3、心の中にいつもいるよ
ひいおばあちゃんは言いました。
「ちとせちゃんのお母さんとお父さんの気もちが、ことばをつうじて、毎日、ちとせちゃんの心に入って来るでしょう?」
「うん」
ちとせちゃんがうなずくと、ひいおばあちゃんは、ゆびの先で、ちとせちゃんのむねの、まんなかあたりをかるくつつきました。
「そうやって入って来た、『ちとせちゃんが大すき、とてもだいじ』というお母さんとお父さんの気もちが、小さいお母さんとお父さんになって、ちとせちゃんの心の中にいるのよ。今日は、その、心の中の小さいお母さんとお父さんがちとせちゃんを、あのわるい魚のまどわしから、まもってくれたのね」
そうなんだ、とちとせちゃんは思いました。大すきなお母さんとお父さんが、ちとせちゃんの心の中に、いつもいてくれたなんて、これまで少しも、しりませんでした。でも、心の中にお母さんとお父さんがいつもいてくれるのは、とてもうれしいな、とも思いました。
「ちとせちゃんは、ひいおばあちゃんにとっても、だいじな、だいじな、キラキラのたからものだから、小さいひいおばあちゃんも、ちとせちゃんの心に入れてちょうだいね」
ひいおばあちゃんはそう言うと、ちとせちゃんを、ぎゅうっとだきしめました。
すると、お母さんとお父さんも、ちとせちゃんを、かわりばんこに、ぎゅうぎゅうとだきしめました。
――かわいい、かわいい、だいじなちとせちゃん。ちとせちゃんが、ケガをしなくてよかった。わるいやつにたべられずにすんでよかった。だって、ちとせちゃんよりもキラキラした、すてきなたからものなんて、どこにもないもの。
つぎの日。ちとせちゃんの家におとまりしたひいおばあちゃんは、あさ早くから、大きな白いタカをよんで、にわに来ていたカラスをおいはらいました。ニどと、ちとせちゃんに、わるいことをそそのかさないように。
学校では、りえちゃんがいじわるく、ニヤニヤしていましたが、ちとせちゃんは気にしません。ちとせちゃんの心の中で、小さいお母さんと、小さいお父さんと、小さいひいおばあちゃんが、ちとせちゃんを、いつもおうえんしてくれているのですから。
それに、ひいおばあちゃんがおしえてくれました。いじわるな子の心の中には、お母さんもお父さんもいないか、いてもとても小さすぎて、ひつようなときに、その子をたすけられないのよ、と。
ちとせちゃんは、心の中のお母さんとお父さんとひいおばあちゃんが小さくなりすぎて、いなくなってしまったら、とてもかなしいので、いじわるな子には、ぜったいにならないときめました。
ちとせちゃんがいじわるをしないので、ちとせちゃんのことを大すきだとおもうお友だちも、ふえました。
ちとせちゃんのことを大すきだとおもってくれるみんなにかこまれて、ちとせちゃんの毎日はキラキラしています。
〈おわり〉
どうか、全ての子どもが愛され、守られますように。




