)
それが懸念材料であった。このまま全軍率いて北畠の援軍を叩くとする。その間に不破が小牧山城を落城させるとなると、手柄が当然そっちにもいく。そりゃそうだ。
となるとこの戦の後、不破の権勢は上がるって行くに違いはなく、もしかすると派閥を持つかもしれない。そして自分の寝首を取られかれない (疑心暗鬼)
(不破に小牧山城落城の手柄を独占されてたまるか!!)
しばし考えた後、飛騨守はこう部下達に切り出した。そしてそれがこの戦いを決める事になる。
「今から兵を二手に割り、一方は小牧山城攻略、もう一方を龍興様救援に差し向ける」
その下知を聞いて部下が慌てた。
「おっ、お待ちください。敵はもう来ています。そんな悠長な・・・」
「うるさい、兎に角急いで部隊を分けよ。俺は龍興様の方に向かう。兵の配分は二千五百あれば良い。残りは小牧山城を落としに行け」
つまりは結局、飛騨守は二兎を追う決断をしたのである。確かに上手くいけば、龍興救援に成功し小牧山城落城の手柄もすべて独占できる。そうなればもはや斉藤家家中において、口を出す者がいないほど権力を持つことになる。作者みたいな優柔不断な人が考えそうな事である。
ただこの四千もの軍勢は龍興から預かった言わば借り物の兵。それを自分の判断で、不破に与えられるはずの兵を抜いたり、尚且つ今頃になって兵を割って別動隊をつくるなどしたらどうなるであろうか。それも短期間で。つまりこうなるのである・・・
「だ・か・ら・お前は城攻めに回れって言われただろ!!」
「俺はそんな指示を受けていない。それはこっちの台詞だ!!」
急に指示が変わった飛騨守の軍勢は大混乱に陥っていた。朝は城攻めと聞いていたのに、突然龍興の救援に向かえだとか部隊を割れろと言われたりと、皆は混乱していた。
足軽達は走り回り、指示を出す侍達も右往左往している。それに加え、そもそも飛騨守の手勢でない寄せ集まりな以上どうしても皆まとまりがない。
たとえば、クラスで文化祭の出し物でカレーを作っていたのに、突然半分の人が昼から焼きそばを作ることになったら、誰が材料とか工面して誰をどのポジションをするのかと決める事をしなければならず、ずぐには焼きそばを食べる事は出来ないであろう。
なに例えが分かりにくいだって?戦訓だとほらミッドウェー海戦でも、空母航空隊の兵装を何度も交換したりしてたりしたら、混乱し時間かかったみたいなの。熟練兵でも命令をすぐには出来ないんですよね。
つまりは四千人を上手く割り振りしてすぐ動けなんて(ヾノ・∀・`)ムリムリ
「お前、このままどさくさに紛れて逃げる気だろう。賭けの負け分払っていけ!!」
「馬鹿野郎!刀とか取られたら戦出来ないだろう!!」
「質に入れたお前が悪い!!」
あーあ、一部の足軽達が喧嘩を始めてしまった。そういう揉め事やら収めるのに時間がドンドンすぎ、その間に雪姫達は斉藤龍興にドンドン近づいていくのであった・・・




