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バグから始まるVRMMO活動記  作者: 紙紙紙
134/165

第134話

 食事と風呂を済ますと待ち合わせ時間の三十分前だった。

 先に待っておこうと思いログインする。


「ウィルだ!」


「おはようルキ」


 ログインするとルキが見上げていたから頭を撫でる。ルキは嬉しそうだ。


「どこかいく?」


 そう聞かれ僕は頬をボリボリと掻く。


「今日は知り合いの案内でファルトリアに行くだけなんだけど……」


「いくー!」


「んじゃ行こうか」


 ルキと手を繋いで部屋を出て行くとアテムアさんとばったり会う。


「いいタイミングにいたね。ほれ受け取りな」


 アテムアさんはポイっと布みたいのを渡され慌てて受け取る。


「急に投げないでくださいよ……これは?」


 広げると左側に白とチェック柄のリボンが付いている濃い目の青い子供用のワンピースだった。


「お前用だ」


「は!?」


「冗談だ。その子用だ」


 それだけ言ってアテムアさんは工房のある部屋の方に歩いて行った。


「あ、アテムアさん! ありがとうございます!」


 後ろ姿のアテムアさんに僕は言い忘れていたお礼の言葉を叫ぶと手を振り返してくれた。


「そのふく、ルキの?」


 キラキラした目で聞いてくるルキの頭を優しく撫でる。


「着てみよっか」


「うん!」


 部屋に戻りルキを着替えさせる。

 着替え終わったルキはスタンドミラーの前で嬉しそうにはしゃいでいる。よっぽど嬉しいようだ。記念にスクショしておく。


「ルキ、そろそろ行くよ」


「はーい!」


 転移結晶のアイテムを使いファルトリアに転移する。街に着くとルキをおんぶしてから待ち合わせ場所にしている噴水広場に向かった。

 噴水広場には静かで人が殆どいなかった。一応こっちの容姿と名前は伝えているけども、見つけてもらえるか心配だったけど、これなら問題ないな。

 ルキと一緒にベンチに座って待っていると、平均的な身長の青髪オールバックの男性がログインする。彼かな?

 眺めていると男性と目が合いこっちに走ってくる。


「猫目か?」


「そうだけど……リアル名は伏せてくれよ。フレンド申請送ったから」


「はいはい。……ウィリアム・トワイライト。本名関係ないんだな」 


「ある映画の主人公の名前を付けたんだよ。どうせお前もそんなもんだろう?」


 同僚のキャラ名――ブラオ・シアンをみて僕はそう呟く。


「俺はちゃんと名前を考えたぞ! ブラオは名前の蒼佑の蒼をドイツ語で、シアンは苗字の犬塚の犬をフランス語にしたんだよ!」


「お、おう」


「てか、それよりもその子何? お前の子供?」


 ブラオは僕の後ろに隠れているルキを指さす。


「違う! この子はルキ。クエストの延長で一時期預かっているだけ」


「ふーん。そんなクエストあるんだ~」


「ほら、ギルド行くんだろう?」


「お、そうだった! 案内よろしくー」


「はいはい」


 ブラオを連れてギルドに向かう。しばらく歩きギルドの扉を潜ると何故か視線が集まった。夏樹を連れてきたときもこんなだっけ? 物凄くデジャヴだ。


「どうした?」


 扉の前で止まった僕にブラオが話しかけてくる。


「い、いや何でもない。受付で要件言えば案内してくれるよ」


「おう。じゃ行ってくる」


 ブラオを見送って空いている席で待とうと思い見回していると、丁度パーティーで座っていたいた人達が立ち上がったのを見つけて席に座った。

 ナハルヴァラで買ったケーキをルキの前に出すと美味しそうに食べる。


「ルキ、ほっぺにクリームついてる」


 そう言いながらクリームを拭き取る。


「えへへ、ありがとう!」


「どういたしまして」


 ルキの満天の笑顔に僕は癒された。


「待たせたな! じゃん俺の武器見てくれよ!」


 戻ってきたブラオは海のような青い色のした二丁拳銃をテーブルに置く。


「おお、なんか近未来な銃な感じだね」


「だろう?」


 そう言ってドカッと空いている椅子に座った。


「見習い双銃士ってとこ?」


「正解! レベルカンストさせて早く見習い取んなきゃな~。お前のジョブは?」


「僕は召喚士。もうすぐで熟練度がカンストするからジョブチェンジ出来る」


「召喚士か。正直迷ったんだよな。召喚士にするか銃を使ったジョブかで」


「で、銃を選んだと」


「おう。サバゲもやっているしで、こっちにした」


「そっか。レベル上げ頑張れよー」


「えぇー、手伝ってくんないの?」


「時間が合えばね」


「約束だからな!」


 ギルドの時計をみて僕は立ち上がった。


「もうログアウトするのか」


「まぁね。じゃ――」


「ウィルいる!」


 その時、ギルドの扉勢いよく開き僕の名前が呼ばれ、顔を向けるとアルナさんだった。なんか久しぶりに見た気がする。

 ギルド内を見回したアルナさんは僕を見つけると凄い勢いで走ってきた。


「ウィルお願い! 私と対人戦やって!」


「……え?」


 僕の手を掴んで戦って欲しいとアルナさんが言ってきた。



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