第133話
ヘッドギアを外し僕は凝り固まった体を解す為に大きく伸びをした。そんなに長くしていないけどなんか疲れたな。
僕の部屋でログインしていたヘストとクシュも意識が戻りヘッドギアを外し体を起こした。
「兄貴!」
廊下から走ってくる足音が聞こえてくると思っていると凄い勢いで扉が開き夏樹が入ってくるなり制止する間もなく僕に抱きついてくる。その後ろからヴェスナーとセゾンが入ってきた。
「……みんな見てるぞ夏樹」
「……」
僕がそう言うとゆっくり離れ、僕の布団を被り隠れた。
僕含めてこの部屋にいる夏樹以外が苦笑した。
「夏樹っちの意外な一面見れたっすね」
「ここまでブラコンだったとは……」
「私は知ってた。颯斗も同じ匂いがするから」
「同じ匂いってなんだよ!?」
「兄貴の部屋なんだから静かにしろよな」
少し騒いでると布団を退けいつもの夏樹に戻っていった。
……夏樹が一番騒いでいたと思うけど。
「それで、どこ行っていたのか教えて」
そんでもって綺麗に話題をすらさせたな。まぁいいけども。
僕は気を取り直してあの時の出来事を全て話した。すると、各々でスマホを取り出して調べだした。僕も一応調べたけどなんも有益な情報は見つからなかった。
「だめだ。全然見つからない」
「夏樹も? こっちもだめ」
「なんもヒットしないっすね」
「うーん、特殊なイベントかクエスト?」
クシュの一言であーと皆納得する。
「それなら見つからないな。兄貴の運の良さ流石だね」
「そこ褒めるところじゃないと思うけど……」
「まぁなんにしろ、兄貴はあそこには一人では行かないこと。約束して欲しい」
「わかった」
いつにもまして真剣な目をした夏樹に僕は約束した。
その時、ドアがノックされ母親の声がして僕は立ち上がりドアを開ける。
「なに?」
「あら、みんなここにいたのね。今日の夕飯食べていくのかって思って聞きにきたの」
「あーみんなどうする?」
顔だけ四人に向けた僕は尋ねた。
「食べたい!」
一番最初にクシュが手を上げる。
「俺も!」
「俺っちも!」
続いてヴェスナーとセゾンも手を上げる。
「みんなが食べるなら俺も……」
ヘストもゆっくり手を上げた。
「だそうだよ」
「まぁ! 楽しみにしていてね! 量が多いから亜樹手伝ってね」
「わかってる」
部屋から出ていく母親の後を追ってキッチンに向かった。
母親と料理している間、ヴェスナー達はヘッドギアを仕舞い帰り支度を進めていた。
帰り支度も終えてすることが無くなった夏樹達はテレビゲームで対戦をし始める。クシュは見る側に回り何故かソファーで座っている父親と一緒に見ている。珍しい光景に思わず笑いそうになったのは内緒だ。
「夏だけど奮発してすき焼きにしました。遠慮なく食べてね!」
「「「「はい! いただけます!」」」」
見事に四人の声が重なりモリモリと食べていく。時折肉ばっか食べるクシュを注意してなんやかんや楽しい夕食だった。
その後、四人を車で送り、長いようで短かった土日は終わった。
翌日、何事もなく仕事が終わり会社を出る時に同僚が声を掛けてきて、そのまま家電量販店に向かった。
「お、あったあった。これでいいんだよな?」
「それで合ってるよ。……本当に始めるんだな」
「あったりめぇよ! よし、買ってくる」
そう言って同僚はレジに向かった。
買って戻ってきた同僚は嬉しいそうだった。よっぽど楽しみにしていたんだな。
「今日やるのか?」
「あー……どうかな。やるとしても少しだけだけど」
「ならさ、ギルドまで道案内頼めないか?」
「うーん、別にいいけど……拠点の街はもう決めてる?」
「おう、ファルトリアに決めてる」
「そこなら道案内出来るからいいよ」
「よっしゃ! そんじゃまたあとで!」
そう言って同僚は走っていく。
待ち合わせ場所とか決めていないのと思って溜息をつき、僕はメッセージを送る。
直ぐ返信が着てもろもろの事を決めてスマホしまい急いで帰宅した。




