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家に帰るまでが冒険です  作者: 雲丹屋
第8章 学校だけが世界のすべてだった日々

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アピールタイム?

「いたぞ!」

「逃がすな!」

中立地帯(セーフティエリア)を出ると、また追いかけっこだった。

窓の外からは吹奏楽部の演奏が聞こえてくる。メインステージでアピール公演中らしい。運動会の徒競走っぽい選曲だ。

「お前ら、勧誘なら少しは部の宣伝でもしながら追って来い!ああいう文化系にアピールで負けてるぞ」

「ならば見よ!この華麗なボール捌きを。ボールは友達だっ」

サッカー部の男は見事なドリブルを魅せた。

「お前もやってみろ」

走る足元への絶妙なパスだった。

「友達蹴んな」

川畑は反対側の追っ手の一人に向かってボールを蹴った。

「うちはちゃんと手で捕る。そして投げる」

ハンドボール部はサッカーボールを後方に投げた。

「ああっ、友達がっ」

「任せろ」

上がったボールを飛び込み回転しながらとらえたのはバレーボール部だった。

「必殺竜巻レシーブ」

「殺人稲妻トス!」

「見方殺しじゃねーかっ」

騒がしい球技系をよそに川畑達はとっとと逃げ出した。


「くらえ、球技系最速攻撃。シャトルの初速は世界一スマーッシュ!」

足元に鋭く撃ち込まれたのは、バトミントンの羽根だった。

「球じゃねぇ!あと、鬼ごっこで撃ってくんな」

つい律儀に突っ込みながら川畑はバトミントン部を始末した。

「ふふふ、しょせんバトミントンは初速のみ(でおち)。球技系最速ラリーと言えば俺達だ」

立ちふさがるように現れたのは卓球部だった。

「いくぞ、禁断の技。一蓮托生、百烈ピンポンシャワー!」

卓球部員達は持っていたダンボール箱いっぱいのピンポン玉を廊下にぶちまけた。

「からの、ピンポンダーッシュ!」

卓球部は幅広の体育館用のモップでピンポン玉を川畑達の方へ押し込んだ。

「ピンポンダッシュは違うだろ」

「わわわ」

押し寄せたピンポン玉の波に足を捕られて植木は転びかけた。

その隙をついて水泳パンツ一丁の男がスライディングするように飛びかかってきた。

「一泳専心!君も僕らと一緒に裸の付き合いを……!」

「雑念だらけだろ」

川畑は植木をひょいと抱き上げた。水泳部の男は、そのままピンポン玉で滑って廊下の壁に激突した。

「無念。競泳水着は防御力が低い」

半裸の男はがくりと頭を垂れた。

「無茶すんな」

川畑は植木を抱えながら、ピンポン玉を蹴立てて歩き出した。

「ああっ、踏まないで!お湯で煮て膨らませるの大変だから」

「なら撒くなよ……」

川畑は摺り足でピンポン玉ゾーンを抜けた。




途中現れた追っ手の腕章を剥ぎつつ、川畑と植木が屋根のない渡り廊下に出たところで、急に前後が白煙に包まれた。

「なんだ」

「くっくっく……スーパーサイエンス部特性煙幕は気に入ってくれたかな」

煙の中から現れたのは、派手な全身タイツに身を包んだ男だった。左右非対称の色柄の全身タイツはサーカスのピエロかトランプのジョーカーのようで、ご丁寧にそれっぽい化粧までしていた。

ひょろりとしたアンバランスな体型の男の手には、片手に3本ずつ、合計6本のナイフが握られていた。細長いナイフを悪魔の長い爪のように握った男は、三日月のような笑みを浮かべた。

「さぁ、ショータイムを始めよう」

悪魔のナイフが宙を舞った。


「……って、ナイフでお手玉するだけかよ」

「わー、上手だね」

「ジャグリング部でーす。週末は緑地公園で大道芸やってます。よろしく」

煙幕セットを新しく仕掛けに来た白衣の部員に「スーパーサイエンス部の科学実験ショーもやってるよ~」とビラを手渡され、川畑と植木は曖昧に笑って会釈した。




「このラムネ自家製なんだって」

「食品か実験成果物か微妙な代物だな」

「ビーカーとかで作ったのかな?」

スーパーサイエンス部からもらったラムネ菓子を食べながら、川畑達は人気のない教室で一息いれた。

川畑は茶華道部で受け取った包みから通信機を取り出して黐木(もちのき)に連絡をいれた。

「先輩、川畑です。そっちはどんな感じですか」

"「こっちは予定通り無事に()()()()よ。今は模型部の部室にいる。例の件もOKだ。準備してもらっているがセットアップにもう少しかかると思う」"

「ありがとうございます。よろしくお願いします。こっちはもう少しどこかで時間潰して来ます」

"「この時間なら、講堂のステージが演劇部の中立地帯(セーフティエリア)になっているはずだ。今のうちに行って来てくれ。もし講堂にSプロスタッフが残っていたら、ルール変更がないか確認しておいて欲しい」"

「わかりました。金か銀の鍵をもらって来ますよ」

"「頼んだ。また、連絡くれ」"

「了解です。オーバー」

川畑と植木は講堂に戻ることにした。




演劇部の銀のチャレンジはパントマイムのジェスチャー当てゲームだった。

「なんだろう……えーっと、シンデレラ?……が被っているモノ?王冠?ベールでも頭巾でも手拭いでもないし……灰?灰OKか。で、続きがある?今度は風呂敷に荷物を包んで……行商?、夜逃げ?……ほっかむり……泥棒?泥棒!……で、泥棒の棒は置いといて……って、わかりにくいな!どこがパントマイムだ」

けっこう難易度の高い出題だった。


「"ハイドロプレーニング現象"をジェスチャーゲームのお題にした奴は誰だ」

「"ランゲルハンス島"よりはましなんじゃないじゃな?」

銀の鍵をもらい損ねた二人は、金のチャレンジに挑戦してみることにした。

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