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悪役令嬢は溺愛ルートに入りました!?  作者: 十夜


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280 ときめきの聖夜祭 14

「えっ、ルチアーナ嬢?」

ルイスは私を見ると、驚いたように目を見張った。


それから、さっと私の全身を一瞥すると、照れたように微笑む。

「今日の衣装はすごく可愛いね! でも、ちょっと僕の心臓には悪いかな」


ルイスは大袈裟な仕草で心臓を押さえると、冗談だと分かる言い方をしたけれど、頬が赤くなっていたので可愛らしいわねと思う。

私はルイスをじっと見つめると、小さなお願いをした。

「ルイス様、少しだけ東エリアを案内してもらえないかしら」

「えっ、いいけど……」


ルイスは困惑したように返事をすると、首を傾げた。

それから、何事かを確認するかのようにもう一度私の顔を見た後、横にいるジョシュア師団長を振り返る。

「兄上、ルチアーナ嬢がどこか普段と違うみたいだ。少なくとも、ジョシュア兄上とオーバン兄上にちらりとも視線を向けないなんておかしいよね。だから、ちょっと抜けるね。そして、どこか悪いんだったら、そのまま保健室に連れて行くよ」


ジョシュア師団長は私の前に立つと、私を見下ろして難しい顔をした。

それから、ルイスの耳元に顔を近付けると、何事かを囁く。

「ルイス、ルチアーナ嬢には魅了がかけられている。我が家の小さな弟の仕業だ」


「えっ!」

ルイスは驚いたように顔を上げたけれど、もう一度私を見ると、納得したように頷いた。

「ああ、だから、さっきからルチアーナ嬢は僕ばかりを見つめていたんだね。つまり、僕のことを好きになるよう、ダリルが魅了をかけたってことだよね。これはハニートラップ? もしかして僕を北チームに連行するため、ルチアーナ嬢は僕を堕としにきたのかな?」


ルイスのふざけたような言葉を聞いて、ジョシュア師団長が顔をしかめる。

「ダリルがそんな難しいことを考えるものか! 間違いなく、ただの悪戯だ」

「だよね。そして、ルチアーナ嬢はまんまとダリルの悪戯に引っ掛かっちゃったんだね」


ルイスは同情するような声でそう言った後、楽しそうに私を見た。

「でも、嬉しいな。ルチアーナ嬢が僕と恋に落ちるなんて、奇跡でも起こらない限り叶わない出来事だよね。ふふふ、聖夜に素敵な願いごとが叶っちゃったな」


「ルイス、不用意にそんなことを言うんじゃない! そんなんだから、ダリルがいつまで経っても悪戯をやめないんだ」

ジョシュア師団長はルイスをしかりつけると、私に向かって手を伸ばしてきたけれど、ルイスが慌ててその手をぱしりと叩く。

「やめてよ、兄上! 魔術を解かないで!」


ルイスの訴えに、ジョシュア師団長は顔をしかめた。

「正当な理由もなく、相手の意に染まぬ感情を抱かせることなど、やってはならないことだ」

「ああー、そうはっきり言わないでよ! 傷付くじゃないか。それに、お言葉を返すようだけど、ルチアーナ嬢はちゃんと僕のことが好きだよ」


ルイスはそう言うと、私の手をさっと取った。

「ダリルの悪戯くらい、ルチアーナ嬢は笑って許してくれるよ。僕だって、そんなおかしなことをするつもりはないし、術が切れたらダリルと一緒に謝るから」


「おい、ルイス!」

伸ばしてきたジョシュア師団長の手をするりとすり抜けると、ルイスは楽しそうに師団長にウィンクした。

「じゃあね、兄上! ちょっとだけ極上の夢を見てくるよ」


ジョシュア師団長は何ごとか叫んでいたけれど、ルイスは私の手をしっかり掴むと走り出した。

「ルチアーナ嬢、行こう!」

「はい、ルイス様」


まあ、これは愛の逃避行かしら、と思いながら一生懸命走る。

しばらく走ったところで立ち止まり、もう大丈夫かしらと荒い息をつきながら周りを見回すと、そこは冬の庭だった。


見上げるほどに高いプラタナスの木々が並んでいるものの、葉は全て落ちており、むき出しになった白い樹皮が寒々しさを強調している。

少し離れた場所に見える池は凍っていて、いかにも聖夜らしい冬の光景を見せていた。


夜闇に浮かび上がる冬の景色に見惚れていると、ルイスが私の顔を覗き込んで、悪戯っぽく微笑んだ。

「ルチアーナ嬢、こんな人気のない場所で、僕と2人きりになってしまったね。助けは来ないよ。どうする?」


そうだった。ウィステリア公爵家の魅惑の兄弟の人気が高過ぎて、東エリアの生徒たちは全員、泉の側に集まっているのだったわ。

ということは、この場にはルイスと2人きりなのねと思いながら、彼を見つめる。

すると、その表情が少しばかり得意気で、白皙の美少年であるルイスによく似合っていたので、胸の奥がきゅんとした。ルイス、可愛い。


ちなみに、どうすると聞かれたけれど、答えは既に決まっていたので、私は微笑みながら答えた。

「ルイス様と2人きりだなんて、夢のようだわ! だから、助けなんていらないわ」


うっとりした目で見つめると、ルイスは何かが喉に詰まったような声を出した。

「ぐっ! のっけからこんななのか。負けられないな。……ええと、実のところ僕は小悪魔だよ。悪いことをされても知らないからね」

ルイスは怯んだ様子を見せたものの、すぐに自分を取り戻したようで、挑むような表情を浮かべる。

その姿を見て、ルイスったら強がっているのね、可愛いとときめいた。


私はルイスとの間にあったわずかな距離を詰めると、至近距離から彼を見つめる。

「ルイス様がこれほど魅力的なのは、悪魔だったからなのね。どうか私を誑かして?」

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― 新着の感想 ―
ルイス様〜頑張って〜
まさに、乙女ゲームをコンプリートするために本命以外のキャラも同時攻略しているときのヒロインを見ているよう(笑) 姫が魅了されてますよ、騎士様!(誘惑しているほうだけど‥) 騎士様に面倒事(カール)押し…
既にKOされてますルイス様w まあ、ルチの場合は素でもKOしますけど笑
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