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令嬢ではあるけれど、悪役でもなくヒロインでもない、モブなTSお嬢様のスローライフストーリー(建前)  作者: タカハシあん
第2章

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90 先見の魔女

 知能が向上してもキャラメルはまだ子供。起きているときはあっちにこっちに動き回り、疲れたら電池が切れたように動かず眠った。


 見ていて飽きないわね。


 部屋は防御強化の付与を施しているのでキャラメルの爪では傷はつかないし、椅子の脚に噛みついたところで折れたりはしない。好きなようにさせてはいるけど、わたしの脚に噛みついたら首根っこをつかんで床に押しつけた。上下関係は大切だからね。


 そんなことを繰り返していればキャラメルも学んでいき、わたしには噛みつくことはなく、壁や長椅子をガリガリさせなくなった。


 犬とは違い忠誠心はないけど、上下関係は犬より強い感じがする。


「キャラメル。待て」


 わたしの命令を聞くようになり、待てと伏せは完璧だ。よしよしいい子よ。


 ガツガツ食べるキャラメルを眺めていると、ラティアがやってきてマゴットがきたことを告げた。


 随分と間が空いたこと。なにかあったのかしら? と思ったら牛を二十頭連れてきたから遅くなったようだ。


「二十頭なんてがんばったわね」


「牛を飼っている家が悪徳なところで借金を抱えてな、引っ越すのを条件に支払ってやったのさ」


「そこで飼っていた牛ごと引っ越してきたわけか。メチャクチャなことするわね」


「チェレミー様を見習ったまでさ」


 わたし、いつそんなことしたのよ? まったく記憶にないのだけれど。


「その家の者でマイクとジェーン、あとは家族だ」


 二人は四十歳くらいの男女で、その両親、兄弟夫婦、その子供たちと、総勢十八人。わたし、そんな思い切ったこと……するか。お金で解決できるなら……。


「マゴットから聞いているでしょうけど、この館の主、チェレミー・カルディムよ。あなたたちはわたしが預かる。元気な牛を産み育ててちょうだい。期待しているわ」


 小屋と牛舎は造ってあるので、兵士に案内させた。


「生活に必要なものは持ってきた?」


「ああ、持ってきたから大丈夫だ。給金はチェレミー様に任せるよ」


「わかったわ。請求はマクライに言ってちょうだい」


 さすがに大金になるだろうからマクライに任せるわ。


「他になにを買ったの?」


 馬車が二十台とか大隊商じゃない。移動だけでかなりの費用がかかったんじゃないの?  


「籾殻のついた米だよ。安かったからあるだけ買ってきた」


「とんでもない量が運ばれてきたわね」


 こちらの食糧を狙ってきてる割りには米を流してくるわね? どういうことかしら?


「ああ。それで会わせたい人がいる」


 マゴットが振り返った先に白髪の男性がいた。


 年齢は四十半ばくらいで、右目を眼帯で隠している。雰囲気から商人ってより武人って感じね。


「どなたかしら?」


「帝国のブレン提督だ」


 提督? 提督って、艦隊を指揮する人ってこと? そんな大物がなぜきたのよ?


「帝国も一枚岩、ってことじゃないのかしら?」


 とりあえず、思いついたことを口にしてみた。


「さすが先見の魔女だ」


 はぁ? 先見? 魔女? それ、わたしのこと?


「とても十六歳の乙女につけられるあだ名ではないわね」


 どこのどいつよ? 人を魔女とか言うアホは? もっと愛らしいあだ名をつけて欲しいものだわ。ぷんぷん!


「すまない。チェレミー様を言い表す言葉がそれしか思いつかなくて」


 お前かーい! 敵は身近にいやがったよ!


「せめて先見の乙女くらいにしなさいよ。魔女なんて広まったら退治されちゃうじゃないのよ」


「いや、三十過ぎても乙女と呼ばれるほうが辛いだろう」


 前世で童貞のまま死んだわたしをナメるな。八十過ぎてもわたしは乙女でいるわ!


「……まあ、なんでもいいわ。話は中で聞きましょう。ローラ。お客様に部屋を用意してあげて」


 もう午後の三時は過ぎている。話は夕食が終わってからでいいでしょう。その前にマゴットから状況説明を受けるとしましょうか。


「馬車は広場に移動させなさい。まだ造りかけだけど、宿泊施設を用意したから」


 こんなに増えるとは予想できなかったけど、炊事場や井戸はある。今の気温なら凍死はしないでしょうよ。


「お風呂に入ったら部屋にきなさい」


 あなたちょっと臭いわよ。毎日体は拭きなさいよね。


 部屋に戻り、キャラメルの爪を削りながら待った。


「ゴーギャンを飼うとか益々魔女っぽいぞ」


 この世界の魔女はゴーギャンを連れて歩くの? 猫がいるんだから猫を連れて歩きなさいよね。


「ちょっとした実験よ」


「触っても大丈夫か?」


「キャラメル。マゴットはわたしの友人だから噛んだりしちゃダメよ」


「キュー」


 この声、どこから出しているのかしらね? 可愛いからいいけどさ。

 

 なんの躊躇いもなくキャラメルに触るマゴット。あなたって結構怖いもの知らずよね。


「気持ちいいな。野生のはゴワゴワしている感じだが」


「毎日お風呂に入れているからね」


 犬だと油分を洗い流して病気になると聞くけど、そこはわたしの付与魔法でなんとでもなる。わたし、臭いのは我慢ならないのよ。


「あら。マゴットには懐くみたいね」


 アマリアやコノハだと逃げちゃうのよね。なにが違うのかしら?


「なかなか可愛いじゃないか。おーよしよしよし」


 ムツゴロウさんか。


 まあ、人に慣れるなら歓迎だ。夜まで時間もあるし、マゴットに馴染ませましょうかね。

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― 新着の感想 ―
某くまク○熊ベアーなゆるとかきゅうとか(笑)
[一言] >「なかなか可愛いじゃないか。おーよしよしよし」 >ムツゴロウさんか。  …………つい最近(´;ω;`)ウッ…  ご冥福をお祈り致します。
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