第157話
「あんた、誰?」
槍を構え睨み付けるレオルさん。それに合われ他のプレイヤー達も各々の武器を構える。
「問おう、汝は我らの敵か?」
今にも飛びかかりそうなグラさんが尋ねる。
「そう焦るではないプレイヤーよ」
ゴンドラの上でくるっと回るメフィストに合わせて曲が流れ出す。
「ある時は《亡者の墓場》のダンジョンボス! またある時は美食家! その正体は!」
更にその場で凄い速さで回りポーズを決め止まる。
「この浮遊城デモニオキャッスルの管理者にしてルシファー様の右腕……メフィストだ」
「ぐっ……! 急に体が重く……」
他のプレイヤー達も立っていられずに膝たちになっていた。
この攻撃、女王の重力と一緒だ。なら。
「【神獣の一撃・重力】!」
メフィストの攻撃をスキルで相殺させる。
ビャッコの神獣の一撃が強化されたことで重力を操れるスキルに生まれ変わった。MP消費がかなり多くて連発出来ないし、持続時間が短いのがデメリットだけどそれでも強力なスキルだ。
「ぶははは! 我の攻撃を防ぐか勇者よ! 面白いぞ! ぶははは!」
メフィストが高笑いしていると一気に夏樹が距離を詰めて斬りかかるも見えない壁に弾かれた
「残念だったな! ぶははは!」
「っち!」
僕の隣に戻ってきた夏樹は舌打ちをする。
「あのやろ――」
「夏樹」
僕は夏樹の肩に手を掛け止め、一歩前に出る。
「お、今度はお主か! 掛かって――」
「メフィスト。ルキは何処にいる?」
メフィストの言葉を遮って僕はルキの事を尋ねた。
「ふん、ルシファー様の事が知りたければ我を倒してみろ勇者よ!」
「そうか……」
HMPポーションのみ一気に回復させる。
「来い……スザク、ビャッコ」
僕の右側に巨鳥のスザクと左側に巨獣のビャッコを召喚する。
「セイリュウ」
残りのMPを使って後方にセイリュウを召喚。
召喚されたセイリュウは部屋にギリギリ収まるサイズに大きさを変えプレイヤー達を守るように囲んだ。
「じゃあ倒させてもらうよ」
スザクは頭上に特大の炎の球を、ビャッコは口を開け黒い玉を作り出す。セイリュウは口の中をバチバチと電気を発せながら音を鳴らし、三体はメフィストに目掛けてそれぞれの攻撃を撃ち放ち爆音と共に煙が立ち込める。
「ぶははは! 効かぬな!」
煙が晴れると無傷なメフィストが姿を現す。
すると、ガタンっと音が鳴るとゴンドラが動き出し上がっていく。
「ちっ! 時間か……シャックスっめ、融通が利かない奴め」
「あ、おい! ルキは何処にいるんだよ! メフィスト!」
メフィストが僕に視線を向ける。
「散りばめられた物を探せ、さすれば導かれるだろう。さらばだ! ぶははは!」
ゴンドラが上がりきると天井が閉まる。すると、何もなかった壁に扉が三枚出現した。
メフィストが去ったことでプレイヤー達は武器を仕舞う。
召喚獣達は小さくなりいつもの定位置につく。
「色々聞きたいことはあるけど……ウィル君、さっきの奴とどういう関係なのかな?」
「あー……まぁ簡単に言えば色々因縁のある相手? ですかね」
「ふーん。 まぁいいや。それで扉が三つ出てきたけど。うちのパーティーはサブリーダーのソレイユに任せて、俺はウィル君達と行くよ! あとは任せたよ」
「仕方ないですね。では、ご武運を」
ソレイユと呼ばれた女性が溜息をついたあと一番右の扉に入っていく。
「おい、何勝手に決めてんだよ!」
「いいじゃないか、弟君!」
「馴れ馴れしいんだよ!」
夏樹の首に腕を回して笑うレオルさんと嫌な顔をする夏樹。
「我も行こう。その方が強者と遭遇するはずだ!」
不敵な笑みを浮かべるグラさん。若干怖いんだが……?
「そんな! グラさんが行くなら俺達もついて――」
「お前らじゃ足手纏だ」
グラさんの一言でしゅんとするプレイヤー達。今までやってきたのにその言い方には少しだけ怒りを感じる。
「グラちゃん、そんなこと言っちゃっダメだからね?」
「知らぬ」
「もう~。はいはい、注目~。グラちゃんの代わりにわ・た・し・が! ついて行ってあげるから任して頂戴! 行くわよ~!」
キャサリンさんは胸を張って自信満々に歩き出し一番左の扉に進んでいく。後ろからプレイヤー達がぞろぞろとついて行く。
「ウィリアムさん、私達もキャサリンさんについて行きますね」
「分かりました、お気をつけて」
「お互いさまに」
ラグさんのメンバーは僕達にお辞儀してからキャサリンさんの後を追い駆けた。
そしてこの場に残ったのは僕と夏樹、アイリスさん、ヴェスナー、アスクさん、レオルさん、グラさんの七名だけになった。




