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バグから始まるVRMMO活動記  作者: 紙紙紙
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第57話

 

 妖精は僕の目の前に飛んでくる。


『一緒に探して欲しい物があるの……!』


 僕は時間を見る。

 時間的にまだ平気だな。帰っても暇だしな。話だけでも聞くかな。


「場所とかわかっているの?」


『うん。半壊した村なんだけど。女王様からは危険だから近づかないようにって言われてて、他の子たちは手伝ってくれないから手伝って欲しいの……』


 半壊した村……それって確実に僕が放ったメテオが原因だよな。


「わかった。手伝うよ」


『えっ! いいの? ありがとう! えっと……』


「そう言えば自己紹介してなかったな。僕はウィリアム。友人からはウィルって呼ばれているよ。で、僕の召喚獣のセイリュウ、スザク、ゲンブ、ビャッコだよ」


 順番に名前を呼ぶと召喚獣達は鳴いて返事した。


『ウィルにセイリュウ、スザク、ゲンブ、ビャッコだね!』


 妖精は指をさしながら復唱する。


「君の名前は?」


『私はペ……ぺぺだよ!』


「ペペペ?」


『ペペ!』


 妖精のペペは名前を間違えたことにプンプンしながら怒っている。


「ごめんごめん。じゃ改めてペペ。その村に案内して」


『あ、うん! こっちだよ!』


 蜜柑を回収してからペペの後ろをついて行く。

 石が敷かれている道をしばらく進むと屋根がある小さな家が集まっている村が見えてくる。だが、ほとんどの家の屋根は半壊している。

 村を進みやがてペペは立ち止まる。


「ここ?」


『うん……ウィル。瓦礫退かすの手伝って』


「わかった」


 僕は崩れている屋根から手を入れ瓦礫を退かす。 


『あった!』


 瓦礫を退かしているとピンク色の袋をペペが見つける。

 中を確認し無事だったことにペペは安堵した。


「無事でよかったね」


『うん!』


 ペペは中身を見せてくれた。中身は黒くて小さい物だった。 

 なんかの種なのかなと考えているとペペが説明してくれた。


『これはね、女王様から貰った光草の種だよ。私の大事な宝物』


 健気に笑うペペの頭を僕は撫でた。


『ど、どうしたの? 頭を撫でられるのは嬉しいけど……』


 僕は言うか迷っていたが言うことにした。


「ペペごめん。村をこんなにしちゃったのは僕なんだ。隠しててごめんね」


『え……? どういうこと?』


 僕はあの時の出来事をペペに伝えた。

 折角仲良くなれたけど、ペペに嫌われたら素直に受け入れよう。


『伝えてくれてありがとう。あなたはやっぱり優しい人だよ!』


「僕は、優しい人じゃ……」


『あなたがなんて言おうと! 私はあなたの事を優しい人って決めたの!』


 それに、とペペは続ける。


『あなたがしたことはもう取り消せないけど、反省もしているし、謝ってくれた。村は明日には直るんだからあなたもそこまで気に病まないの!』


「……うん」


 思わず泣きそうになったが踏ん張った。


『ウィル泣いてるの?』


「泣いてない……!」


 誤魔化そうと顔を逸らすとガタっと音が聞こえ見ると妖精達がいた。


『どうしたの皆?』


『心配で見に来たの! 大丈夫?』


『いじめられてない?』


『私は平気! あ、そうだ! 皆! なんか困ったことがあるならこの人が手伝ってくれるって!』


「え!?」


 ペペの突然の思い付きに僕は驚いてしまった。


『え……この人、信じても平気?』 


『うん! 私を信じて!』


 妖精達はどうしようかと悩んでいる。

 すると、一人の妖精が僕の袖を引っ張る。


『……なんか美味しい食べ物持ってる?』


「え、ああ。あるよ」


 僕は急いでインベントリから皮を剥いている蜜柑を上げた。


『美味しい……もぐもぐ……』


『私も!』


『僕も!』


 インベントリにある蜜柑を全て取り出し妖精達にあげた。おかげで蜜柑の在庫は無くなってしまった。

 そして、それが切っ掛けになったのかは分からないが妖精達は次々に困っていることを言ってくれるようになった。簡単なのもから大変なものまで僕と召喚獣達は協力して妖精達を手伝った。

 最後の一人の手伝いが終わる頃には日差しが昇り始めると、女王の城が光りだし妖精の花園は光に包まれた。

 光が収まると半壊した村や城、燃えた森やクレーターだらけの地面など何もかもが元通りになった。

 妖精達は元通りになった家に帰っていく。


「疲れた……」


 僕は草の上に仰向けで倒れた。気持ち良い風が吹き抜ける。

 召喚獣達も疲れたのか僕に寄り添って寝息を立て始める。


『ここで寝たら風邪を引くよ?』


 ペペが心配して顔を覗き込むんで来るがだんだんと瞼が重くなってくる。


「……少し、だけ……」


 それだけ言って僕は意識を手放して夢の世界に旅立った。



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