第148話
「朝日が眩しい……」
キャサリンさんのお店から出ると日差しが顔に掛かり手で遮る。昨夜の事を忘れたくて僕はすぐに屋敷に戻りログアウトして早々に寝た。
「亜樹起きてる?」
母親がドアをノックする音で僕は目を覚まし、スマホを見ると昼の二時手前だった。眠いと内心呟き欠伸してから瞼を閉じた。すると、ガチャっと音がしてドアが開き母親が入ってくる。
「起きてるなら返事ぐらいしてよね」
「なんか用? 眠いんだけど……」
「買い物頼みたいのよ」
「……後でもいい?」
「ダメよ~。今必要なのよ」
溜息を溢し、渋々体を起こす。
「わかったよ……」
「お願いね!」
そう言って母親は部屋を出ていく。
僕もベットから下り身支度を整え、軽く食事をして車に乗る。シートベルトをすると反対側のドアが開き夏樹が入ってくる。
「兄貴、買いたいのあるから俺も行く」
「了解。シートベルトした?」
「おう」
エンジンを掛け車が運転しデパートに向かう。
夏樹と別れ母親に頼まれた物を買いに行く。
「あとは……」
メモ用紙を眺めていると肩を指で突っつかれ振り向くとセゾンがいた。
「こんちわっす! 亜樹っち!」
「セゾン……じゃなくて史季。こんにちは。買い物?」
「ハイっす! バイト先の店長に買い物頼まれて帰る所なんっす!」
「明日テストあるのにバイトしてて大丈夫なの?」
「あはは……正直に言うとキツイっすけど、なんとかなるっすよ!」
「随分とポジティブだなことで。まぁ頑張れよ」
「ハイっす! それじゃ俺っちは行くっすね。じゃあね、亜樹っち!」
セゾンの後ろ姿を見送り買い物を再開させ残りの物を買い終え駐車場に向かった。
しばらく車の中で待っていると買い物を終えたタツキが帰ってきた。
「兄貴、お待たせ」
「おかえり。さっきデパート内でセゾンにあったよ」
「そんなんだ」
そう言いながら荷物を後部座席に置く夏樹。
「あ、じゃあ話したの?」
「いや、テストに集中させたいし話してない」
「んじゃ俺から話してく? 兄貴、平日は時間ないし」
「あ……そうだね。頼んでもいい?」
「了解。準備いいよ~」
夏樹の合図で車を運転して駐車場を後にする。
「あ、そう言えば大会の情報来てたよ」
運転中にスマホを見ながら話しかけてくる夏樹。
「開催日時が八月の第一週目の土日と第二週目の土日だって」
「間空けて二週でやるの?」
「うん。一週目は前大会と同じで。二週目で拠点対抗戦が行われるんだって」
「へぇー」
信号が赤に変りゆっくりブレーキを掛ける。
「興味なさげ……話続けるけど、参加権は上位五人、辞退すると下の順位の人に参加権が移るシステム。対戦方式は総当たり戦で勝利数が多い拠点が優勝だそうだよ」
信号が青になり運転を再開。
「そうなんだ。優勝したらなんかあるの?」
「当日発表でまだ分かんない」
「ふーん」
そんな会話をしていると家に着いてガレッジに車を入れ、車から降りた。
「そう言えば募集はどうなってんの?」
「んー当日にならないと分からないけど、多分人は集まると思う。まぁ俺に任せておいて」
「わかった」
後部座席のドアを開け荷物を取り出す。
「兄貴、俺も聞きたいことがあるんだけど」
「ん?」
「昨日帰り遅かったけど何処に行ったの?」
「あー言ってなかったね」
荷物を持って玄関に向かい歩きながら昨夜の事を話したい。勿論、キャサリンさんに半拉致されたことは伏せた。
「あいつも来るのか……嫌だけどルキの為だ我慢我慢」
玄関のドアを開けるといい匂いが漂ってくる。
「おかえりなさい二人共。ご飯もうすぐ出来るから準備してね」
「「はーい」」
荷物を居間に置いて手を洗い、席に座り夕飯を食べる。その後風呂に入ってベットで横になっていたら瞼が重くなり、いつの間にか眠りに就いていた。




