エピローグ『悪魔の独り言』
そして、ワタクシはレインリーの女王として君臨する事になりました。
「災難ですわ……」
「国を征服してしまうとはさすが、悪役だな」
ワタクシが困っているので、ミラーは嬉しそうです。
「また届いているぞ」
ミラーが、ハートまみれの封筒を山ほどワタクシに渡してきます。
三人から毎日山のように届くラブレターにワタクシは、困りはてていました。
「ワタクシがモテてどうすればいいのでしょうか?」
プレゼントも山のようになっています。
「はあ……どうすれば」
自分がモテることは、想定していませんでした。
画面の向こう側の二人が幸せになるのが好きであり、主人公に共感してプレイしていた訳ではありません。
だからこそ、悪役令嬢をやれていました。
困っているワタクシに、ミラーがからかうようにいいました。
「なにを悩んでいるのだ。悪役令嬢なのだから、全員旦那にしてしまえばいいだろう」
「なんという悪魔のささやき、検討の余地ありですわ。恋愛ゲームなら、周回プレイして、全員手に入れるのが基本でしたね」
「冗談で言っただけなんだが……」
自分で言ったはずなのに、ミラーがげんなりしています。
「それより、深刻なのはこっちですわね」
ワタクシは、政治指南書をひろげます。
目の前に女王として判断を下さなければならない書類も山積みです。
「うーん」
というか無理です。
前世の知識も女子高生までしかないのに、政治などどうしろと。
そう思っていると、ピカッと天啓が降りてきました。
「そうですわ! 良いこと思いつきました」
政治をしたがっていて、政治ができる丁度いい人物をワタクシは知っています。
「全部、お父様にさせましょう!」
「おおい!」
「変な政治したら、握り潰すと伝えておけば必死でやるでしょう!」
「父親を脅すなよ。悪魔の私がいうのもあれだが、お前はどんな悪魔より悪魔だろう」
「悪役令嬢と言ってくださいまし」
「もう令嬢ではなく、女王だがな」
「さすがゲームの世界ですわ! さらに上があったとは」
ランクアップです。
ワタクシは、悪役令嬢から悪役女王に進化しました。
「あのなぁ……。だが、さらに上は魔王がいるぞ。どうするつもりなのだ」
世界は魔王の脅威にさらされていますが、特に心配はしていません。
なぜなら。
「なんというか、仲良くなれそう。そんな気がします」
同じ悪役同士うまくいく気がします。
だって、ワタクシは、悪役女王。
目指すべきは悪役の極み。
「国交を結んで、世界征服に加担しましょう!」
「お前なぁ」
方針が決まって一安心です。
全部お父様に押し付けるため書類を整理していいると、窓の外からふわふわロングなピンクゴールドの愛くるしさ抜群の美少女エレノア様がワタクシに向かって手を振っています。
「お姉さま、一緒にお茶しませんか?」
ワタクシは、手に持っていた書類をすべて投げ捨てました。
「エレノア様! 今行きますわ!」
推しから直接のお誘いなんて、幸甚の極み。
断る理由はありません。
ワタクシは、すべてをほっぽりだして、エレノア様の元に向かいます。
なので、やれやれと肩をすくめて言うミラーの言葉は聞こえませんでした。
◇ ◇ ◇
そして、悪魔はかく語る。
「悪魔の私が言うのもあれだが、君は初めから他人の幸せを願う素敵な女性だったな」
《完》
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あと、実は魔王と勇者ハーツの戦いは、すでに書いています。
気になる方は、
悪役令嬢アンデットパニック
『英霊様は勇者の体を乗っ取りました』
もよろしくお願いします。




