第159話
「ヴェスナー君だっけ? あれ君の仲間だけど倒してもいいよね?」
「それが最善の救いよ」
ヴェスナーの答えを聞かずにレオルさんとグラさんは駆け出し斬りかかる。
虚ろ目をしたヘストは右手に持っている赤い杖を使い二人の攻撃を凌ぐ。
「ヘストって近接あんなに凄かった……?」
ヘストは中から長距離で戦うスタイル。万が一、近づかれても魔法で吹き飛ばして距離を取るのに今のヘストは杖を巧みに使い二人の攻撃を受け流してるのだ。
「ヘストの杖使いはクシュのおかげで大分はマシにはなったけど……あそこまで上手いわけねーよ……!」
「操っているパイモンのせい……だろうね」
「皆さん、ヘストさんのステータスを見ましたか?」
アイリスさんに言われヘストのステータスを確認すると、全てのステータスがカンストしていた。それと、デバフなようなアイコンが付いていた。
悪魔憑き? 効果はステータスを最大にする代わり自分の意思で体が動かせなくなるのか。それと解除不可か……どうすればいいんだ……
夏樹とヴェスナーとアスクさんもデバフを見たのだろう。表情が暗くなっている。
「このデバフならなんとか出来るかと思います」
アイリスさんの一言で皆の表情が明るくなった。
「本当ですか!?」
「前に特殊な呪いのデバフをアルナが受けた時に解除不可だったのですが、私の聖属性最上位魔法でどうにか治せました。パイモンは悪魔です。多分効くと思います」
ただ、とアイリスさんが続ける。
「詠唱時間がかなり長くて私は一歩も動けないのでサポートをお願いします」
「俺とアスクの鉄壁の守りを舐めないでください」
「おう!」
「ふふ、信じていますよ」
その時、激しい爆発音が響きヘストの周りで砂煙が舞い上がっていた。距離を取ったグラさんとレオルさん。
「兄貴、俺も加わってくるよ。サポートよろしく」
「わかった」
僕はビャッコを戻してゲンブを召喚した。
「って、うわっ!」
召喚されたゲンブは僕よりも体長が大きく、ゲンブにローブを咥えられ甲羅の上に乗せられた。
一時覚醒した姿を見てないのはゲンブだけだったな。まさかここまで大きくなるとは。それに……尻尾の蛇増えてる。視線を向けるとペコリと頭を下げた。こっちも礼儀正しいようだ。
僕は攻撃力、敏捷力、知力が上がる魔法を唱える。序に、効果は下がっちゃうけど無いよりかはマシと思い防御力が上がる魔法も唱え全員に掛けた。
そのタイミングで後ろにいるアイリスさんが詠唱に入る。
「ん? この魔力は……聖属性? ということはあ奴は聖女か」
「ぐっ!」
「くそっ!」
ヘストは周囲に炎の球を生み出し一気に爆発させグラさんとレオルさんを吹き飛ばしこっちに目掛けて駆けてくる。
「行かせねーよ! 【剣舞・炎闇】!」
夏樹はぶれているよに見える黒い炎を纏った刀を振るうがヘストは簡単に捌いて行く。
「面白い動きをするではないか!」
「お前に褒められてもう嬉しくねーよ!」
「俺も混ぜてくれよっ!」
夏樹とヘストがやり合っている中、上空からレオルさんが強襲する。夏樹はムスッとした表情して少し離れた後駆け出した。
「邪魔!」
「邪魔なのはお前の方だ!」
夏樹とレオルさんは邪魔とは言いつつも絶妙に連携していた。
「ガハハハッ! 面白いぞ王よ!」
復活したグラさんも加わりヘストを押し始めた。
「飽きた。【爆炎陣】」
三人の攻撃を躱し少し距離を取ったヘストが杖を叩くと足元に魔法陣が広く浮かびあがる。
「やばっ! 三人共! その魔法陣から今直ぐに離れ――」
「プロミネンス・ノヴァ!」
ヘストの頭上に黒い火球が出現し下降しだす。
三人は急いで離れ始めるが火球はヘストに接触した瞬間に大爆発が起こる。
「ゲンブ、やるぞ!」
「ガメっ!」
「【四神の領域・海嘯】!」
ゲンブの足元から大量の水が溢れ大津波を作り出し、大爆発している所にぶつけると水蒸気爆発が起きた。爆風で吹き飛ばされそうになると一体の蛇が僕を抑えてくれて、吹き飛ばずに済んだ。
後ろの方ではヴェスナーとアスクさんの守りのおかげで無事のようだ。夏樹達が心配だ。
水蒸気が少し晴れ視界がよくなるとヘストはさっきの爆発で壁際まで吹き飛ばされていた。
「ははっ、仲間のはずなのにここまでやるとは――」
「アクアロック!」
ヘストを見つけるなり僕は水属性の拘束系魔法を唱え水の牢屋に閉じ込める。
「こんなもので我を止めれるわけが!」
「ウィリアムさん! お待たせしました!」
詠唱を終えたアイリスさんは魔法を唱えると神々しい光がヘストに降り注いだ。




