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令嬢ではあるけれど、悪役でもなくヒロインでもない、モブなTSお嬢様のスローライフストーリー(建前)  作者: タカハシあん
第2章

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73 ドナドナ

 夕食が終わればマゴットとロンドを部屋に呼んで本格的な話をする。


 最後に残していたブランデーを出してやり、今回持ってきてくれた目録を見せてもらった。


「これがあの味気ないブランデーなのか?」


「美味しいのはチェレミー様の魔法だよ。熟成の付与を樽にかけて時間を進ませたんだよ」


「……魔法はそんなこともできるのか……」


 どうやらロンドも熟成したブランデーの美味しさがわかったようで、マジマジとグラスに入ったブランデーを眺めていた。


「わたしは炭酸で割るのが好きだね。あのシュワシュワがいい」


「たんさん? なんだそれは?」


「アマリア。炭酸を出してあげて」


 控えていたアマリアに棚から炭酸壺を出してもらった。あとは、マゴットが知っているのでお任せよ。


 フムフム。ん? 牛? 牛二匹? 牛なんてものまで運んできたの? よく運んでこれたわね。ドナドナか?


 まあ、牛か。乳牛にするにせよ食用にするにせよ、まずは増やさないとダメね。てか、牛って生後何ヶ月で出産させていいものなの? その辺、まったく知らないや。


「美味い。炭酸で割ると飲みやすくなるんだな。おれもこれが好きだ」


「でしょう? そのままもいいけど、炭酸で割ると食事にも合うんだよ」


「これは、魔法を使わず普通に熟成させれば美味くなるということか?」


「最低でも四年は寝かせる必要があるそうだ。これは十年くらい熟成させたものらしいよ」


「そんなに時が必要なのか……」


「お酒作りは一朝一夕にはいかないからね」


 まあ、一朝でやっちゃってるわたしが言えた義理はないけど。


「ところで、この牛二匹ってなに牛なの?」


「なに牛とは? 種か?」


 ん? 乳牛とか食用とかないの? 牛、一括りになっているの?


「どこ産地でなんのために産み落とされたものなの?」


「農作業をするための牛だが?」


 農耕牛かい。乳牛や食用とかじゃないんだ。ん? そう言えば、牛肉なんて食べたいことないわね。猪、鹿、鶏、熊の肉だけだわ。いや、結構食べてるか。どれも美味しく料理されてるから気がつかなかったわ。


「牛って手に入れるのって大変なのかしら?」


「いや、運んでくるのが大変なだけで手に入れるのは簡単だよ。子牛なら四匹ずつ馬車に積めるからね。今回は試しで運んできた」


「じゃあ、次も牛を運んできてちょうだい。飼育できる人も。二十頭は飼いたいわ」


「二十頭も? どうするんだい、そんなに?」


「まずは乳牛にして、乳を搾る。二、三頭は食用として育てるわ」


「乳はわかるが、牛を食うってのかい!?」


「食べるわ。大切に育てた牛は美味しいからね」


 前世じゃ輸入牛しか食べれなかったけど、ここなら和牛に匹敵する牛に育てられるわ。ビールとか飲ませたらいいんだっけ? あ、クラッシックを聴かせたらいいんだったかしら? 


「おじさんは知ってるかい?」


「どこでだかは忘れたが、食べる地方があるとは聞いたことがあるな。だが、年老いた牛だから固くて長時間煮込まないとダメらしい」


 まったく食べないってことはないのね。なら、異端とかは思われないわね。


「まあ、ブランデーと同じで一朝一夕にはいかないけど、そう急ぐこともない。三、四年は育成に時間をかけたらいいわ」


 今すぐ食べたいわけじゃないしね。まずは乳牛を育てることにしましょうか。


「わかった。次回は牛を集めてくるよ」


「お願いするわ」


 一匹なら食べてもいいかしら? 子牛なら肉が柔らかそうだし、試しに食べてみるのもいいかもね。カレーがあるんだし、カツカレーが食べたいわ。


「チェレミー様。魔法だと熟成はすぐなんですか?」


「んーそうね。一日一年とみればいいかしら?」


 十日過ぎたら消えるようにしているわ。長く熟成させたらいいってものでもないしね。


「そんなに早くできるんですね……」


「欲しいならわけてあげてもいいわよ。今のところ五樽もあれば充分だからね」


 館に一樽あれば事足りる。残り四樽をわけたら充分足りるでしょうよ。


「ありがとうございます。この礼は必ずお返しします」


「期待しておくわ」


 今は特に欲しいものはないしね。貸しとしておきましょう。


「ロンドはいつまでここにいられるの?」


「五日は予定しております」


「なら、アマデア商会の者に会わせるわ。食事会でもしましょうか」


 ラデガルの奥様もきたみたいだし、食事会でもてなすとしましょうか。


「それはありがたいことです。遠慮なく参加させていただきます」


「別に正装する必要はないから。もっと楽な格好でもいいわよ。内々の食事会なんだからね。あ、食べられないものがあったら伝えておいてちょうだい。アマリア、お願いね」


「畏まりました」


 それはあとにして、目録で気になったことを尋ね、ロンドやマゴットが酔ってきたので今日はお開きにする。


 二人が下がったら呼び鈴を鳴らした。


「お呼びでしょうか?」


 やってきたのはラティアだった。


「レアナとマーグ兄様は?」


「レアナ様はお休みになりました。マーグ様は詰所でジェドに興じてます」


「そう。お風呂に入るわ」


 わたしも今日は寝るとしますか。肩も凝ったしね。


「はい。すぐに用意致します」


 今日のお風呂当番は誰かしらと考えながら用意が整うまで紅茶を飲んでのんびり待った。

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