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令嬢ではあるけれど、悪役でもなくヒロインでもない、モブなTSお嬢様のスローライフストーリー(建前)  作者: タカハシあん
第2章

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71 おじさん

 そう言えば、新年が過ぎてたわね。


 王都ならなんらかしらのイベントがあるのだけど、田舎じゃちょっといいものを食べるくらい。うちはいつもいいもの食べているから気づかなかった。


 じゃあ、なぜ気づいたかというと、王宮からコノメノウ様のお世話代が届いたからだ。


「なにか特別なことしなくちゃダメだったのかしら?」


 コノメノウ様に新年どうします? って尋ねたら適当でよいと言われたからいつものように済ませてしまったのよね。


「金貨二百枚って、極々一般的な伯爵家になにをやれって言うのかしら?」


 元の世界にしたら二億よ? 地方都市で大きなイベントを開けるだけの値段じゃない。この世界なら国家レベルのイベントを開けるほどよ。田舎で金貨二百枚なんて使いどころもないわよ。


「コノメノウ様。王宮から大金が届いたのですがどうしましょう?」


 すっかりかまくらが気に入ったコノメノウ様。もう十日近くここに住み着いているのよね。まったく、どんだけなのかしら。


「そちらで適当に処理しておけ。わしが許す」


 なにを言っても無駄そうだからありがたく処理させていただきます。返しても無礼でしょうからね。


「マクライ。カルディム領に両替商っていたかしら?」


 こんな田舎じゃ金貨なんて使えない。大中小の銅貨と言った少額貨幣だ。金貨をもらっても迷惑でしかないのよね。


「大きい店ではありませんが、何件かはあります」 


「では、両替しておいてちょうだい」


 金貨が入った箱をマクライに渡す。財産管理はマクライの仕事だからね。


「畏まりました」


 あとは任せてお父様に送る指輪ライターを創ることにした。


 未だに衰えることのない指輪ライターフィーバー。ほんと、タバコを吸う人多すぎ。自ら寿命を縮めるとか酔狂よね。


 ……それに加担しているわたしが言えたことじゃないけどね……。


「お嬢様。マゴット様がいらっしゃいました」


 そろそろお昼かしらと考えていたらラティアがやってきてマゴットがきたことを告げた。


「なにかあったのかしら?」


 冬は商人も家に籠ってしまう。


 隊商も暖かい地に向かい、地方を回ることはなくなる。まったくないこともないでしょうけど、あったとしても行商人が動くくらいでしょう。もう隊商レベルになったマゴットも冬は動かないと言っていたのだけどね。


「お客様をお連れです」


 客? 誰かしら?


「まずはマゴットだけ通して。お客様は別館に。護衛騎士をコノメノウ様に当ててちょうだい」


 マゴットたちはコノメノウ様がいることを知らない。なにか失礼する前に護衛騎士を立たせましょう。


「あ、マクライにお客様の対応をさせて。コノメノウ様がいることを話して漏らさないことを厳命しなさい」


 人の口に戸は立てられないけど、だからといってなにもしないのは違う。外野に文句は言われないていどのことはしなくちゃね。


「チェレミー様。お久しぶりです」


 なにか雑さが消えたマゴット。どうしたのかしら?


「どこかで去勢でもされたの?」


「去勢されるものはないよ。注意を受けただけさ。貴族と付き合うなら礼儀を学べってね」


「フフ。いい友人を持ったわね」


「おじだよ。バーニア商会の現当主だ」


「おじ? マゴット、あなたっていいところのお嬢さんだったの?」


 出身地や経歴は訊かなかったけど、そう言えばマゴットを紹介してもらったのってカルディム領でも一番の商会の伝手だったわね。


「いいところではあるが、お嬢さんとしては育ってないよ。わたしは妾の子だからね。おじについて商売を学んだのさ」


 なるほど。女性の行商人とか珍しいと思ったらそういう理由があったからなのね。


「じゃあ、今日きたのはそのおじさんってこと?」


「ああ。チェレミー様の話をしたらここに店を構えたいそうだ」


「それは嬉しいわね。まだ一つの商会しかきてくれてないのよね」


「もうきた商会があるのかい?」


「ええ。アマデア商会って知っている? 会長さんが春までいるそうだから挨拶にいってみなさい」


「知らない商会だが、真っ先にきたということは、なにかある商会なのかい?」


「知らないほうがいいわ」


 知ったところでどうにもできない。表向きの付き合いをするのが正しい選択だと思うわ。


「……わかった。知らないでおくよ」


「それと、重要人物を預かっているから他言無用でいなさい。命が惜しいならね」


「この短期間でなにがあったんだい? なんかヤバいことに首突っ込んでんじゃないだろうね?」


「不安なら離れてもいいわよ」


 さすがに王宮と関わらせるのは酷でしょうからね。


「いや、チェレミー様なら安心しかないから離れないよ。わたしはもっと上にいきたいからね」


 野望があってなにより。望むものを手に入れるまでがんばりなさい。


「今日きたのはおじさんだけ?」


「ああ。見極めにきた」


 しがない伯爵の令嬢だもんね。姪に言われたからって一枚噛むなんてできないか。


「ふふ。それは緊張しちゃうわね」


「おじのほうが緊張しているよ。帝国の話をしたら恐ろしいとか呟いていたからな」


 話を聞いて理解できるそのおじさんのほうが恐ろしいと思うけどね。


「まずはゆっくりして、夜に会いましょうか。おじさんにもお風呂を使ってもらいなさい。もちろん、あなたもね」


 一緒に入って久しぶりのおっぱいを眺めたいところだけど、夜のために片付けておかないことが多々ある。ゆっくりお話しするためにもさっさと片付けましょう。

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