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令嬢ではあるけれど、悪役でもなくヒロインでもない、モブなTSお嬢様のスローライフストーリー(建前)  作者: タカハシあん
第1章

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50 お任せよ

「コノメノウ様、よろしいでしょうか?」


 部屋のドアをノックし、コノメノウ様に声をかけた。


「ああ、構わぬぞ」


 すぐに返事がしてドアが開き、亜麻色の尻尾がニョロンと出てきた。


 初めてのときは驚いたけど、なんとも便利な伸縮自在な尻尾よね。わたしも欲しくなっちゃうわ。


 部屋に入るとお酒の臭いで充満していた。


 今回で三度目(三日目とも言う)だけど、相も変わらずお酒を飲んでいる守護聖獣様。何百年も生きていると、肝臓が丈夫になるのかしらね? 長生きはしたくないけど、丈夫な肝臓は欲しいものだわ。


「どうかしたか?」


「いえ。あまり放置してもなんですので、様子見です」


 メイドは食事を運んでいるけど、わたしは一日一回。思い出したときにきているわ。酷い預かり主でごめんなさい!


「アハハ! そんなふざけたことを言った者は何百年振りか。そなたは怖いもの知らずよのぉ」


「失礼致しました」


 一度死んだからか、あまり恐怖心ってものが薄くなってしまったのよね、コノメノウ様の強大な魔力を前にしてもスゴ~いってくらいにしか感じないわ。


「構わぬ。一人で寂しいと言うほど幼くはない。どちらかと言えば一人でいるほうが楽でよい。誰に咎められることなく酒が飲めるからのぉ」


「それはようございます。ですが、さすがに湯浴みをしてはいかがでしょうか? もう三日も着替えてはおらないとか。湯浴みもさせず着替えもさせないのではわたしの命にも関わりありますので」


 三日も放置したお前が言うな、だけど、さすがに三日は放置しすぎでしょう。これが国王陛下に知られたら怒られるだけでは済まないわ。


「フフ。そなたはおもしろいな」


 おもしろい? わたしが? なにか変なことしたかしら?


「伯爵の娘はそんなこと言ったりせぬ。まるで百年は生きた老獪なババアかジジイが言うセリフじゃ」


 わたし、前世を含めても五十年も生きてませんけど。てか、百年は生きたババアかジジイがいるんだ。長生きする人っているのね。健康の秘訣があるなら聞いてみたいものだわ。


「残念ながら十五年しか生きてない小娘のセリフです。まあ、自分が他の令嬢と違うことは理解しておりますが」


 さすがにわたしは普通の伯爵令嬢です! とは言えないわ。


「それで、湯浴みをなさってはいかがでしょうか?」


 と言うか、湯浴みする存在なのかしら? もしかして、自分で舐めて毛繕いするとかですか? 幼女が自分の尻尾を舐めるとかなんかエロいわね! それはちょっと見てみたいかも!


「わしはあまり湯浴みはすかん」


「臭いと嫌われますよ」


 ロリが臭いのはまだ許されるでしょうけど、ロリババアが臭いのは許されない。年齢を重ねたんだから身綺麗にしなさいよ、だ。


「そなたははっきり言うのぉ」


「はっきり言わないと伝わらないこともありますので」


 わたしの館でロリババア臭を漂わせないで欲しいわ。おっぱい臭ならどんとこい、だけどね!


「湯に浸かりながら冷酒と言うのもよいものですよ」


「れいしゅ?」


「冷たくした清酒のことです。火照った体によく効くそうですよ」


「よくわからぬが、なにかとてつもなくそそられるのぉ……」


「一度試されてはどうでしょうか? わたしも付き合わせていただきますので」


 ちょっとお尻からどんな風に尻尾が生えているか見てみたいわ。


「うむ。よかろう」


「では、すぐに用意致します。少々お待ちください」


 一礼して部屋を出てラグラナを呼んだ。


「コノメノウ様がお風呂に入るわ。すぐに用意を。わたしも一緒に入るからラグラナも入ってちょうだい。さすがにわたし一人では対応できないから」


 自分の体を洗うくらいならできるけど、上位の体を洗うとか無理。ナジェスやレアナなんて適当に洗ったし。


「畏まりました。お任せください」


 なにかいつも以上に力が入っているようなラグラナ。守護聖獣様でも信仰しているのかしら?


 守護聖獣は信仰の対象ではないけど、一定以上の者は守護聖獣を信仰してたりする。どこにいるかわからない神を信仰する教会も現実にいる守護聖獣様に下手なことはできない。なかなかいいバランスを取っているらしいわ。


 まあ、この国には信仰の自由がある(驚いたことにね)。主人とは言え、信仰を変えるようなことは許されない。好きにやって、だ。


 わたしも用意があるので部屋に戻り、こんなこともあろうかと用意していた冷酒の壺とお猪口、桶、あと、ツマミとして干し肉を皿に乗せた。


 呼び鈴を鳴らしてメイドを呼ぶ。


「マーナ。これをお風呂に運んで。あと、コノメノウ様の着替えとわたしのものも用意しててね」


 そうお願いしてコノメノウ様のところに。まだ飲んでいるところを止めさせてお風呂場に連れていった。


 脱衣場にはラグラナとランがいて、コノメノウ様の服を脱がした。わたしのはランが脱がしてくれました。


 わたしの目はコノメノウ様のお尻に。モワッとした尻尾だったのに、服を脱がしたら一本に纏まっていた。どういった仕組みかしら?


「コノメノウ様。今さらですが、尻尾を濡らしても大丈夫でしょうか?」


「ん? 別に構わぬぞ」


 小さいお尻をフリフリさせるコノメノウ様。あら可愛い。


「ラグラナ。コノメノウ様の前を洗ってあげてちょうだい。わたしは尻尾を洗いますから」


 前はラグラナに任せてわたしは尻尾を洗う。前世ではゴールデンレトリバーを飼って、よく洗っていた。尻尾ならお任せよ。


「うむ。城の者より上手いではないか」


「ありがとうございます。お風呂が気に入っていただけたのなら次回もやらせていただきます」


 尻尾ならお任せください。湯上がりにはモフモフに仕上げてみすますわ。

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― 新着の感想 ―
某スローライフ(願望)な転生者みたいに尻尾モフで即落ち(性的な意味で。)させたりしないよね?
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