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家に帰るまでが冒険です  作者: 雲丹屋
第3章 実践!精霊魔法入門

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便利な休憩所

新章開幕

美しい滝が清らかに流れ落ち、射し込む光が虹の橋を架ける。

静かな入り江の暖かい岩の上で、川畑は大きく延びをした。

「あー、結構寝れたな」

「あああっ!こんなところにいた。探しましたよ、ヤマトさん!」

起き上がると、型の古い帽子を被りスーツを来た男がこちらへ飛んでくるところだった。相変わらず足が透けて消えている。

「なにやってんですか、こんなところで」

「いや、腹へって眠かったから休憩してた」

川畑が起きたのを見て、人魚達がわらわらと集まってきた。

「お兄さん、起きた?フルーツのおかわり食べる?さっき気に入ってくれたのまたとって来たよ」

「服、綺麗な真水で洗って干しておいたわよ。ほらもう乾いたからそこに置いてあるからね」

「少しは元気になった?ねぇ、また遊んでよ」

帽子の男は、いろいろ言いたげな眼差しで川畑を見た。

「……いいご身分ですね」

「ここの子は、みんな親切だよな」

「きゃー、ありがとう、お兄さん」

「はい。あーん」

人魚から果物を受け取って、口に運んでいる川畑を見て、帽子の男は首を傾げた。

「異界の食べ物は、帰れなくなりそうで怖いから、食べないっていってませんでした?」

「黄泉比良坂を下った訳じゃないし、自力で転移できるようになったからな。それと、材料や成分の不安は翻訳さんが解決してくれた」

川畑は少し離れた岩の上に置きっぱなしの食料を指差した。

「あの右側のはモザイクがかかって見えるからおそらく俺的にNGなグロ食材。その隣の丸いのは、紫色の髑髏マーク表示が見えるから俺の体には毒。今、食ってるこれは桃か杏に見えてそんな味がするから、多分大丈夫」

「翻訳さんにそんな使い方が。て言うか、翻訳さんに気に入られてます?サポート手厚すぎな気が……あれ?あなたの食べてるの、それひょっとして……」

「言うな!言うなよ。背に腹は代えられないからいろいろ割り切って食ってるんだから、正体とかばらさなくていいからな!」

「うわぁ」

「人魚の皆さんも翻訳強度の調整バッチリで、差し障りのないお子様向け表示にしてるんだから、客観視とか余計なことすんな。俺はここに純粋に休憩しに来ている」

「お兄さん、ゆっくりしていってね」

「うわぁ」

川畑は、腕に絡み付く人魚の頭をおざなりにポンポン撫でた。

「だいたいそんなに嫌ったら可哀想だぞ。この子達は、イケメン化表示を切っても、ちゃんと親切にしてくれる優しい、純真な良い子なんだから」

「(だってお兄さん、いい筋肉)」

「(しっ、警戒したら脱いでくれなくなるわよ)」

「うわぁ……」

翻訳さんの親切フィルターのせいで川畑には聞こえていなさそうな人魚の本音を垣間見て、帽子の男はドン引きした。




「それで、わざわざ探しに来たのは何のようだ?」

服を着てベルトを絞めながら、川畑は用件を尋ねた。

「ああ!そういえば!大変です、ヤマトさん。助けてください。ノリコさんが……」

「のりこがどうした!!?」

川畑は吠えた。


話を聞いてみると、どうやらノリコは時空監査官の仕事に興味を持って、他の異界を見たがったらしい。

「ですから、女性が好きそうな綺麗で可愛いファンシーな妖精っぽいのがいる自称精霊界にお連れしたんですけど」

「ぽいとか、自称とか、不穏な表現が気になるが、それで?」

「案内した先の妖精女王に気に入られて帰れなくなりました」

「貴様が付いていて何をむざむざ……って、そういえば貴様、基本見てるだけで役に立たん奴だったな」

「ご理解ありがとうございます。という訳なので助けてください。局は異界の内部事情と個人の事情には関与しないので、協力して貰えないんですよ」

「転移デバイスと翻訳さんは使えるのか?……え?正規回線とは別にアクセスできるようになってるからOK?よし、なら行こうか」

川畑は袖を捲って、肩を回した。

「今、誰と会話してました!?なんか内容が不穏当だったんですけど!渡した私の予備デバイス、魔改造してませんか!?」

「知らん。気がついたらこんな感じだったぞ。ほら、穴開けろ。行くぞ」

「あああ、もう!仕方ないですね。オープン!」

帽子の男と川畑は穴に飛び込んだ。


デバイスの魔改造はキャプテンがしました。[参照:青空と金時計]

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― 新着の感想 ―
[良い点] まって。待って何食べてるの。 背に腹は代えられんって遊びに来てるだけじゃないかお前ェ! はっ……そんなに現実が過酷なのですか……? 人魚さん、わかってらっしゃいますね。 男は顔じゃないよ…
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