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令嬢ではあるけれど、悪役でもなくヒロインでもない、モブなTSお嬢様のスローライフストーリー(建前)  作者: タカハシあん
第2章

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80 保湿水

 叔父様の視察は終わり、レアナを連れて城に帰っていった。


 ハァー。疲れたぁ~。


 別にやましいことはしてないし、隠すこともないのだけれど、視察と言う名の監査を受けた気分だわ。


「姉様!」


 そうだった。レアナは帰ったけど、その代わりにナジェスが残ったんだったわね……。


「ごめんなさいね。まだやることがあるからマーグ兄様にモルチャカの乗り方を教わっていて。ナジェス用の騎乗服を作ってあるから」


 マーグ兄様に視線を向けた。従弟の面倒をよろしくお願いしますとね。


「ナジェス。モルチャカは馬以上におもしろいぞ。今、モルチャカの卵を孵化させている。孵ればナジェスに与えるそうだ。一人で乗れるようになったら皆で遠出するぞ」


 レオとラナの他にも卵はあったけど、すべてを孵しても育てられないので箱に時間停止の付与を施して眠らせておいたのよ。


「ええ。皆で遠出しましょう」


 レアナと同様一月は預かることになっている。半月もあればナジェスなら乗れるくらいに育つでしょうよ。


「はい、わかりました!」


 素直でよろしい。あとはマーグ兄様に任せて部屋に戻った。


「申し訳ありませんラーダニア様。やりましょうか」


 午前中は基本、魔力籠め作業だ。いついかなるときに魔力が必要となるかわからない。コノメノウ様がいようと集められる限りの魔力は集めるのよ。こんなこともあろうかは日々の備えが重要なんだからね。


 アマリアも混ざり、三人で壺に魔力を籠めた。


「──このくらいで止めておきましょうか」


 午後もあるのだから半分で止めておく。


 特級のアマリアは半分を籠めても余力はあり、すぐに部屋を出ていって、厨房からお菓子とお茶を持って戻ってきた。


「今日のお菓子はコロンの砂糖煮です」


 元の世界で言えばマロングラッセね。まあ、それほど甘くないので砂糖で甘くしている感じね。


「美味しいです!」


 このエロフさんも食べることが大好きで、館で出すお菓子に魅了されてしまったみたい。子供のように喜んでいるわ。


「あまり食べすぎると太るのでほどほどに、ですよ」


「はい。午後から薬草探しに出て動いて参ります」


 なんのマッチポンプかしら? まあ、薬草を集めて薬を作ってくれるから、こちらとしてはありがたいけどね。


「冬の時期にも採取できる植物があるんですね」


「はい。ただ、そう難病に効くと言うものはありませんけどね。よくある腹痛に効くものや傷口を塞ぐもの、あと、肌を潤ませるものくらいです」


 ん? 肌を潤ませるもの?


「肌を潤ませるものも薬なのですか?」


「薬と言うよりは乾燥から肌を守るものですね」


 いや、確かにそうだけど、そんな重要なものが近くにあることにびっくりだわ。


「それは簡単に作れるものなのですか?」


「はい。浄化した水にココノカと言う葉を四日から五日ほど浸して、軽く煮れば完成です。あとは瓶に入れておけば十日くらいは持ちます」


「それ、作ってもらってよろしいですか? お金はお支払しますので」


「簡単なものですからお金なんていりませんよ。それ以上のものをいただいているのですから」


「いえ。ちゃんとお支払します。肌を潤ませるものは女性にとって必要なものです。効果によっては万金を生むかもしれませんから」


「そう、なのですか?」


 エルフとしての種からか、持ち前の美肌からか、あまりピンときてない感じね。


「人間の肌は手入れをしなければすぐに劣化します。その肌を潤ませるもの、保湿水が人間の肌にも合えば貴族の女性に、いえ、世の女性から求められるでしょう。それはゴズメ王国の利となります。それを奪ったら国家間の問題になります」


 エルフの秘法を奪ったとか言われたくないし、問題の渦中にも立ちたくない。正当な手順で、正当な報酬を払っておくことが問題回避に繋がるのよ。


「は、はぁ、そうなのですか……」


「このことを国に報告すればわかります」


 ラーダニア様は薬草や魔法には長けているみたいだけど、実務や政治にはあまり頭が働かせることはできないみたいね。


「わ、わかりました。報告してみます」


「手紙はありますか? ないのなら用意しますよ」


「いえ、大丈夫です。精霊を飛ばしますので」


 一人で行動できている理由がそれか。と言うか、そんなこと言っちゃって大丈夫なのかしら? ゴズメ王国までかなりの距離があるよね?


「では、わたしがよろしくと言っていたこともお伝えください」


 それで薬医局がゴズメ王国でどの位置にいるかわかるはずだわ。


「わかりました。お伝えします」


 この方は、諜報員としては失格ね。本当に薬の素材を集める専門なのね……。


「お嬢様。少しよろしいでしょうか?」


 ドアがノックされ、モリエが部屋に入ってきた。


「構わないわよ」


 ハァー。将来のんびりするために今は忙しく働くしかない。世の中は矛盾に溢れているわよね。


 長椅子から机についてモリエの話を聞く。


「ターリャを正式にメイドにしてもらえないでしょうか? わたしの補助として使いたいと思います」


「そこまで成長したの?」


 まだ一月でしょう。なんかスイッチが入って覚醒しちゃった?


「はい。このまま教育すればお嬢様の役に立つと思います」


 体験学習と箔をつけさせるためのものだったんだけど、優秀と言うならいただいておきますか。


「わかったわ。孤児院にはわたしから手紙を出しておきます。ターリャは了承しているの?」


「はい。ここでずっと働きたいと申してました」


「そう。なら、見習いとして給金を出さないといけないわね。マクライとローラにも言ってどうするか決めてちょうだい」


「畏まりました。こちらで進めておきます」


「ええ、よろしく」


 モリエが下がったら椅子を倒して昼まで眠ることにした。疲れた……。

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