82 別ルート
いいおっぱいぱいでした。ごっつあんです。
これで一年は戦える。なにと戦うかはそれぞれの妄想に任せます。
「姉様、カエラに剣を教わっていいですか?」
昨日の桃源郷を思い浮かべながらウォーキングをしてたら、ナジェスがそんなことを言ってきた。ナジェス、剣に興味なんてあったんだ。
「うーん。ルーアと相談してみないとわからないわね」
日々の訓練も騎士にとって大切な日課だし、人に教えるのも技術がいるはず。わたしが勝手に決められないわ。
「でも、なぜカエラなの?」
ナジェスの好みってことか?
「カエラが一番剣が上手いです!」
へー。そうなんだ。知らなかったわ。
ウォーキングから帰ってきたらルーアと相談したら構わないとのことだった。
「本格的に教えるわけではありません。手合わせていどなら問題ありません」
「調整してナジェスに教えてやってちょうだい」
「畏まりました」
丸投げみたいで申し訳ないけど、わたしは朝のウォーキング以外館の中にいるほうが多い。調整するのはそう難しくないでしょうよ。
いつものように魔力を籠めようとしたら、ラーダニア様が壺を持って部屋にやってきた。あなたも壺好きになったの?
「保湿水ができました」
「もうですか?」
そんなに早くできるものなの? もっとこう抽出とかに時間がかかるとかあるんじゃないの?
「はい。魔法で短縮させました」
短縮できるんだ。ラーダニア様、ドジっ子なのに優秀よね。
壺を受け取り、現状維持の付与を施した。劣化したら困るからね。
「これは直接顔につけていいんですか?」
「はい。顔や手につけてもらって問題ありません」
ラーダニア様が手本を見せてくれ、アマリアにやってもらった。わたし、火傷があるのでね。
「どう?」
「なんだかしっとりした感じがします」
これと言った反応や変化はない。いや、保湿水なんだから反応も変化もあるわけないか。
「乾いたな~と思ったらまたつけてください」
「しばらく様子を見ないとわからないか」
こういうのは継続しないとわからないものだしね。
「そうですね。たまに肌に合わないという方もおりますから、変だなと思ったらすぐに止めてください」
「アマリア。悪いけど、しばらく試してちょうだいね」
「畏まりました」
なにやら口角が上がっている。他所からはわからないけど、つけた本人には効果がわかるみたいね。わたしも寝る前につけてみましょうっと。
錬金壺で五十ミリくらい入る小瓶をたくさん創り出し、保湿水を入れた。
他のメイドにも試してもらって検証しましょう。使えるならまたラーダニア様に作ってもらってお母様に贈ってあげましょう。お母様、乾燥肌だったしね。
二日くらい保湿水を使ってもらったら、乾燥肌なメイドが追加を要求してきた。
「乾燥肌が治るということはないみたいね」
肌の水分を保つ、ってだけのものらしいわね。これなら魔法に反応することもなさそうだわ。
わたしは乾燥肌ではないけど、寝る前にラグラナに全身に塗ってもらった。もちろん、火傷を剥がしてね。
「……無駄に精巧な火傷ですよね……」
「そう? 適当に創ったんだけどね」
火傷なんて映画で観たくらい。それを元にあとはイメージで創ったのよ。
「アマリアがニヤけたのもわかるわ。これはしっとりして潤っている~って感じるわ」
「はい。わたしも朝晩と使っています」
「あなたは使わなくても肌が綺麗じゃない」
三十歳は越えているのに肌は十代。若い子のエキスを吸ってるんじゃないでしょうね?
「ありがとうございます。ですが、年齢には勝てません。最近は水が弾かなくなりました」
「わたしにはその差がわからないわ」
まあ、おっぱいに全集中なのでそこまで見てなかったんだけどね。
「十代の肌が羨ましいです」
そうね。すぐに消えた枕の跡も年齢とともに長く残るようになったっけ。ラグラナの気持ち、よくわかるわ~。
「ラーダニア様にまた保湿水を作ってもらわないとね」
「はい。使う量が増えているので多く作ってもらいたいです」
ラグラナまで保湿水の虜になっているわね。これは、わたしが考えるより大変なものを作ってもらっちゃった感じね。錬金壺でも創っておいたほうがいいかもしれないわね。
まあ、製造販売はゴズメ王国に任せるけど、館で使う分には創っておいて構わないでしょう。
ラーダニア様にお願いしたら快く受け入れてくれ、壺五つ分も作ってくれた。しかも一日で。このエロフ、どんだけなのよ……。
「小瓶も増産しないといけないわね」
なんだかまた仕事を増やしてしまった感があるけど、これはラーダニア様が作ったもの。できない言い訳は立つ。注文殺到したらゴズメ王国に放り投げちゃいましょうっと。
お母様や叔母様に送る分を纏めていると、どこで聞きつけたのかロイヤードがやってきた。
「お妃様が保湿水を送って欲しいとのことです」
ラグラナから伝わったわけではなく、別ルートから伝わった感じっぽいわね。メイドの中にアマデア商会と繋がる者がいるのかしら?
まあ、二重三重と情報網を持つのは定石だけど、ラグラナの知らない存在がいるようね。王宮って怖いわー。
「保湿水はわたしの管轄外。必要なときはゴズメ王国に頼りなさい。わたしに求められても応えられないわ」
しっかりと釘を打っておく。ラーダニア様に報告させたわたしグッジョブ!
「はい。しかと伝えておきます」
「そうしてちょうだい」
保湿水が入った壺を一つ渡し、ロイヤードを下がらせた。




