決裂
雪姫の指示を受け、側近の細野藤光が上杉家の使者として派遣された。あれ主人公は存在はどこ……
細野藤光は越後へ向かうにあたり、雪姫に直訴した。
「雪姫様、上杉謙信の真意を探ることは了解いたしました。しかし、北条攻めの際の美少女収集の噂は、信憑性が高いものとして広まっております。もし、謙信が本当に雪姫様を娶ることを考えておられるならば、私は何を申し上げればよろしいでしょうか」
雪姫はきっぱりと答えた。
「細野、私が上杉家に行くことはありません。ただ、上杉家と無益な争いを避けるのが最優先。もし、そのような話が出たならば、『よく家中で話し合って決めたいのでゆっくりとお待ちください(10年ぐらい)』ということを、毅然と伝えてください」
細野は思わず苦笑いを浮かべた。
「雪姫様……変なところがお父上に似てきましたな」
具教は自分の悪口を聞き逃さなかった。
「おい細野、それどういう意味だ!」
「いえ殿、お気になさらず」
細野は言葉を濁し、深く頭を下げ、越後の春日山城へと向かったのであった。
さてここは越後の国、上杉家の本拠地春日山城。展開が早いですがまあお許しを……
細野藤光は上杉謙信を面会をしていたのだが、かなり複雑な心境であった。
まず着くまでの道中、春日山城に向かう街道はよく整備され上杉家が飛騨侵攻の準備をしているという噂でもちきりであった。
(もはや侵攻は避けきれないか……しかしそれにしてもなんだこの女は……)
細野藤光の上座に座る上杉謙信という女……黒く艶がある長髪に整のとれた身体、そしてぞっとするほど透き通った肌。確かに美しい女であるのだが言ってる内容が酷い。それに周りにはアイドルグループのステージ衣装のような薄着の女達を従えている。なんだこれは。
「だからさーお宅の雪姫ちゃんを私に頂戴よ」
謙信はまるで玩具でも求めるかのように言った。
細野は雪姫に言われた通り、時間稼ぎを図った。
「ですがいきなりの話、すぐには決めれませぬ。兎も角お時間をいただけますか」
謙信の言ってる事は滅茶苦茶である。ボールペン貸してくれみたいに言われても困るのだが、しかし上杉家中は何故何も言わずこの奇行を許容しているのか?
「……謙信様は当家の雪姫をいかがいたす所存でございますか?」
細野は意を決して尋ねた。
謙信は悪びれる様子もなく、むしろ楽しそうに言った。
「そんなの私のハーレムに入れて毎日イチャイチャするためよ。美少女は正義!」
細野は顔を引きつらせた。
「それは正気で言っておられるますか?」
「もちのロンよ」
(ぐぬぬ、これはもう我慢できない。雪姫様をただのコレクション対象にされて黙っていられるか)
「……そのような武将にあるまじき戯言付き合いきれませんな」
細野の怒りを含んだ言葉に、謙信はぴしゃりと手を打った。
「なら戦場にて決着つけるしかないかしら。はいお話は終わりね。これからこの娘達とイチャイチャするから男どもは出て行ってね」
こうして外交交渉は決裂。細野藤光は怒りながら春日山城を後にしたのであった。
……
………
「……という事になりました。ご迷惑をおかけし申し訳ありません。しかしながら上杉謙信の頭のネジは完全に外れております」
舞台は再び稲葉山城。急いで戻ってきた細野藤光は北畠家中に皆に頭を下げていた。
「細野殿、これは致し方無い。こんな事言われては我らとて我慢できないだろう」
北畠家中は落ち込んでいた。また戦になると……
北畠具教は細野を励まそうとした。
「まあまあ細野藤光、そんなに落ち込むな。まだすぐにでも戦になるとは限らぬじゃないか」
「殿、そんなフラグみたいな事を言うと碌なことにならないかと……」
北畠具教がそんな発言をした時、稲葉山城に早馬が到着。火急の伝令が飛び込んできた。
「一大事! 上杉謙信、そして姉小路頼綱連合軍およそ1万5千、飛騨に侵攻しつつあり! 姉小路良頼殿は松倉城に立て籠もり、徹底抗戦の構え! 我が北畠家に援軍を要請しております!」
具教は天を仰いだ。
「なんで言った傍からこんな事に……しかしあのめんどくさいおじさん見殺しできないし、どうせこっちに攻めてくるなら迎え撃たないと」
北畠具教はまたしても戦いに巻き込まれる(望んでもいないのだが)のであった……




